2014.11.23

▽ハケンアニメ

辻村深月『ハケンアニメ』(マガジンハウス)

《「春のハケンはこれで決まりですね」
 ……
 ハケン、というのが何を意味するのかわからなかったが、それにより訊き返すタイミングを逃した。ハケン。漢字で書くと、派遣、だろうか。》(p.10)

あるところで『ハケンアニメ』というタイトルを見た時、本書の主人公である有科香屋子と同じように「派遣アニメ?」と思って、つい手にとってしまいました。

本書でも説明されているように、「ハケンアニメ」は、「覇権アニメ」のことで、そのクールに放送されたアニメの中で、ナンバーワンになったものを指すネット・スラングのようなものです。

でも、この「覇権アニメ」という言葉は、ある時期にはさかんに使われましたが、最近ではあまり見かけなくなってしまいましたよね。

本書は、女性誌『アンアン』に2012年11月から2014年8月にかけて連載されたものを加筆修正したもので、新作アニメの制作を担う女性プロデューサーを主人公とする業界ものの小説です。

しっかり取材をした上で書かれているのですが、「ハケンアニメ」という業界用語も含め、モデルになっているエピソードが微妙に古かったりして、ちょっとズレた感じもしますが、それなりに楽しんで読むことができます。

ところで有科香屋子がアニメ業界に入るきっかけをつくった天才アニメ監督・王子千晴は、ハワイに旅行に行ったふりをしながら、自室にこもって絵コンテを書き上げます。そのことについて、王子は次のように語っています。

《「脚本とか絵コンテは、地道に机に向かうことでしか進まないよ。どんだけ嫌でも、飽きても、派手さがなくても、そこに座り続けてずっと紙やパソコンと向き合うしかない。席を立ったらそこで取り逃すものだってあるし、齧り付くように、ひったすら、やるしかないんだ。気分転換なんて、死んでもできない」》(p.88)

割とリアルな証言ではないかと思います。


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