2009.04.05

▽現代のクリエイターは過去のコンテンツと競争しなければならない

岡本一郎『グーグルに勝つ広告モデル』(光文社新書)


コンテンツや情報がデジタル化された時代に、マス・メディアや広告産業は、どのように対応しなければならないかについて述べている。この手の本にあ りがちな、断定調の未来予測はあまり無く、現在の状況から言えることが明示されている一方で、これから先どうなるかわからないことについては「わからな い」とはっきり言っている点は好感が持てる。

特に、最初の章に重要な分析が出ていたので簡単に紹介すると、

《テレビも含めたメディア/コンテンツ産業が、他の産業と大きく異なる点の一つとして、「過去のストックが競合になる」 という点が挙げられま す。……ストックは、時間の経過にともない、いずれ無限大まで増加します。一方、需要はその瞬間に存在する市場に限定されるため、受給のバランスは時間が たつにしたがって、ストックが無限に大きい方向に振れ続けていく、というのがコンテンツ産業の持っている宿命的な流れです。》(pp.16-17)

これまで、増大する過去のコンテンツ資産が、新しいコンテンツの競合としてそれほど恐ろしいものでは無かった理由として、著者は、過去のコンテンツ 資産の量が、あまりにも膨大であるために、探索コストが高く、競合として怖くなかったことをあげます。ところが、インターネットの普及によって、モノと情 報が分離して扱えるようになり、そのことによって膨大な量のラインナップを探索するコストが、「劇的に下がった」と著者は指摘します。

では、グーグルのような、何も新しいコンテンツを作っていない企業の時価総額が10兆円を超えている、という事実をどう考えるべきか? と問いかけます。

《端的にいえば、社会全体が、膨大になりすぎたコンテンツや情報を整理することに対して、高い付加価値を見出している、ということなのです。
 これをミクロ経済学的にいえば、一人ひとりの個人がこれまで情報の整理にかけていたコストを、グーグルが削減しているということになります。》(p.20)

そして、社会学者のリチャード・フロリダによる、クリエイティブ・クラスという知識労働階級にとって、もっとも貴重なものは時間となるだろう、という予言を引いて次のようにまとめています。

《この考え方になぞらえれば、グーグルはクリエイティブ・クラスの人々に「時間を売っている」ということになるのです。そして、その時間が貴重であればあるほど、集積としてグーグルの時価総額は高まるわけです。》(pp.20-21)

[目次]
マスメディアの本質は「注目=アテンション」の卸売業
アテンションのゼロサムゲームから脱却できるか?
マスメディアの競合としてのインターネットメディア分析
4マスメディアvs.インターネット
テレビvs.インターネット
オンデマンドポイントキャスト事業の提言
ターゲットメディアとしてのラジオの確立
情報のコモディティ商戦から新聞は抜け出せるか
ネットとの差別化に特化する雑誌
合従連衡によってプレイヤーの数を減らす
なぜ、それでもマスメディアは必要なのか
コンテンツ論
マーケッターに求められるパラダイムシフト


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