1995.11.22

▽『「オウム真理教」追跡2200日』

江川紹子『「オウム真理教」追跡2200日』(文藝春秋)



 坂本弁護士一家の遺体も発見され、また、この9月から信者の公判ラッシュとなり、オウム真理教事件は一つの節目を迎えたことになる。本書は、オウム追求の急先鋒と江川紹子氏が、主に週刊文春に書いた記事を中心にまとめた物である。

 この坂本事件では、当初からオウム真理教は疑われていた。今になってオウム真理教の性格が分かった部分も多いが、その分を差し引いてみても、江川氏が初期に書いた記事は、十分説得力のある物だった。今となっては、当時の警察やマスコミの対応も、腹立たしい限りである。

 しかし、その後のオウム側のマスコミ操縦によって、オウム犯人説は次第に歪められていった。この点は、日本のマスコミ全体の反省点として十分検証される必要がある。

 江川紹子というジャーナリストの過去の仕事をみれば、オウム関連以外では、名張毒ブドウ酒事件などの冤罪事件や、『大火砕流に消ゆ』といった大新聞の報道姿勢を扱った物がある。

 一連のオウム報道では、江川氏は、反オウムの急先鋒としてテレビに出続けた。それは、ある部分、反オウムという点で利害が一致していたためでもある。しかし、テレビとて、一つの権力機構であり、人権を押しつぶすことも、容易に起こりうる。

 その時、大マスコミは、自らに都合の悪い相手に対し、手のひらを返すこともあるだろう。大マスコミの都合を越えて、仕事を続けられる、したたかなジャーナリストであってほしい。


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