1994.09.10

▽『寄生獣』――90年代を代表する傑作エンターテイメント



岩明均『寄生獣』(講談社)



 「寄生獣」は、かなり早い段階からマニアの間で高い評価を受けていた漫画である。マイナー月刊誌に連載されているため話題になりにくかったが、それでも単行本は増刷を重ねている。

 ある日、寄生生物の胞子が、空から大量に降ってくる。それらは、人間の脳に寄生し、その体を乗っ取ってしまう。主人公の高校生だけは、寄生生物が入り込む際に失敗し、右腕が寄生生物、それ以外は人間という共生体になってしまう。人間を乗っ取った寄生生物は、人間を主食としながら、地球の支配を進めていく。例外的に共生体となった主人公は、寄生生物の異端として追われるようになる。

 種の闘争といったSF的テーマが、日常の描写の中に巧みに織り込まれている。生きるために本能だけで行動する寄生生物と、感情に左右される人間との、心理描写の対比も秀逸である。

 エンターテイメント性を保ちながら、思想性すら感じさせる漫画としては、80年代には宮崎駿、大友克洋、諸星大二郎らの作品があった。連載中のため今後の展開如何だが、「寄生獣」は90年代を代表する作品足り得るのではないだろうか。

 岩明均、小林よしのりに加えてもう一人90年代の漫画家をあげるとすれば、山本直樹かもしれない。「夏の思い出」(太田出版、九五〇円)の表題作では、理性の欲望に対する勝利を予定調和として描くことで、エロスの本質を暴いてみせている。

▽山本直樹『夏の思い出』(太田出版)



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