2009.10.16

▽エコノミストは一貫性が大事

東谷暁『エコノミストを格付けする』(文春新書)


本書は、タイトルどおり、40人のエコノミストを格付けしたもの。著者は、経済ジャーナリストの東谷暁で、2003年の『エコノミストは信用できるか』(文春新書)の続編である。

話題になりやすいのは、終章のエコノミストの格付けの部分であるが、これは、各エコノミストの主張の学問的な当否よりも、主張の論理性や一貫性を見るための指標とした方が良さそうである。

格付け以外の部分で、私が、「やはり、そうだったか」と感じた点は、以下のような点である。

《労働生産性は、実質GDP(国内総生産)を国民の総労働時間で割った数値をもとに算出されるので、当面、手っ取り早く上昇させようと思えば、解雇とアウトソーシングを推進することで見かけ上は達成できる。……アメリカでは、ITバブルが崩壊して雇用が減少したので、かえって労働生産性は上昇したが、住宅バブルが始まって雇用が増えると、今度は労働生産性が下落していった》(p.80)

《グリーンスパンはデータよりも自分の勘を信じるあまり、労働生産性の算出法を変えてIT革命を演出した。つまり、データを自分の勘に合わせたのである。……発表されたアメリカの労働生産性上昇率のグラフは、九五年から上方に折れ曲がっていた。もちろん、九五年にIT革命が起こったからではない。グリーンスパンたちが、意図的に九五年をIT革命元年にしたからなのである。これはITバブルを抑止するどころか、IT時代の到来を印象づけて加速させてしまった》(pp.102-103)

《日本経済を不況から脱出させるには、インフレターゲット政策しかないと論じたのは、アメリカの人気経済学者ポール・クルーグマンだったことはすでに述べた。……では、今回の金融危機に陥って景気後退を経験しているアメリカは、インフレターゲット政策を採用したのだろうか。いまだにFRBも採用していない。これはFRB議長のベン・バーナンキが、インフレターゲット論の本家本元であることを考えると、実に奇妙なことといわねばならない。代わりにアメリカ政府が行なっているのは、日本のインフレターゲット論者たちが、ごく最近まで「効かない」と主張してきた財政政策なのだ。しかも、その旗を振っているのが、クルーグマンその人なのである。……そもそもクルーグマンという経済学者は、自らの言説に責任感の強いエコノミストというわけではけっしてない》(pp.128-129)

[目次]
エコノミストたちの「大恐慌」
金融崩壊を予測できた人、予測できなかった人
新自由主義の罪と罰
格差社会と「小さな政府」
なぜ日本が世界で一番落ち込んだのか
神様グリーンスパンの正体
インフレターゲット論の着地点
財政出動は時代遅れなのか
中国とインドが未来の支配者か
日本経済を復活させる鍵
エコノミストたちの採点評
エコノミスト格付け表(〇九年版)


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