1996.04.22

▽『僕はこんな本を読んできた』



立花隆『ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論』(文春文庫)



 立花隆が過去に行った、講演録やインタビューや書評をまとめただけの、お手軽な作りの本。文芸春秋の作りにしては、ちょっと雑。

 立花隆氏の読書遍歴は、学生時代までは文学、文芸春秋退社後は哲学、ふたたびジャーナリズムの現場に戻ってからはノンフィクションや科学の専門書、というふうに分けられる。

 立花氏は、インタビューの中で、文学の与えた影響について興味深い発言をしている。「文学を読むことで得られる大事なことは、それによってつちかわれるイマジネーションですね。取材が駄目な人間というのは、結局イマジネーションがないからなんだね」。

 また、文芸春秋を退社したときの「退社の弁」も紹介されている。

 「ジャーナリズムの世界において僕が感じたのは、思惟とのフィードバックがない観察はなにものでもないだろうということだった。あまりにも多くのものを見すぎることは、もしそれが充分に考えることによって裏打ちされないならば、返って有害であるかもしれないのではないか……」

 本を読みたい、という理由で文芸春秋を退社した立花氏は、ふたたびジャーナリズムの現場に戻ってくる。その理由は、小説よりも面白いノンフィクションを数多く読んだから、という。しかし、このあたりの心情的な変節が今一つ、よく分からない。その意味でも、本書の出来はよくない、といえるだろう。



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