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2010年12月

2010.12.22

2010年のアメリカの電子書籍販売が、どれくらいになるか推計してみると……

アメリカでは、電子書籍の販売額が伸びつつある、と言われていますが、2010年はどれくらいの金額になるか、おおよその推計をしてみたいと思います。

まず、米出版社協会 (The Association of American Publishers = AAP)は、12月8日に、下記のようなリリースを発表しています。

AAP Reports October Book Sales
http://www.publishers.org/main/PressCenter/Archicves/2010_Dec/AAPReportsOctoberBookSales.htm
January-October 2010 year-to-date E-book sales are up 171.3 percent reaching $345.3 million compared to 127.3 million from January-October 2009.

そして、この内容を表にしたものが下表です(単位:100万ドル)。

20101222aap

これによると、アメリカにおける、2010年の1月から10月までの10ヶ月間の書籍の販売額は、39億6970万ドル(3321億円)。一方、1-10月の電子書籍の販売額は、3億4530万ドル(288億円)で、8.7%を占めている、とされています。

しかし、このデータは、AAPがデータを収集している出版社に限られた、卸売りベースのデータなので、これを小売りに換算してみたいと思います。

アメリカの2009年の電子書籍販売は3億ドル超
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2010/04/20093-3691.html

上記のエントリーでは、2009年の小売りベースのアメリカの書籍の販売額は、239億ドルで、電子書籍の販売額は3億1300万ドル、売上げに占める比率は1.3%とされています。

表の2009年のデータと上記のエントリーを比較すると(左:卸売りベース、右:小売りベース)

2009年の書籍全体の売上高 
51億2740万ドル→239億ドル 4.66倍 
2009年の電子書籍の売上高
1億6950万ドル→3億1300万ドル 1.85倍
2009年の電子書籍の比率
3.31%→1.3% 0.39倍

この倍率を元にして、2010年1-10月の卸売りデータから、2010年1-12月の卸売りデータを推計して、さらに小売りデータに変換すると

2010年の書籍全体の売上高 
39億6970万ドル(÷10×12)→47億2390万ドル(×4.66)→221億ドル  
2010年の電子書籍の売上高
3億4530万ドル(÷10×12)→4億1436万ドル(×1.85)→7億6657万ドル
2010年の電子書籍の比率
8.7%(×0.39)→3.39%

7億6657万ドルを221億ドルで割ると、3.47%となります。比率だけの推計でも3.39%と出ていますので、2010年のアメリカの電子書籍の小売りベースの比率は3.4%あたりになるのではないかと推測できます。

アーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間のキャズムは普及率16%くらいのところにあると言われていますが、その16%を超えるのには、もう少し時間がかかるのかしれませんね。

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2010.12.21

2011年2月よりプロダクト・プレイスメント解禁――イギリスでガイドライン決まる

イギリスでは、2011年2月28日より、映画やテレビ番組内で商品広告を行うプロダクト・プレイスメント(Product Placement)が解禁されることが決まりました。これにあわせてOfcom(Office of Communications = 英国情報通信庁)は、プロダクト・プレイスメントに関するガイドラインを発表しました。

Ofcom confirms product placement on UK TV
http://www.guardian.co.uk/media/2010/dec/20/ofcom-product-placement-uk-tv
Product placement will be allowed on UK television from the end of February 2011, Ofcom confirmed today.
The media regulator published a set of rules that will govern how products can be promoted as part of a revised broadcasting code following a consultation with the industry.

20101220productplacement

[参考]The Ofcom Broadcasting Code
http://stakeholders.ofcom.org.uk/broadcasting/broadcast-codes/broadcast-code/

まず、プロダクト・プレイスメントが含まれる番組では、それを示すロゴを、画面上に表示しなければなりません。そのロゴについては、年が明けたら、改めて公表されるとのこと。

ロゴは、番組の冒頭少なくとも3秒間表示されなければならず、また、CMから番組に戻った時にも表示しなければなりません。

子供番組やニュース番組では、プロダクト・プレイスメントは許可されません。また、イギリスの国内問題を扱った番組や宗教番組でも禁止されます。

映画(ドラマおよびドキュメンタリー)、メロドラマを含むシリーズ番組、娯楽番組、スポーツ番組の4つのカテゴリーでは、プロダクト・プレイスメントが許可されます。

酒、煙草、ギャンブル、薬品、ベビー・ミルク、砂糖や塩が多く含まれる食品も禁止されています。デート・サービス、武器のプロダクト・プレイスメントも禁止されています。

過度に目立つようなプロダクト・プレイスメントは禁止され、また、自然な編集が施されている必要があります。これは、広告ばかりの番組が増えないようにするための措置である。

イギリスにおけるプロダクト・プレイスメントの規模は、広告全体の5%、約1億5000万ポンド(194億円)と推計されています。

[参考]
TVのプロダクト・プレイスメント広告でジャンク・フードなどが制限へ
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2010/02/tv-b351.html
プロダクト・プレイスメントにゴーサイン――イギリス
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2010/06/post-211e.html

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2010.12.09

終身雇用の終わり――日本のポストモダン Scene3

会社更生法を申請し、更生計画を認可されたJALが、12月31日付けで整理解雇を行う方針であることを明らかにしました。

「みんな私らが悪いんであって、社員は悪くありませんから!」――。

この有名なフレーズとともに、山一証券が自主廃業を発表したは1997年11月24日のこと。同じ月には、三洋証券と北海道拓殖銀行が経営破綻。1998年には長銀と日債銀が経営に行き詰まり、一時国有化された。一昔前は、大手金融機関に就職するということは、給料の高い公務員になるのと同義だったが、その幻想は、はかなくも打ち砕かれた。

また、カルロス=ゴーンが日産自動車の社長として、社員のリストラや系列会社の切り離しを行ったのが1999年のこと。こうした事実から、日本人の多くは、薄々、「日本経済の繁栄を支えてきた終身雇用は終わったのではないか?」と感じはじめたのではないだろうか?

しかし、日本において労働市場の発達は未成熟で、終身雇用にかわる労働慣行が生まれてきているとは言い難い。

社会心理学者の山岸俊男とハーバード大学社会部長のメアリー・C・ブリントンによる対談本『リスクに背を向ける日本人』(講談社新書)において、次のようにように語っている。

《メアリー つまり、再雇用のための労働市場や訓練のための支援が十分に整備される前に、終身雇用の終焉や非正規雇用の本格化が始まってしまったということですね。クビを切るなというかたちでの雇用の安定が維持できなくなったのに、再雇用の促進というかたちでの雇用の安定が整備されていない、と。
山岸 だから、今の職場にしがみつくこともできないし、新しい職を見つけることも難しそうだという、二重の意味での雇用の不安に今の日本人は直面しているんだよ。》(pp.34-35)

そして、今日(12月9日)に次のようなニュースが流れた。

▼日航、200人整理解雇
http://www.asahi.com/business/update/1209/TKY201012090355.html
《会社更生手続き中の日本航空は9日、パイロットと客室乗務員ら約200人を12月31日付で解雇する手続きに入ったと発表した。再延長していた希望退職の募集を9日に締め切ったが、目標の200人に対して応募が40人にとどまったため。》

JALの経営に対する懸念は十年以上前からささやかれてきた。

▽堕ちた翼の真実
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/05/post-936b.html
▽『腐った翼』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/07/post-c2e7.html

この間、JALと競合するANAは、経営体質を強化するため、給与水準を下げ、退職者の年金も減額している。また、新興エアラインのスカイマークは、ほとんどゼロから出発して、いまの地位を築いている。

一方のJALは、経営危機がささやかれながらも、十年以上の長きにわたり、ANAやスカイマークがしてきたような企業努力を怠ってきたのではないか。

今回、JALが解雇整理に踏み切ったのは、駄目なもんは駄目、組合がいくらゴネても駄目、ということがようやく明らかにされたのではないか、と思う。

◆日本のポストモダン #3
終身雇用の終わり
移行期間:1997年11月-2010年12月

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2010.12.07

ネットサービスで訴えられないためには――ウィキリークス創設者逮捕に思ふ

ウィキリークスのジュリアン・アサンジ氏が逮捕されたわけですが……。

ウィキリークスの創設者が逮捕
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/news/2010/12/post-7431.html

以前、『新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に』という本の書評をしたことがあるのですが、

その時、次のような疑問を呈したことがあります。

▽誰でもメディアの時代?
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/04/post-45da.html
《しかし、いつも、この手の本を読んで思うのは、さすがに個人のレベルだと、訴訟やトラブルに巻き込まれた場合のデメリットが大きすぎて、それに、どう対処すればいいのかが明確ではない点ですよね。》

そして、昨日、『ウェブで儲ける人と損する人の法則』という本を下記のエントリーで紹介しましたが、

▽もしもホリエモンがフジテレビを買収していたら
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/12/post-b497.html

ネットニュースの編集者である著者が、ネットニュースがどのような基準で書かれるのかということに関して、「炎上・裁判沙汰を避ける」として次のような6点をあげています。

・特定個人を中傷する内容は書かない(クレームが怖いから)

・記者の主観を書かない(記者の顔が見えると読者からコメント欄でたたかれる)

・不祥事をしつこく追及しない。傷に塩を塗らない(将来的な逆襲が怖いから。放っておけば他社がやる)

・ネガティブな噂話は載せない(「関係者によると」といった表現でネガティブなことを書くと、内部で害者捜しがはじまる可能性があり、コメントした人に危害が加わる可能性があるから。また、そのコメントが私怨である可能性もあり、信憑性も分からないため)

・犯罪者の実名を書かない

・人の顔が特定できる写真を載せない

これらの基準について、著者は、

《最初の四つはやや臆病な感じではあるが、比較的まっとうな基準だろう。私たちは人数が少ないだけに、クレームを受けようものなら業務が止まってしまう。だから極力穏やかな記事を出しているのである。》(pp.99-100)

と語っています。また、

《これらを見ると、ネットニュースというものは、かなりクレームを受けやすい存在であるという点がお分かりだろう。なにせ、ネガティブなネタが広がりやすいネットの世界だけに、関係者が知ったり、さらにはクレームをつけたいだけの暇人にとっての格好の遊び場になるからだ。》(p.101)

とも述べています。

こうして見るとウィキリークスは、書かれた側から恨みを買うようなことをしまくっていることがわかりますね。逆に、ジャーナリズムとして見れば、ネットニュースは、腰が引けまくっているわけで、ウィキリークスと、ネットニュースの間を埋める存在として、いろいろな意味で良く訓練されたジャーナリズムが生き残る可能性はあるとも言えます。

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