1995.11.22

▽『ヨーロッパの死者の書』――よく死ぬためのマニュアルとは?



竹下節子『ヨーロッパの死者の書』(ちくま新書)



 柳田邦男の『犠牲』に比べれば、本書はやや観念的であるが、重要な視点を持っている。

 本書によれば、「死者の書」とは、死者が死後の世界でいかに振る舞うべきかというマニュアルのようなもので、生前にも読まれ、また、生き残った人がそれにしたがって死者をフォローし、死を共同体の事業とするためのものである。

 有名な「チベットの死者の書」を初めとして古代のさまざまな文化には、必ず死者の書があった。キリスト教には、そうしたタイトルの書物はないが、長い歴史の中で、「死者の書」に相当するものが、作られてきた。

 本書は、メソポタミア文明から始まり、タイトル通りに「ヨーロッパの死者の書」について触れていく。この中で、重要な視点とは何か。

 今の日本は、日本的なものをどんどん失いながら、西洋化した結果、死がきわめてネガティブなものになり、「生産と消費とのサイクルからはみでる弱者や死者は社会のシステムの外へ外へと追いやられるようになってしまった」という。

 そして、「私たちは『良く生きる』ためのマニュアルづくりにばかり奔走してきたけれど、『良く死ぬ』という方法論を視野にとりこんでいない限り、『良く生きる』マニュアルも決して完全なものにはならない」と指摘する。

 本書をベースに「日本の死者の書」が書かれることを望む。



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