1995.01.10

▽黄金の読書――『ノーサイド』1994年12月号



 『ノーサイド』といえば、中高年を対象とした月刊誌。その12月号で「すべての本好きと、元・本好きに捧げる」と銘打った、読書に関する特集を行っている。

 フランス文学者の鹿島茂氏が、「文学全集の活用術」を提案している。昭和三〇年代から四〇年代にかけて、日本のほとんどの家庭には、文学全集が置かれていた。それが今や、家庭内の無用の長物と化し、古本屋にいたっては、「タダでも引き取らない」有り様だ。

 鹿島氏によれば、「教養や人格形成の手段として『文学全集』を編んだ国は世界でも日本しかない」という。外国では教養を身につけるために、文学作品を読む若者などはいない、という。

 「そもそも、こんな高級な大人の文学を、十七、八の若僧が読んでわかるわけがないではないか。元来、古典というのは、ありとあらゆる人生経験を積んだ大人が対等の読者に語りかけたものだからこそ後生に残ったのである」

 鹿島氏は、ゴミ寸前の文学全集を解体し、自分の好みのテーマに沿って編集し直すことを提案している。たとえば、自分の好きな都市を描いた作品だけを集め、自分だけの「パリ全集」や「ロンドン全集」を作る。パリやロンドンを旅した後は、これで思い出に浸る。「親子」、「裁判」といったテーマで全集を作っても面白いかもしれない。

もはや文学全集が格安で手に入る時代である。「老後の楽しみは、もうこれでほとんど決まり」と結んでいる。



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