1994.11.10

▽『中年なじみ』――会社人間の半生を問い直すミドル達の生き様



野田正彰『中年なじみ』(ダイヤモンド社)



 『週刊ダイヤモンド』に連載中の「ミドルの履歴書」をまとめたもの。著者の野田正彰氏は、京都造形芸術大学教授であり、これまでにも『コンピュータ新人類の発見』『喪の途上にて』などで数々のノンフィクション賞を受賞している。野田氏の専攻は文化精神医学であり、サラリーマンのメンタルな部分に照準を合わせた著作も数多い。

 本書の書名である『中年なじみ』とは、「中年に達したサラリーマンが機能的なビジネスの付き合いだけでなく、子供のころまでの人格的な付き合いをもう一度取り戻したいと思っている。その心情を名付けたものである」という。

 その動きは、地域活動、ボランティア、研究会、家族との関係の見直しといったように人それぞれだが、会社人間として生きてきたサラリーマンが、自分の人生の意味を問い直そうとするところから、始まっている。

 「団塊の世代が中年に達し、中年の問題が、大きくなろうとしている。バブル期、当時五十歳代後半から六十歳代の経営者たちによって踊らされた四十歳代前半の男たちが、ながびく不況のなかで、雇用リストラ(再調整)の対象にされている」

 今回の不況を表現するならば、個人的には「団塊世代不況」といえるのではないか、と思っている、バブル期に、各企業の営業の一線に立っていたのが団塊世代なら、バブル崩壊後のリストラの対象になるのも、団塊世代といえるだろう。一年ほど前に、製造業各社で五〇歳代のホワイトカラーの首切りが話題となったが、あれで終わりだとは考えにくい。むしろ、いずれ来る、団塊世代を対象とするリストラの伏線であると見るのが自然だろう。問題は、それをどうみるか、である。

 すでに一年以上前から動きがあったはずの「金融空洞化」が、今年の6月頃から、にわかにマスコミで騒がれ始めるようになった。そこで、繰り広げられる「日本は駄目だ」キャンペーン。金融関係者も、苦悶の表情を浮かべながら「シンガポール、香港をみならわなければ」と語る。

 かつて、高度成長の時代には、戦争に生き残った昭和一ケタ世代が、「日本は駄目だ。アメリカを見習わなければ」と言いながら、歯を食いしばって頑張ってきた。そのアメリカが、シンガポールや香港に置き換わったものの、今度は誰が歯を食いしばってくれるのかが、見えてこない。

 団塊世代が、無責任な経営者の犠牲となっていく惨状をみれば、その下の世代が「滅私奉公」に疑問を持つのは、簡単な道理である。また、日本経済を実質的に支えてきた製造業、特に下請けの中小企業が全く遇されない経済構造をみれば、誰もそこへ行かなくなるのも当然だろう。

 女性雇用の問題もある。今年の就職戦線は、特に女子大生にとって厳しいものであった。男女平等の教育を受けてきたはずの女性達が、社会の入り口で選別される。「男女平等だったはずなのに」という思いがついて回るのも、また当然である。



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