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2009年2月

2009.02.28

▽新自由主義国の中の社会主義

ロジャー・ローウェンスタイン『なぜGMは転落したのか―アメリカ年金制度の罠』(鬼澤忍訳、日本経済新聞出版社)


『なぜGMは転落したのか―アメリカ年金制度の罠』という邦題だが、実際のところGMと全米自動車労組(UAW)についての記述は第一部だけで、第二部は全米運輸労組(TWU)、第三部はサンディエゴ市と、それぞれの年金問題に費やされています。

原題に"While America Aged"とあるように、「アメリカが老いている間に」、特定の労働組合に所属している労働者だけは、とても手厚い年金や社会保障を得られるようになっており、なぜそうした特権が認められるようになったかの歴史が綴られています。淡々と事実を積み重ねていくジャーナリスティックなスタイルの上に、なじみの無い人名や組織名が続くため、あまり読みやすいとは言えませんが。

これまでアメリカは、新自由主義の国と見なされ批判されてきたかと思いますが、実際は、新自由主義の荒波の中に、ところどころに、きわめて強固で社会主義的な島が浮かんでいるような、そんな特殊な国だったということを改めて実感させられます。

[目次]
第1部 誰がGMを殺したか
 ビッグスリーとデトロイト協定
 妥協と無策の果てに
第2部 年金をめぐる戦い
 「公務員」という名の特権階級
 ストライキ!
第3部 自治体が破産するとき
 最高の都市、サンディエゴ
 年金をめぐる陰謀
 支払期日の到来
結び 打開策

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2009.02.26

▽不良債権処理にまつわるエトセトラ

高橋洋一x長谷川幸洋『百年に一度の危機から日本経済を救う会議』(PHP研究所)


高橋洋一と長谷川幸洋の対談本で、内容的には、それぞれの他の著書のほうが充実していると思う。ただ、大蔵相在職時代に不良債権処理に関するバイブルとも言われた『金融機関の債権償却』(金融財政事情研究会、1994年)を書いた高橋洋一の証言は衝撃的だ。

《当時の大蔵省銀行局の幹部のほとんどは不良債権の定義すらきちんと言えなかった。そもそも「償却」と「引当」の違いすらわかっていないし、会計処理についてまったく無知だった。不良債権について誰も知らないから、処方箋を出すこともできない。それが一九九五、六年のころでした。
 それであたふたしているうちに住専問題が明るみに出たけれど、もちろんその処理の方法も誰も知らない。住専問題については、まずもって損失額をきちんと確定する作業が必要だったのに、どう確定し処理すればいいのかわからぬまま、どんどん債務が大きくなってしまった。》(p.51)

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2009.02.13

▽人間味のあるスパイハンターの回顧録

泉修三『スパイと公安警察-ある公安警部の30年』(バジリコ)


本書の著者は、警視庁公安部などで、いわゆる″スパイハンター″として活躍した元警官で、その三十年にわたる経験を語ったもの。タイトルの『スパイ と公安警察』からは、厳しくかつシリアスな世界を想像するが、本書の語り口は実に人間味のあるもので、うまくいった話よりも、失敗をしたような部分の方が 楽しく読める。

もちろん、その語り口とは裏腹に、語られている事件の多くは、当事者にとっては重要な事件も多く、わかる人にはわかる″真相″も随所に盛り込まれているのだろうと、推測する。

[目次]
新米巡査
地獄の上野警察署
連続企業爆破事件
イリーガルスパイ
篭絡されたCIA女性職員
基地班の捜査線上に浮かんだサンキスト
北朝鮮工作員に協力する「土台人」
機動隊員に変装
内閣調査室国際部
ソ連スパイとの闘い
右翼対策・過激派対策の現場へ
国際テロ班
協力者工作
警部昇任と自律神経失調症
恋人
公安警部

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