1996.04.22

▽『経世会死闘の七〇日』――面白すぎる権力闘争のドラマ

大家清二『経世会死闘の七〇日』(講談社)



 住専問題の進展次第では、国会は解散・総選挙という事態に至っているかもしれない。この政局混迷の原因は、小沢一郎と橋本龍太郎のいわゆる「一龍戦争」があり、その底流には92年秋の経世会分裂があった。

 本書は、経世会分裂過程の七〇日間を、現役の政治部記者が、克明に綴ったものである。ペンネームを使っての執筆、情報ソースを明かさないでの描写といった様々な制約があるものの、本書に書かれている事のほとんどは事実である、とみていいだろう。「一龍の確執」部分も含め、最近のテレビ番組や週刊誌などが流用している箇所も数多くあり、現在の政治状況を理解するうえでは必読の書といえる。

 本書に綴られているのは、理念のかけらもない、純粋な権力闘争のドラマのみであり、本書を読んで「国民不在の政治」といった紋切型の批判を投げ掛けることもできるだろう。しかし、そうした安直な批判を受け付けないほどの面白さを本書は持っている。

 単なる、「サル山のボス争い」がなにゆえに、これほどまでに面白く感じるのか。それが、人間の持つ本性の一部に他ならないからだ。

 ただひとつ、我々が考えなければならないことは、政治の側が、こうした無意味な権力闘争に明け暮れていながらも、日本という国がとりあえずは大きな破綻をきたさずにいるのはなぜだろうか、ということだろう。


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