1996.02.22

▽『退き際の研究』



内橋克人『退き際の研究』(日本経済新聞社)



 本書は、経済ジャーナリストの内橋克人氏が、88年から89年にかけて『日経ビジネス』誌に連載したものをまとめなおしたものである。

 企業の経営者を中心に、その「出処進退」ぶりをレポートしたものであるが、その内答については、各章のサブタイトルをみるだけで容易に想像がつくはずだ。

「公私裁然の男、太田垣士郎・関西電力初代社長」
「東京ガス・安西ファミリーの弁明」
「ホンダ三代『社長交代の流儀』」
「東急・五島家三代『世襲の帳尻』」
「日本航空・伊東淳二の469日」
「『昭和』 の偶像・中内功の行動原理」
「帝人・大屋普三、『永久政権』 の負の遺産」

 連載された当時は、大企業における経営者の世襲が話題を集めた時期であり、社会階層の固定化が重大な社会問題としてクローズアップされていた。本書で取り上げられている題材にも、世襲にまつわるものが多い。

 しかし、内橋氏の問題意識は、世襲だけにとどまっているわけではない。

 日本の企業においては、株式の持ち合いがあるためにトップの経営責任を追及する制度がなく、トップ個人の倫理観や哲学による以外は、経営者の「出処進退」を決することができなくなっている。

 「逆に言えば、権力者の人間性は『退き際』に凝集して表現される、ということもできる」と指摘する。

 本書を読むべき経営者は、日本には腐るほどいるはずだ。



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