1995.05.10

▽「宗教を学ぼう!」――「終末思想」を唱える仏教って、いったい?



 なんだか、宗教が騒がしい。

 かねてより、第三次宗教ブームと言われてきたが、現在の最大の関心事は、やはりオウム真理教。一新興宗教が、秘密の化学工場をもち、毒ガスを製造する・・。恐しい時代になったものである。

 ところで、マスコミの報道によると、オウム真理教の教義では、世界は97年にハルマゲドン(最終戦争)へと突入するという。しかし、そもそもオウム真理教は、自ら仏教徒を名乗っている。仏教には、世界はだんだん悪くなるという「法末思想」はあっても、「終末思想」は無いはずだ。ハルマゲドンといえば、キリスト教における概念。いったいどうなっているのだろう?

 ここは、一つ宗教をきちんと学んでみるのもいいかもしれない。一般に、宗教に関する書物は、宗教家が自分の信ずる宗教の教義や宗教体験を語ったものが多く、部外者には分かりにくい。宗教学者や歴史学者の書いた難しい本を、読むのも骨が折れる。簡単に宗教を解説したものを探してみると、阿刀田高著『旧約聖書を知っていますか』『新約聖書を知っていますか』(新潮社)が、キリスト教を知るにはいちばん手っ取りばやい。旧約、新訳の各聖書をかなり、というか目茶苦茶大胆にダイジェストにしたものだが、ユダヤ民族の歴史書としての旧約、イエス=キリストの行動録としての新訳としてのエッセンスは読み取れる。

 この二冊で得た知識をもとに、続けて読みたいのが、ひろさちや著『仏教とキリスト教』(新潮選書)。仏教徒のひろさちやが、五〇の質問に答える形で、キリスト教と仏教の比較をしている。日本人にとっては、輪廻を抜け出た世界といえば極楽浄土しか思い浮かばないが、極楽以外にも浄土世界はたくさんある、という。同じ著者の『仏教と神道』も続けて読むと、日本に伝わった仏教が、いかに本来の仏教と異なってきているかが分かり興味深い。

 シリーズ三部作の『キリスト教とイスラム教』もよめば、取りあえず三大宗教+神道を制覇したことになる。あとは、青土社の「シリーズ世界の宗教」などでブラッシュアップしてはいかがだろうか。

 最近の新興宗教の動向に関しては、やや古いが、別冊宝島『いまどきの神サマ』が詳しい。このなかでは、オウム真理教の入信体験記が綴られており、中々興味深い。これを読むかぎりでは、それほど狂信的な宗教ではないという印象を受ける。しかし、本書が出版されて五年もたっており、その間にオウム真理教が、大きく変質したとみるのは間違いではないだろう。

 キリスト教の歴史も、当初は迫害の歴史であった。一連の事件を、迫害と受け取ったオウム真理教が、より狂信的な宗教組織へと変貌する可能性が全く無いとも言い切れない。日本は、まさに世紀末を迎えようとしている。



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