1994.10.10

▽『たけし!』



 『たけし!』(講談社)は、「俺の毒ガス半生記」と銘打ったビートたけしの自伝的半生記。本書が発行された1981年11月と言えば、ちょうど前年に始まった漫才ブームが一息ついた頃。人気先行型の漫才コンビが落ち目になっていく中で、ビートたけしのセンスが注目され始めた時期でもある。

 とはいえ、まだまだ、ビートたけしは単なるコメディアンにすぎず、エッセイスト、小説家、映画監督といった多彩な才能を開花させるのは、このずっと後のことである。

 しかし、8月に起こしたバイク事故をめぐる報道を見ると、いつからこの人はこれほどまでに愛される人物になったのだろうか、と思ってしまう。本書での悪役ぶりが、懐かしくさえ感じてしまう。

 ところで「男の顔は履歴書」という言葉があるが、この人ほど顔つきが変わった人もいないだろう。そのきっかけは、やはりあの「フライデー襲撃事件」。タレント生命を失う覚悟もあったと後に語っている。

 「写真誌による報道→襲撃事件」という図式から、「アイドルタレントとのスキャンダル→無謀なバイク事故」と、最近起きた出来事をつなげて見てしまうのは私だけだろうか。しかも、今回は別の意味で顔つきが変わってしまうかもしれないのだ。

 「いつでも三畳間の生活に戻れるね。これだけは自信ある。いつだって自分の人生をやり直せるよ」

 それを許さないのが、テレビ局の都合ということだろうか。



|

書評1990s」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ▽『たけし!』:

« ▽電脳浄土放浪記――『現代』1994年9月号 | トップページ | ▽『良い円高 悪い円高』――現在進行中の円高を分析するポレミカルな日本経済論考 »