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2007年12月

2007.12.10

「初音ミク」ムーブメントを育てたニコニコ動画という場

「初音ミク」ムーブメントというCGM(Consumer Generated Media)を活性化させた要因の一つに、「ニコニコ動画」という場をあげることができると思いますので、それについて、まとめてみます。ニコニコ動画の特徴は3つあります。

(1)匿名性が確保されていること

(2)一時的な関係性

(3)非対称の効用が交換されている

まず、(1)匿名性が確保されていること、についてですが、ニコニコ動画はメール・アドレスによる登録制のため、完全な匿名性が確保されているわけではありません。しかし、ある程度の匿名性は確保されていると言えます。

そして、匿名性が確保されていることによって、ニコニコ動画では、現実の世界における束縛から解放されます。つまり、社会的な関係とは無関係な、(2)一時的な関係性、が発生します。たとえば、普段は会社勤めをしているサラリーマンであったとしても、ニコニコ動画においては、作曲家やイラストレイターになったり、あるいは、それらのコンテンツの視聴者になったりすることができます。

このクリエイターと視聴者の関係は、ニコニコ動画においてのみ発生する一時的なもの、ということができます。そして、これは、現実における社会的な関係を伴わないものなので、純粋な評価が得られることになります。わかりやすく言うと、会社の人とカラオケに言った場合には、会社の人間関係が優先されるために、正確な歌唱力の評価が下されにくいのに対して、ニコニコ動画では、多数の視聴者が、いろいろなかたちで評価を下してくれます。

そして、(3)非対称の効用が交換されている、とは、「かたちの違う満足が交換されている」ことを意味します。クリエイターと視聴者との間、あるいはクリエイター間で、かたちの違う満足が交換されています。この「満足の交換の体系」がCGMを支えていると考えています。これについては、下記のエントリーを参照してください。

「初音ミク」ムーブメントから考えるCGMの弱点
http://blogs.itmedia.co.jp/london/2007/11/cgm_d7f4.html

また、私は、CGMを活性化させるには、多数の視聴者の存在が必要だと考えています。実際に、コンテンツを作っているのはクリエイターたちですが、そのモチベーションを維持・発展させているのは、多数の視聴者の存在だと思います。ですから、会費無料でもかまわないから、できるだけ多くの会員を集めた方がよいことになります。

もう一つは、多様なジャンルのクリエイターが集まった方が、CGMは活性化すると言えます。これは、あるジャンルのクリエイターは、別のジャンルのクリエイターに対するリスペクトの気持ちを抱き安いということと、多様なコラボレーションが期待できるからです。

特定のジャンルのクリエイターに限ったコミュニティは、初めは盛り上がったとしても、次第にクリエイター間のライバル意識が強くなってしまうのと、それに応じて、視聴者が熱狂的なファンとアンチにわかれて争いが始まり廃れてしまう可能性が高いと思います。しかし、何でもありのニコニコ動画は、こうした点を回避できていると思います。

すでにニコニコ動画は、多数の会員と多様なクリエイターの集まる場として機能しています。ですから、『ピアプロ』のような、ニコニコ動画を補完するサイトをのぞけば、ニコニコ動画のようなCGMを支える場として機能するサイトを、後発で作り上げるのは、なかなか大変なことなのではないかと思います。

もちろんニコニコ動画が今後どのように発展していくかについては予測不能な部分もあります。しかし、すでに私たちは、ニコニコ動画と「初音ミク」ムーブメントを通じて、CGMの楽しみ方を覚えてしまったことは、特筆すべきであると言えます。

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2007.12.09

「鏡音リン・レン」の名前を発音してみる

前回のエントリーで、英語のRとLについて考察しましたので、今回は、リン(Rin)とレン(Len)を正しく発音してみたいと思います。

まず、小学校の音楽の授業を思い出して、「ドレミファソラシド」と言ってみましょう。そして「レ」は「Re」なので、これを「リ」つまり「Ri」にかえて「Rin」と。低く響く重々しい感じになります。続いて、「ラ」は「La」なので、これを「Le」にかえて「Len」と。明るい軽快な感じになります。

試しに「ドレミファソラシド」の「ドレ」の後をすべて「レ」にして、「ドレレレレレレレ」と言ってみると、「ファ」のあたりでちょっと苦しくなってきます。また、「ドシラソファミレド」の「ドシラ」の後を「ラ」にして、「ドシララララララ」と言ってみると「ミ」のあたりで苦しくなってきます。もちろん一オクターブ高い「レ(Re)」や一オクターブ低い「ラ(La)」もあるのですが、これを歌うのは大変です。

だいたいにおいて英語の歌というのは、「R」のところは低い音程が、「L」のところは高い音程がくるように作詞作曲されています。なぜなら、その逆は、とても歌いにくいからです。

ところが日本語の場合は、「R」と「L」の区別が明確ではないので、たとえば普段「れんあい(Ren-ai)」と発音している「恋愛」という単語を、声をはりあげて「レーンーアイ(Le-n-ai)」と歌ってもかまわないことになっています。これは欧米人からすると、不思議なことなんですが、でも、そのことをいちいち指摘してくれるわけではありません・・・・・・。

ところで、「初音ミク」が歌っている歌を、日本語英語含めて、いろいろと聴いてみましたが、どうも「萌え声」ということもあって、高い方の「ラリルレロ」、つまり「La Li Lu Le Lo」は発音できているのですが、低く響く方の「ラリルレロ」、つまり「Ra Ri Ru Re Ro」が、うまく発音できていないようですね。

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2007.12.05

「鏡音リン・レン」の名前からRとLについて考察する

いまもっとも注目を集めている双子「鏡音リン・レン」は、リンがRinで、レンはLenと表記するそうなので、これにちなんで英語のRとLの違いについて考察してみたいと思います。

「日本人は英語のRの発音ができない」とは、よく言われることなのですが、実はこれは誤解なのです。日本人はRの発音ができないのではなくて、「ラリルレロ」、つまりローマ字では「Ra Ri Ru Re Ro」と表記される音の中に、Rの音とLの音がごちゃ混ぜになっていて区別ができなくなっていると言うのが正確だと思います。

簡単に言ってしまうと、Rはラリルレロの低い音、Lはラリルレロの高い音と区別することができます。たとえば、ドレミファソラシドの「レ」と「ラ」は、英仏伊語では、それぞれ「Re」と「La」と表記されるように、ヨーロッパでは異なる音として認識されています。

日本人でもロンドン(London)と言う時は、始めのロを高く、ちゃんと「Lo」と発音しているし、パリ(Paris)ではリを低く発音するので、ちゃんと「Ri」になっています。

ところが、たとえば「ULTRA」(ウルトラ)という単語は「UL」の「L」を高く、「TRA」の「R」を低く発音しないといけないのですが、日本人はこれを「ル」を低く、「ラ」を高く、つまり「URTLA」と、まったく反対に発音しています。また「ラーメン」は、「La-men」と発音しているのに、ローマ字では「Ra-men」と表記してしまいます。

日本人は、ある時は「R」も「L」も区別がついているのに、ある時は、正反対だったり、「R」と「L」の片方だけを間違えていたりしている、つまり、ごちゃ混ぜになっているだけで、決してRだけが発音できないというわけではありません。ただ、この状態は、欧米人からすると、さっぱり訳がわからないというだけなのです。

そして、英語においては、「R」または「L」を言いやすくするために、その前後を高く言ったり低く言ったりするので、「R」と「L」の音の違いがわからなかったとしても、前後の発音の仕方によって「R」か「L」を推測することができます。それほど厳密なものなのです。

ここで紹介した説は、もちろん専門的な学説ではなく、感覚的なものなのですが、それほど間違っていないと思います。西村肇『サバイバル英語のすすめ』(ちくま新書)という本でも、紹介されています(西村氏は「日本人はLの発音ができない」という前提で話をすすめていますが、論旨は同じです)。同書のまとめを紹介すると

Rは「低く響く音。顔を下に向けル・・・と響かせる。これは胸に響く」

Lは「明るく高く響く音。顔を上に向け、自然に舌を上あごにつけてルーと響かせる」

キャラクター・ボーカル・シリーズでも、将来は、英語の歌がきちんと歌えるものが開発されると、いっそうボーカロイドの可能性が広がることでしょう。

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2007.12.03

「鏡音リン」は、双子だった

キャラクター・ボーカル・シリーズ第二弾の「鏡音リン」には、男性バージョンの「鏡音レン」も存在するそうです。女性版「リン」と男性版「レン」の2種類の音声データを持つことになります。

http://www.crypton.co.jp/mp/pages/prod/vocaloid/cv02.jsp

「初音ミク」で製作した楽曲のデータは、リン、レンでも使用可能ですので、オリジナル曲が演奏される数は、一気に3倍となります。この曲はミクがいいけど、あっちはリン、そっちはレンというような最適な組み合わせが、いろいろと試されることになると思います。イラストやアニメのパターンも増えることでしょう。

しかし、年末年始、ニコニコ動画のサーバーは耐えられるのでしょうか? と思ったら、発売元のクリプトンが新しいサイト『ピアプロ』( http://piapro.jp/ )を開設するそうです。

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2007.12.01

なぜ「ニコニコ技術部」は、楽しそうなのか?

先週のエントリーで紹介した「ニコニコ技術部」ですが、なぜ、あんなに楽しそうなのでしょうか? もちろん、みなさんが技術実験を心の底から楽しんでやっているからなのですが、実は、もう1つ理由があります。それは、「初音ミク」のオリジナル曲を自由にBGMとして使うことができるという点にあります。

企業の作ったPRビデオなどを見ていても、BGMが良くないと退屈してしまいます。技術紹介のビデオは、よほど、その技術に関心がない限りは退屈するのが普通です。

それは、「ニコニコ技術部」のコンテンツにおいても同様なのですが、「ニコニコ技術部」では、初音ミクのオリジナル曲をよりどりみどりで使うことができるので、絵的につまらない部分でも、音楽を楽しむことで、やり過ごすことができます。

映像表現において、音楽のはたす役割は、とても大きいと言うことができます。たとえば、『踊る大捜査線』シリーズをBGM無しで見たとしたら、その面白さは、半分以下になってしまうでしょう。

現在TVで放送されている番組の多くは、つまらない映像をBGMで誤魔化しているものが多いと感じています。そして、これまでは、TV局だけが、比較的自由にBGM用の音楽を利用できるという特権を持つことによって、一般の人が作る映像コンテンツよりも優位にたってきました。

しかし、その特権も、もはや崩れつつあります。つまり、「初音ミク」、「鏡音リン」というボーカロイドの登場は、単に一般の人が音楽を作ることができるようになった、ということ以上のインパクトを持っていると言うことができます。

というわけで、ブームに乗って、ついうっかり「初音ミク」を買ったものの、「使いこなせない」、「作詞作曲のセンスがない」などと弱音を吐いている方は、まずは、ニコニコ技術部用のBGM製作に挑戦してみるのもよいかもしれませんね(笑)。

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