1995.03.10

▽『昭和恐慌と経済政策』




中村隆英『昭和恐慌と経済政策』(講談社学芸文庫)



 バブル崩壊、不良債権の増加、そして大震災。

 「歴史は繰り返す」というがなんだか、昭和恐慌前夜の状況に似てきたとはいえまいか。

 1923年の関東大震災のおり、政府は震災地振り出しの手形の支払いを一時延期した。その後、この手形を日銀が再割引をすることで経済界を救済した。再割引をした四億四〇〇〇万円の手形の半分は決済されたが、なお二億円強の手形が残った。このうち九二〇〇万円が、経営の悪化していた鈴木商店関係の手形であった。また、鈴木商店と関係の深い台湾銀行は一億円の震災手形を保有していた。

 金解禁を目指し、震災手形の整理をしようとした政府は、公債を発行して穴埋めすることを考えた。しかし、この「震災手形法案」は、野党の攻撃の対象となり「震災手形発行者とその所有者を公表しろ」という声が上がった。そうこうするうち「渡辺銀行が破綻した」という片岡蔵相の失言が引き金となり銀行への取り付けが頻発した。

 結局、震災手形法案は通過したものの、鈴木商店倒産への懸念から、台湾銀行へコール資金の回収が殺到した。政府は、日銀に台湾銀行への新たな貸し付けを行わせようとしたが、不調に終わり、当時の若槻内閣は総辞職。台湾銀行は営業停止、多くの銀行は取り付けに会い、金融恐慌はピークに達した。

 次の内閣の高橋蔵相は、三週間の支払い猶予を実施、日銀と台湾銀行には合計七億円の損失保障を行った――。



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