1996.05.22

▽『大合併 大逆転!』――第一銀行を軸とした合併をめぐる舞台裏

高杉良『大合併 大逆転!』(角川書店)



 新刊といっても、高杉良の作家生活二〇周年を記念して出版 された「高杉良経済小説全集」全一五巻のうちの第七巻。

 さて、東京三菱銀行の発足直前というタイミングを狙ったのか、第一回配本分は、第一銀行と日本勧業銀行の合併を取り上げた「大合併」と、第一銀行と三菱銀行の合併がご破算となった過程を描いた「大逆転!」の二つの小説を合本している。

 「大合併」のほうは前に掲載してあるが、むしろ「大逆転!」のほうから読んだほうが、流れが分かっていいかもしれない。

 「大逆転!」のほうは、三菱銀行との合併に反対した島村道康・元第一銀行常務を中心に描かれている。島村氏の日記なども引用されており、日本企業の中で一人トップに反旗を翻す信念の人といった風に描かれている。島村氏が極めてさわやかな人物として描かれており、その点、評価の分かれるところだ。

 この点を反省してか、一方の「大合併」は、どちらかと言えば客観的なスタンスをとるようにしている。ノンフィクションの作品として発表してもよいのに、と思われるほどよく取材がされている。

 さて、「大逆転!」を読んで思うのは、第一と三菱のご破算劇は常に第一の側から語られることが多かった。東京三菱の発足を前に、「三菱にとっての合併」についても語られる必要があるだろう。


|

書評1990s」カテゴリの記事