2009.01.20

▽タイのウルトラマンの憂鬱

安藤健二『封印作品の憂鬱』(洋泉社)


安藤健二の『封印作品』シリーズ第三弾『封印作品の憂鬱』では、半分近くの分量を1974年にタイで公開された『ハヌマーンと7人のウルトラマ ン』(邦題『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』)という映画に費やされている。ハヌマーンとは、タイにすむ猿の神様であり、この映画は、ウルトラ兄弟とともに ハヌマーンが怪獣軍団と戦うという異色作である。

もちろん本書の主題は、この映画がなぜ封印されるに至ったか、その背景を探ることにある。そして読者は、「悪いのはタイ人か? 日本人か?」という 二分法では割り切れない意外な結論へ導かれる。また、タイでは、どのようにウルトラマンが受容されているのか、タイにおいてハヌマーンとはどんな存在なの か、タイと日本における残酷描写の受け止められ方の違い、1970年代のタイの世相などについても、興味深く読むことが出来る。

[目次]
第1章 ポケットの中の悪夢―日本テレビ版『ドラえもん』
(石化した時間;富山事件;不可解な出生 ほか)
第2章 白猿の暗黒舞踏―『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』
(オート三輪と高層ビル;ウルトラリンチと呼ばれて;ベトナム戦争とサービス精神 ほか)
第3章 歯車と少女―みずのまこと版『涼宮ハルヒの憂鬱』
(涼宮家の一族;禁じられた妄想)


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