1995.05.10

▽『ヘーゲル・大人のなりかた』――いまこそヘーゲル? みんな悩んで大きくなった



西研『ヘーゲル・大人のなりかた』(日本放送出版協会)



 日本人のように忘れっぽい国民性の中にあっては、少し前のことを振り返るということは、きわめて意義のある?精神的態度″といえる。80年代にブームとなった「現代思想」などは、絶好の振り返りネタだろう。

 80年代に流行った「ポスト・モダニズム」は、70年代までの哲学の中心思想であったヘーゲルに対する批判から始まった。それは、「社会変革を目指す思想(広い意味でのマルクス主義)にはもうウンザリした」という時代背景があったためだ。

 ポスト・モダニズムで代表的な思想家は、ジャック=デリダ、ミシェル=フーコー、ジル=ドゥールズなどのフランスの哲学者たちであった。彼らが、依拠したのは、ヘーゲルとは異なる思想的展開をしたニーチェであった。

 しかし、「ヘーゲル批判」を最重要課題としたポスト・モダニズムも、かつての勢いは失っている。ポスト・モダン思想は、著者が言うように「過渡期の思想だった」のだろうか。少なくとも、80年代の思想的欄熟を、もう一度検証する時期にきているのは、間違いない。

 ヘーゲルだけではなく、ニーチェやウィトゲンシュタインなどの入門書や伝記なども、最近相次いで刊行されている。思想的な空白は、しばらく続くものと思われるが、今のうちに知的ゲームとして、自分にピッタリくる思想を探してみるのも意義のあることだろう。



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