2008.12.30

▽よくあるガラパゴス批判とは一線を画す

宮崎智彦『ガラパゴス化する日本の製造業』(東洋経済新報社)

日本の製造業は、国内市場重視・垂直統合型で、これを「ガラパゴス化」と呼ばれることがあります。このガラパゴス志向に対比される例としてあげられるのが、グローバル市場でシェアの高い韓国のサムスンです。しかし、著者は、グローバル志向のサムスンですら垂直統合型の古い産業構造であり、すでにピークは過ぎている。むしろ、これからはグローバル志向・水平分業の台湾型が主流になるだろうという主張をしています。この点で、日本=国内志向vs韓国=グローバル志向のよくあるガラパゴス批判とは一線を画しているといえます。

ただ、本書の刊行は2008年9月で、リーマン・ショック以降の急速な世界市場の収縮は織り込まれておらず、日本にしろ、韓国にしろ、台湾にしろ、外需頼みの国や地域は、今後数年は、にっちもさっちもいかなくなるだろうとは思います、その時、事業の再構築が容易なのは、やはり水平分業の台湾企業ということになるのでしょうか?

[目次]
第1章 ガラパゴス化する日本
     ――なぜ世界のスタンダードから取り残されたのか
1・1 エレクトロニクス業界で起こっている大きな変化
1・2 日本が特殊なハイエンド市場になる危機
1・3 BRICs市場の伸びで日本は世界の30分の1の市場へ
1・4 日本とは根本的に異なるビジネスモデルの出現
1・5 何かがおかしい――日本はガラパゴス諸島か?
1・6 現実を直視する時期が来た日本

第2章 日本に迫りくるアジア企業
     ――韓国・台湾・中国大陸企業とのマクロ比較
2・1 日本、韓国、台湾、中国のエレクトロニクス企業の特性比較
2・2 売上高、営業利益、営業利益率、時価総額の上位企業

第3章 台湾系企業によるコスト破壊
     ――世界を席捲する水平分業モデル
3・1 台湾系エレクトロニクス企業の特徴
3・2 台湾がハイテク関連でキャッチアップできた理由
3・3 二つの異なるタイプに分類できる台湾のエレクトロニクス企業
3・4 EMS・ODM企業の脅威とホンハイ(鴻海精密工業)
3・5 半導体ファウンドリ――TSMCの脅威
3・6 液晶パネル専業企業の2000年以降の飛躍的成長とAUO
3・7 繁栄を極める台湾の将来と中国大陸企業躍進のリスク

第4章 韓国サムスン電子は絶頂期を既に過ぎたのか
4・1 高収益を誇る半導体メモリ、液晶パネル、携帯電話
4・2 垂直統合で成功しているサムスン電子
4・3 サムスン電子に対抗する日本企業の構図
4・4 サムスン電子と日本企業との垂直統合モデルの相違点
4・5 サムスン電子の死角

第5章 製造業の世界的潮流
     ――標準化、デジタル化、グローバル化の影響
5・1 標準化をうまく利用した企業が優位に立つ
5・2 デジタル化で技術のコピーが容易に
5・3 経営のグローバル化の影響(能力主義と平等主義)

第6章 水平分業化と専業化の現実
     ――液晶テレビや太陽電池を取りまく環境
6・1 液晶テレビでみた場合の水平分業
6・2 ロジック半導体でみた場合の水平分業
6・3 靴屋が明日から太陽電池メーカーへ

第7章 世界で勝ち抜くためのビジネスモデル
     ――10年後の覇者の条件とは
7・1 世界で勝ち抜ける、競争が優位に展開できる条件
7・2 専業化の必要性と日本の優良電子部品企業の比較考察
7・3 解決しなければならない課題

第8章 日本製造業の雄・自動車産業の死角
     ――迫りくる低価格化・水平分業化の波
8・1 自動車向けに経営資源を集中しはじめた日本のエレクトロニクス業界
8・2 自動車でも低価格化、コモディティー化、標準化、水平分業化は進むのか?
8・3 エレクトロニクス産業と同様、二極化が進み、価格破壊が起こるシナリオ
8・4 自動車産業の水平分業化と電装化、電気自動車

エピローグ 敵を知り、現実を知ることが第一歩


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