2009.04.30

▽世襲問題を考えるための基本テキスト

神一行『閨閥 特権階級の盛衰の系譜[改訂新版]』(角川文庫)

本書は、政治家や企業経営者などエスタブリッシュメントの姻戚関係、つまり「閨閥」に焦点をあてたもので、このジャンルの入門書としては、よく出来ている。もともとは1989年に毎日新聞社から発行されたもので(1993年には講談社文庫より発行)、それを元に加筆・訂正し、改訂新版として2002年に角川文庫より発行されている。

この改訂新版で、内容的に追加されたのは、小泉純一郎の系譜、そして、天皇家に嫁いだ小和田家、川嶋家の系譜である。

2001年に内閣総理大臣となった小泉純一郎は、政治家としてみれば三代目の世襲政治家ではあるが、閨閥という観点からみれば、その家系において他の有力者との姻戚関係は、ほとんど無いといっていい。小泉以後に首相となった、安倍、福田、麻生の華々しい家系と比べると、その違いは際だっている。

また、たたき上げの政治家の代表格である田中角栄の家系図も本書には掲載されているが、思わず笑ってしまうほどに、有力家系との姻戚関係はみられない。これは、現在の民主党党首、小沢一郎も同様で、第9章に描かれているように自民党時代は、竹下登、金丸信の家族と姻戚関係があったが、自民党離脱後の小沢一郎には、こうした閨閥の影響力は、ほとんど失われてしまったことがわかる。

[目次]
プロローグ――日本は特権閨閥によって支配されている

第1部 政界編
第1章 吉田家―保守本流の始祖
第2章 鳩山家―四代にわたる政界の超エリート家系
第3章 岸・佐藤家―兄弟首相を生んだ長州人脈の最高峰
第4章 池田家―災いを福となし這い上がった苦労人
第5章 田中家―政界を震撼させる父娘の恩讐
第6章 福田家、三木家―学歴エリートと傍系派閥の栄光と悲哀
第7章 鈴木家、大平家―閏閥に連なり名門入りした庶民派
第8章 中曽根家―名血との結合で頂点を極めた寝業師
第9章 竹下・金丸家―政界を牛耳った固い血の結束
第10章 宮沢家―高級官僚・政治家を輩出する華麗なる一族
第11章 安倍家―良血を誇る政界のサラブレット
第12章 小泉家―三代目にして首相を輩出した政治家系

第2部 財界編
第1章 豊田家―〝世界のトヨタ″になるまでの愛憎のドラマ
第2章 松下家―〝経営の神様″が一族のために燃やした執念
第3章 上原家―庶民夫婦が築き上げた日本有数の大富豪一家
第4章 鹿島家―建設業界に君臨した名門閏閥の実力
第5章 弘世家―ニッセイ王国を育て上げた創設家
第6章 堤家―急成長を成し遂げた西武グループの総帥
第7章 安西家―皇室にまで繋がる日本最大の閏閥
第8章 三井家、岩崎家、住友家―旧財閥のその後
第9章 正田家―民間初の皇太子妃を生んだ「新華族」
第10章 小和田家、川嶋家―対照的な学者一家と官僚一家


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