2009.04.19

▽羽生名人が語る「天才の頭脳」

『先を読む頭脳』(新潮社)

『先を読む頭脳』(新潮社)は2006年に出版された本で、羽生名人が自分の将棋に対する考えを語った章の間に、認知科学やコンピュータの専門家が解説した章が挿入されています。

以前、羽生名人の語りおろしと言われながらも、ゴーストライターが勝手に、いろいろと書き加えた本がありましたが、それよりは正確なものになっていると思います。羽生名人の言葉で、印象に残っている部分は以下の三点です。

《私は、パソコンの画面でマウスをクリックして動かすのと、実際の盤上で駒を動かすのとでは、蓄積される記憶の質が違うように感じています。その理 由は、一つにはパソコンの画面で動かすとどうしても早く手を進めていってしまうので、結果的に長く覚えていられないという点にあると思います。
 一方、盤に駒を並べて一手一手ゆっくりと動かしていくと、その過程を通して頭の中で手を整理しながら記憶していけるのです。》(pp.50-51)

《時間に関して言うと、私は終盤ギリギリの段階で「残り二分」になっていることがよくあります。「残り一分」 ではなく、二分にしておくのです。
 それは私なりの危機管理法で、相手に予想外の手を指されたときに、その一分があるかないかで全然違ってきます。》(p.93)

《一方で、最近は将棋から離れて、できるだけ将棋のことは考えない日も作るようにしています。四六時中将棋のことを考えてオンとオフの区別がなくなると、結果的にプラスに働かないことが経験上わかってきました。》(p.146)

また羽生名人が、さまざまな有名棋士の棋風について語っている部分があるのですが、すでに引退している吉田利勝八段という、あまり有名ではない棋士の名もあげている点は、ちょっと興味深いですね。

[目次]
1 「先を読む頭脳」を育む
2 効果のあがる勉強法
3 先を読むための思考法
4 勝利を導く発想
5 ゲームとしての将棋とコンピュータ


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