2010.10.20

特捜神話の崩壊――日本のポストモダン Scene2

書評で魚住昭の『冤罪法廷』を紹介しました。叙述の中心は、郵便不正事件でしたが、それ以外にも、「特捜神話の崩壊」を印象づける事件がいくつも紹介されていました。

▽『冤罪法廷』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/10/post-c77c.html

9月10日に、大阪地裁で無罪判決がくだされた厚生労働省の村木元局長の弁護士をつとめたのは弘中惇一郎弁護士でしたが、同弁護士はロス疑惑の三浦和義、薬害エイズの安部英の無罪を勝ち取ったことでも知られています。

同弁護士は、三浦については、事件当時経営していた輸入雑貨店フルハムロードが儲かっていたので、そもそも保険金詐欺を行う必要がなかった、銃撃現場の写真に写っていた白いバンは実行犯が借りたバンとは別のものだった、そもそも三浦と実行犯が事前に共謀していた形跡はなかった、ことなどを立証して無罪を勝ち取ります。

一方、安部については、アメリカ人とフランス人のエイズ研究者に行った、安部に有利な嘱託尋問調書を検察側が隠していたことを指摘します。

また、当時の菅直人厚生大臣が官僚に命じて発見させた「郡司ファイル」なるものが、実は、単なるメモ書きを綴じただけのものだったようで、これは政治家としての菅直人の評価にも関わってくる事実だと思います。

ところで、三浦にしろ、安部にしろ事件当時のマスコミ報道によって刷り込まれた悪人イメージが強すぎたことから、二人の無罪判決は、むしろ裁判所の方がおかしいのではないか、と感じた人も多かったと思います。しかし、実は、検察の立てたストーリーが穴だらけだったり、被告に有利な証拠をわざと隠していたことがわかります。

本書では、このほかにも会計処理のミスを悪質な粉飾とみなしたライブドア事件、過酷な取り調べが行われたことが明らかになったリクルート事件、国策捜査という言葉を広めた鈴木宗男事件、小沢一郎の政治資金にまつわる事件、そして、検察の裏金を告発しようとした三井環を大阪地検特捜部が口封じした事件などが紹介される。

特に最後の裏金告発の口封じ事件について、魚住は、次のように述懐している。

《私の特捜感を最終的に決定づけたのは、すでに述べた、大阪高検公安部長の三井環が大阪地検特捜部の手で口封じ逮捕された事件(02年4月)だった。検察は組織を守るためならどんな非道なことでもやってのける。それを目の当たりにして私は恐怖に慄いた。》(p.273)

そして、魚住は、本書の最後に、こうも書いている。

《9月10日は、特捜神話が崩壊した日として歴史に記録されるだろう。》(p.281)

◆日本のポストモダン #2
特捜神話の崩壊
移行期間:2002年4月-2010年9月


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