1994.10.10

▽『良い円高 悪い円高』――現在進行中の円高を分析するポレミカルな日本経済論考



リチャード・クー『良い円高 悪い円高』(東洋経済新報社)



 売れている経済書、ということで、リチャード・クー氏の『良い円高 悪い円高』。

 クー氏によると、円高には「巨額の経常収支の黒字があるなかで輸入を増やし、既に巨額になっている輸出に輸入が追いつく形で不均衡が是正される」良い円高と、「輸入障壁や商慣習の違いから、なかなか増えない輸入に対して、輸出が減る形で不均衡が是正される」悪い円高の、二つの種類があるという。 現在進行中の円高は「悪い円高」であり、その結果、将来性のある輸出産業を縮小か撤退に追い込む一方で、国内には輸入障壁に守られた将来性のない企業・産業ばかりが残される、と指摘する。

 クー氏は日本の市場開放、規制緩和を主張している。これは現在なされている議論と結論は同じである。本書がポレミカルである点は、今回の円高の性質と原因の分析に求められる。

 ある国の輸出産業が、輸出競争力をもち外貨を稼ぐようになると、国内での支払いのために外貨を自国通貨に代える必要に迫られる。その際、為替市場にはそれに見合うだけの外貨の買い手(輸入産業)が存在しなければならない。もしそうでなければ、外貨は自国通貨に対し安くしなければ買い手がつかなくなってしまう(自国通貨は外貨に対して高くなる)。その結果、その輸出産業は、自国通貨の高騰により壊滅的な打撃を受けることになる。日本では、貿易黒字が騒がれるようになって以来、この状態が続いてきた。

 しかし、80年の外為法改正による対外投資の自由化によって、日本の機関投資家は外債投資に殺到した。この結果生じた、外貨需要の急増によって、80年代は、膨大な経常黒字にもかかわらず比較的円安となり、日本の輸出産業は、息をつくことができた。

 ところで、日本の対外投資が円建てで利益を出すには、その国の通貨が円に対し中長期的に上昇する必要があり、そのためには、その国が対日輸出を増やし、対日貿易を改善させる必要がある。しかし日本の市場開放は一向にすすまないため、貿易不均衡も解消せずこうした国の通貨は対円で下落してきた。

 日本の機関投資家が外国通貨を買っているうちは、輸出産業の外貨売りを吸収することができたが、90年代の株価暴落によって、外債どころではなくなってしまった。機関投資家という外貨の買い手がいなくなったた結果が、今回の円高である。これが第一章の主張である。

 第二章は円高を放置する官僚批判、第三章は金融と土地の政策批判、第四章は日本株式会社批判と続く。難しい内容を噛み砕いて分かりやすく伝えようとする姿勢に好感がもてる。ぜひご一読を。 



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