1995.04.10

▽『物語 アイルランドの歴史』――和平実現なるか? イギリスの裏面史をたどる



波多野裕造『物語アイルランドの歴史―欧州連合に賭ける“妖精の国”』(中公新書)



 94年9月のIRA(アイルランド共和軍)の停戦合意により七〇年余り続いてきた北アイルランド紛争は、ようやく解決の糸口をつかんだかに見える。

 本書は、日本人にとって馴染みの薄いアイルランドの歴史を概観することができる。そこではイギリスの植民地支配の苛酷な一面が見てとれる。

 最近は、ヨーロッパの先住民族「ケルト」に注目が集まっているが、アイルランド人には、ケルト文明の影響が色濃く残っている。このケルト民族に、北欧系の民族が合流し初期のアイルランド人を形成した。イギリスによる支配が始まったのは、イギリス史における「ノルマンコンクェスト」の時代である。これ以降八世紀にわたり、少数のイギリス人が多数のアイルランド人を支配する構図が作られ、時代とともに、少数のプロテスタント(イギリス人)による多数のカトリック(アイルランド人)の支配へと移行する。

 1921年に、英・アイ条約が結ばれ南アイルランドは独立したが、プロテスタントが多数を占める北アイルランドは連合王国(イギリス)にとどまった。少数派となった北アイルランドのカトリックは、二級市民の扱いを受けるようになった。これが、血で血を洗う北アイルランド紛争の原因である。

 アイルランド史はまさにイギリスの裏面史である。その意味では、イギリスの歴史が頭に入っていないと本書はやや分かりにくい。



|

書評1990s」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ▽『物語 アイルランドの歴史』――和平実現なるか? イギリスの裏面史をたどる:

« 「イジメ」――イジメ、集団リンチ 事態はさらに悪化する? | トップページ | ▽『岸辺のアルバム』 »