1996.01.22

▽『覇者の誤算』



立石泰則『覇者の誤算(上)』(日本経済新聞社)



立石泰則『覇者の誤算(下)』(日本経済新聞社)




 この欄は、昔の出来事について書かれた書籍を現時点の問題意識で読むとどう読めるか、といった主旨で始めたものである。

今回取り上げるのは、ジャーナリスト・立石泰則氏が、日米のコンピュータ戦争を描いた『覇者の誤算』。といっても、今回の関心は、コンピュータ産業の盛衰についてではなく、「アメリカにおける日本企業の犯罪」。

 1982年6月23日、日本の新聞は一面で、IBM産業スパイ事件を大々的に報じた。これは、日立製作所と三菱電機の社員が、IBMの技術情報を盗もうとしたために、FBIのおとり捜査によって逮捕された、という事件である。

 本書にも、「高度技術商品で、アメリカは自動車の二の舞を演じてはならない」との米国政府高官の言葉が引用されているように、この事件は、日米の貿易摩擦という文脈で語られることが多い。日本でも、おとり捜査に対する感情的な反発は強かった。しかし、日立や三菱のダメージは小さくなかった。「技術の日立」の看板が地に落ちたように、日本メーカーの自主開発力のなさを露呈させた事件でもあった。結局、日本のメーカーは、IBMの軍門に下らされた。

 では、大和銀行のケースはどうか。巨額損失事件が何かの陰謀とは思えないが、アメリカに絶好の口実を与えてしまった。BIS規制が邦銀のオーバープレゼンスを規制するものであったように、趨勢としてのジャパンバッシングは、80年代も今も何ら変わってけないのである。



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