2009.01.26

▽フランス人ジャーナリストが見た猪瀬直樹と小泉改革

ニルス・プラネル『僕が猪瀬事務所で見たニッポン大転換』(草思社、橘明美訳)


ヘルシンキ生まれのフランス人ジャーナリスト、ニルス・プラネル(Niels Planel)は、2007年3月に"Un autre Japan 2001-2005"という本をフランスで出版した。"Un autre Japan"とは、「もう一つの日本」という意味である。

同氏は、2001年に猪瀬直樹事務所の研修生となり、その後いったん帰国、2005年に再来日して、2007年にかけて猪瀬事務所でスタッフとして働いた。その時の体験を記録したもので、日本では2007年12月に『僕が猪瀬事務所で見たニッポン大転換』(草思社、橘明美訳)として出版された。

原著のタイトルに"2001-2005"とあるように、2001年から2005年の日本は、ちょうど小泉純一郎政権下で構造改革が進められていた時期であり、猪瀬直樹は小泉内閣の下で、道路公団民営化に携わっていた。

歴史的な転換点を迎えていた日本を、外国人として、あまり利害関係の無い立場から振り返ったのが本書といえる。もちろん猪瀬直樹の肩越しから小泉改 革を眺めている部分もあるが、同氏が自分なりの視点で日本の政治や社会を考察しているところも多いので、『僕が猪瀬事務所で見たニッポン大転換』というタ イトルは、やや内容を矮小化して伝えているようで残念である。

プラネル氏の個人的な体験も交えているが、紙幅の多くは、外国人から見た小泉時代の日本政治や日本社会を観察し、考察することに費やされている。

最近の政治状況と関連して、本書の記述で目を引くのが、小泉純一郎は、日本で初めて地方で暮らしたことがないまま、総理大臣になった人物という指 摘。確かに、小泉以前は、地方出身者が総理大臣を務めてきたし、小泉以降は、安倍、福田、麻生と、選挙地盤は地方のままだが、幼少期から東京で過ごしてい る政治家ばかりである。

また、道路公団民営化に比べると、郵政民営化は透明性に欠けているのではないかとも指摘されているが、最近のかんぽの宿をめぐる騒動をみると、なるほどと思わせる。本書は小泉時代は何だったのかを振り返る上で、読み応えのある記録となっている。

[目次]
第1章 ムッシュー・イノセ
第2章 カフェの日本人
第3章 変わらない日本
第4章 変わりゆく日本
第5章 まだ打つ手はあるはずだ


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