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2008年10月

2008.10.02

▽小泉純一郎が本当にぶっ壊したものとは?

野中尚人『自民党政治の終わり』(ちくま新書)


本書の主眼は自民党政治の構造を分析することであり、自民党を壊した小沢一郎と小泉純一郎について、それぞれ第一章と第二章で考察をしている。第三章以降は、自民党政治を江戸時代からの歴史的な視点と、国際的な比較を交えて学術的な分析を加えている。本書は、2008年9月の福田首相辞任以前に脱稿されたため、麻生政権の行方などについては触れられていないが、第二章の小泉純一郎の分析は興味深い。

「自民党をぶっ壊す」と発言して自民党総裁選を勝ち抜いた小泉だが、小泉の言う「自民党」は、実は経世会を指していたに過ぎなかった。また、必ずしも派閥政治を否定した訳ではなく、むしろ小泉自身の所属する清和会を大事にしており、不人気宰相だった森喜朗を敵に回すことは決してしなかったし、むしろ「加藤の乱」に見られたように二人三脚のようにタッグを組んで政局を勝ち抜いてきた。さらに、首相就任後の閣僚選びでは、従来の派閥均衡はとらず、清和会や自分の気に入った政治家、学者を重用してきた。

「自民党をぶっ壊す」というキャッチ・フレーズで有権者を欺き、自民党を延命させるのに成功したかのようにみえる小泉政権ではあった。しかし、実質的に、経世会を中心とした派閥政治システムをぶっ壊してしまったために、結果として、本当に自民党は壊れてしまったのである、と著者は分析している。

そして、第二章の最後では、次のように結論づけている。

《政治学の用語に、決定的選挙というものがある。単に一回の選挙での各政党の勝敗や離合集散・再編成ということにとどまらず、有権者レベルでの支持パターンに大きな変動があり、以降の政治勢力の配置に重大な変更が生じた場合を指す。実は自民党が壊滅的敗北を喫した〇七年参院選は、この決定的選挙だった可能性がある。そして、〇五年の郵政選挙は皮肉なことにその導火線だったのである》(p.108-109)

[目次]
第1章 自民党システムへの反逆者、小沢一郎―小沢一郎と自民党システム
    政治改革への執念と内部抗争
    小沢の成功と失敗
第2章 救世主にして破壊者、小泉純一郎―小泉純一郎と自民党システム
    反経世会の政治手法
    郵政民営化
    小泉は自民党を壊したか?
第3章 自民党システムとは何か?
    「自然な与党」であり得た理由
    人事のルールとそのシステム
    合意を重視する意思決定
第4章 歴史と比較から見た自民党システム
    江戸から見た戦後日本政治
    国際比較から見た自民党システムの成立
第5章 自民党システムの終焉
    自民党型「戦後合意」の崩壊
    「戦後」から「冷戦後」、そしてグローバル化へ
    新しい政治システムへの展望

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