2009.01.06

▽天才棋士が見た何もないところ

大崎善生『聖の青春』(講談社)


難病と闘いながら、29年の短い生涯を生き抜いた天才棋士・村山聖の伝記。

《村山は旅立った。どこからどういうルートで向かったのか大阪から函館に着くまでに、6日間を費やしたという。そして、約束通りに、森の部屋に電話がかかってきた。
「森先生。いま北海道にいます」
「無事についたんか」
「はい」
「どうや、そっちは」
「北海道って、花ばかりが咲いていて、何もないところなんですね」
電話の向こうで村山は、とても晴れがましい声で言った。
 それでいいんやと、口には出さなかったが森は思った。それを知るために旅があるんだ。》 (pp.161-162)


|

書評2009年」カテゴリの記事