2009.04.28

▽梅田望夫が見た初代永世竜王決定戦

梅田望夫『シリコンバレーから将棋を観る』(中央公論社)

「指さない将棋ファン」を自認する著者が、2008年10月から開催された将棋の竜王戦を軸に、羽生善治やそのライバル達の証言などを著者なりの視点でまとめたもの。

私も「指さない将棋ファン」でして、この竜王戦は主にネット中継で観戦していました。この竜王戦は、単なるタイトル戦ではなく、渡辺明竜王、羽生善治挑戦者の勝った方が、初代永世竜王の資格を得るという、将棋界の歴史においても重要な棋戦でした。

そしてパリで行われた第一戦。渡辺竜王は得意の居飛車穴熊という堅い陣形を組み、余裕綽々で軽くジャブを放ったところ、羽生挑戦者からがつんがつんとアッパーカットを食らってあっという間に、負かされてしましました。陣形を組み合った時点では、素人目には、渡辺竜王の方が堅く見えたのですが、羽生挑戦者が、その堅陣を次々と引っぺがしていく様は圧巻というほかありませんでした。本書は、そのパリでの第一戦が中心となっています。

その後、羽生挑戦者が三連勝したものの、四戦目の終盤に、渡辺竜王が逆転し、結局、初代永世竜王の資格は、渡辺竜王のものとなります。いろいろな意味で、将棋界の歴史に残る対決だったといえます。

残念なことに本書には、七戦すべての棋譜が掲載されいませんので、竜王戦全体の様子がわからないので、『第21期 竜王決定七番勝負』(読売新聞社)を脇に置いて、読み進めた方がわかりやすいかもしれませんね。

梅田望夫『シリコンバレーから将棋を見る』(中央公論社)
[目次]
はじめに――「指さない将棋ファン」宣言
第一章 羽生善治と「変わりゆく現代将棋」
 変わりゆく現代将棋
 予定調和を廃す緊張感
 将棋の世界に革命を起こす
 盤上の自由
 イノベーションを封じる村社会的言説
 将棋の未来の創造
 オールラウンドプレイヤー思想
 知のオープン化と勝つことの両立
 高速道路とその先の大渋滞
 将棋界は社会現象を先取りした実験場
 ビジョナリー・羽生善治
 二〇〇八年、ベストを尽くす

第二章 佐藤康光の孤高の脳――棋聖戦観戦記

第三章 将棋を観る楽しみ
 ネットの優位を活かす人体実験
 修業ですから!
 「将棋を指す」と「将棋を観る」
 将棋を語る豊潤な言葉を
 一局の将棋のとてつもなく深い世界
 ネットと将棋普及の接点/出でよ! 平成の金子金五郎
 金子の啓蒙精神
 「現代将棋にも金子先生が必要です」

第四章 棋士の魅力――深浦康市の社会性
 「喧嘩したら勝つと思うよ」
 サンフランシスコの棋士たち
 深浦康市の郷里・佐世保への思い
 安易な結論付けを拒む「気」を発する対局者
 現代将棋を牽引する同志
 二つのテーブル
 人生の大きな大きな勝負

第五章 パリで生まれた芸術――竜王戦観戦記

第六章 機会の窓を活かした渡辺明
 終局後、パリのカフェで
 「立て直せる時間があるかもしれない」
 羽生王座への祝辞、十七年という長さ
 「勝負の鬼」が選んだ急戦矢倉
 若き竜王に大きく開いた「機会の窓」
 初代永世竜王への祝辞、将棋グローバル化元年
 少しでも進歩しようとすること

第七章 対談――羽生善治×梅田望夫
 リアルタイム観戦記と「観る楽しみ」のゆくえ
 揺れ動き続ける局面と、均衡の美
 羅針盤のきかない現代将棋の世界
 対局者同士が考えていること
 雲を掴むように、答えのない問題を考え続ける
 人は、人にこそ、魅せられる
 けものみちの時代、「野性」で価値を探していく
 「相手の悪手に嫌な顔をする」真意は?
 盤上で、すべてを共有できるという特性
 進化のプロセスを解析する研究者たち
 コンピュータとともに未来の将棋を考える
 指す者と、観る者の、これから

あとがき――「もっとすごいもの」を


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