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2009年11月

2009.11.21

▽インテル・インサイドとアップル・アウトサイド――技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか

妹尾堅一郎『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由』(ダイヤモンド社)


本書は、そのタイトル『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』通り、技術力のあるはずの日本が、どうしてビジネスの面で負けるのか、についての考察と、そこから得られる処方箋を提示したものである。

考察の中心にあるのは、第3章で紹介されているインテルとアップルのケース。著者は、この2社の戦略について、インテルは、その広告にあったように「インテル・インサイド」と、アップルについては、これをもじって「アップル・アウトサイド」と紹介している。

《インテルは、パソコンにとっても最も重要な中央演算装置(MPU)の中で、演算機能と外部機能とをつなぐPCIバスを徹底的に開発しました。そして、PCIバスの内部技術を完全なブラックボックスに閉じこめたのです》(pp.67-68)

その一方で、インテルは、外部との接続プロトコルはオープンにした。著者は、これを「内クローズ、外オープン」と呼んでいる。さらにインテルは、MPUを搭載するためのマザーボードを製造するノウハウを台湾メーカーに提供することで、これらの中間製品メーカーを味方につけ、完成品メーカーを間接的に支配することに成功する。

もう一つの「アップル・アウトサイド」とは、iPodにiTunesを組み合わせることで、音楽配信ビジネスの支配的なプラットフォームを構築することであり、また、iPhoneのソフト開発キットを安価で配布することで、サード・パーティーを味方につけてアプリケーションを充実させる、という戦略をさしている。

インターネットが普及した時に、「すべてをオープンにしろ」という主張があったものの、ビジネスで成功するには、クローズにする部分と、オープンにする部分を戦略的に組み合わせることが重要であることがわかる。また、日本の企業は、こうした戦略的なビジネス・モデルの構築が、あまり得意ではないようだ。

本書には、「インテル・インサイド」や「アップル・アウトサイド」のほかにも、参考になる事例が紹介されている。

[目次]
序 技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか
 日本の自動車産業、最大の危機
 なぜインテルだけが勝ち残るのか?
 武将(技術)の強さか、軍師(戦略)の知恵か
 負ける日本の、二つの問題意識
 「三位一体」型戦略の本質
 知財マネジメントをどうやっていくのか?

第1章 成長か? 発展か? ──モデル錬磨とモデル創新
 「成長」と「発展」の違いを理解する
 モデルを変えられて負け続ける日本
 妹尾のイノベーション七原則
 生産性向上だけで “競争力”を語ってよいのか?
 コラム▼スポーツと日本人の創造性
 コラム▼新規事業が生まれない産業生態系の枯渇

第2章 イノベーションモデルの基本型 ──二つのサイクルモデルと一つの促進モデル
 イノベーションモデル(1)
 技術起点型知的創造サイクル(テクノロジープロジェクションモデル)
 コラム▼知的創造サイクルにおける知財関係者の寄与
 イノベーションモデル(2)
 ビジネスリフレクションモデル(事業構想・イノベーションシナリオ起点型事業創造サイクル)
 イノベーション促進モデル
 ソシアルイシューマネジメント型(社会問題起点型)

第3章 インテル・インサイド、アップル・アウトサイド ──計算ずくで創られるイノベーション
 インテル・インサイド:基幹部品主導で完成品を従属させる
 日本の部材産業は本当に強いのか?
 アップル・アウトサイド:完成品イメージ主導で部品を従属させる
 大企業も中小企業も学ぶべきこと
 コラム▼スマイルカーブと付加価値
 次は自動車産業が崩される?
 電気自動車普及の衝撃を甘く見るな
 新ロボット産業も崩される?

第4章 イノベーションモデルのイノベーション ──新しい十分条件の登場
 プロパテントからプロイノベーションへ
 米国の競争力政策の歴史を俯瞰すると……
 イノベーションモデルはこう変わってきた

第5章 技術のオープン化が市場を拡大する ──「内クローズ、外オープン」の衝撃
 製品特性とビジネスモデル
 コラム▼標準化の基礎知識
 コラム▼中国が仕掛ける「国際標準化モデル」の革命?
 技術のオープン化が新規モデルを普及させる

第6章 イノベーションイニシアチブと「三位一体」経営 ──「発明」と「普及」を組み合わせる戦略的シナリオ
 新しいイノベーションモデル:研究開発段階の協業
 コラム▼分業と協業
 コラム▼「オープン」と「コラボレーション」の誤解
 新しいイノベーションモデル:製品開発と普及における分業
 コラム▼ディフュージョンの意味
 三つの「オープン戦略」
 イノベーションイニシアチブ
 「三位一体」経営へ──ビジネスモデルのせめぎ合い
 コラム▼「日本チーム、猛攻一七安打、二〇残塁で零封される」~技術の残塁の山をつくるな~
 コラム▼日本企業の自縛、自爆(門前和縛り、役満縛り、役決め縛り)

第7章 ビジネスモデルと知財マネジメント ──事業競争力の保持・強化に向けて
 知財マネジメントの基本的前提
 コラム▼特許の量と質から特許の使い方の質へ
 「事業戦略」における知財マネジメント
 事業競争力強化の知財マネジメント(1)
 事業リスクの最小化(リスクミニマム)
 事業競争力強化の知財マネジメント(2)
 事業機会の最大化(チャンスマキシマム)
 プロイノベーションで変わる、知財マネジメントの意味
 コラム▼事業における知財マネジメントの位置づけの変化
 ビジネスモデルと知財マネジメントを対応させる

第8章 可変的/発展的イノベーションモデルへ ──科学技術立国・日本に至る道 診断書──なぜ、技術で勝って、事業で負けるのか?
 コラム▼モデルの変容と多様化に対応する
 役員・幹部が率先してモデルを再点検する
 コラム▼「真珠湾・マレー沖海戦思考」
 コラム▼水に流す前に、真摯に振り返る
 結び:科学技術「大国」から「立国」へ

補章 思考イノベーションのヒント

妹尾流・創発・思考
 コラム▼日本のノーベル賞受賞者を知っていますか?

あとがき

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2009.11.20

▽リクルート報道の再検証

田原総一朗『正義の罠 リクルート事件と自民党 二十年目の真実』(小学館)


『リクルート事件・江副浩正の真実』(中央公論新社)の中で触れられていた本を、いくつか読んでみました。

まず、田原総一郎の『正義の罠 リクルート事件と自民党 二十年目の真実』。本書において、著者は、「リクルート事件は、検察が作った冤罪である」という主張をしています。
ところで、リクルート・コスモスという不動産会社の未公開株を譲渡したことの是非はさておき、側近の証言として紹介されている次の二点が、リクルート事件の背景にあったことがわかります。

《江副が側近に「広告情報誌事業では、どんなに飛ばしても年間に一〇〇〇億円の利益をあげるのに二〇年かかる。それが不動産だと、五〇〇億円で買った土地を、うまくすると明日にでも六〇〇億円で売れる」ともらしたのはホンネのホンネで、メーカーになりたいという悲願と合致したのだろう》(p.98)

《リクルート元部長も、「江副さんは、経済同友会や経団連に顔を出すようになっても、『どこの馬の骨かわからない男』だし仲間外れにされ、メジャーでないというコンプレックスを強く感じていた。特に第二電電入りを拒否されたことは痛手だった。だから、何とかして、一人前として仲間に入れてほしい。仲間にしてほしい。そんな願いがあって、未公開株を政財界の要人たちに譲渡した」のだと強調した。》(p.108)

ただ、事件当時の感覚では、未公開株の譲渡自体は違法ではない、という感覚が政財界の中にあったのは事実のようです。

リクルート疑惑の報道の端緒を開いた朝日新聞横浜支局、そして朝日新聞社会部の側の様子は、次の二冊を読むとわかります。

『追跡 リクルート疑惑―スクープ取材に燃えた121日』(朝日新聞横浜支局)

『ドキュメント リクルート報道』(朝日新聞社会部)

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2009.11.15

▽リクルート事件――いまなお残る疑問

江副浩正『リクルート事件・江副浩正の真実』(中央公論新社)


リクルート事件といえば、1980年代のバブルや昭和末期の政財界を象徴するような事件ではあったものの、中心人物である江副浩正リクルート元社長が執行猶予付きの有罪判決を受けて結審する2003年には、すっかり風化してしまった感がある。

さらに江副の執行猶予が解けたのが2008年で、事件発覚から実に20年もたった後に、江副が自らの視点でリクルート事件に関する報道、検事による取り調べ、裁判を振り返ったのが本書である。叙述に当たっては、拘置所で綴った日記がもとになっているという。

事件当時から、未公開株譲渡の違法性や贈賄が立証できるのか、という疑問が指摘されていたが、本書を読んでも、その疑問は解けないまま残る。さらに、江副を取り調べた宗像紀夫検事が、裁判が終了してから、コンサート会場で偶然出会った江副に問われて次のように語っている。

《公判で証取法にまつわる株譲渡の経緯の詳細、臨教審問題など訴因に関係のない審理が続いたことについて尋ねたところ、「いやあ、公判が始まっても、どうやって贈賄罪を立証するかを検討していて時間が足りなかった。二年以上それに費やしたかな」との話だった》(pp.378-379)

検事による取り調べも、怒鳴りつけたり、立たせたりと、いろいろと問題があったようで、そもそもリクルート事件とはいったい何だったのか? という疑問は、本書で解けるどころか、深まるばかりである。

[目次]
リクルート事件Ⅰ――発端
 会長退任
 国会証人喚問
 政治家との交わり

リクルート事件Ⅱ――特捜の取調べ
 特捜部とメディアの“共演”
 拘置所での取調べ
 現代の拷問
 政治家ルート

リクルート事件Ⅲ――保釈後から裁判開始まで
 保釈後のこと

リクルート事件Ⅳ――裁判
 裁判開始
 政界ルート
 労働省ルート
 NTTルート
 文部省ルート
 調書の信用性
 論告求刑・最終弁論・判決

リクルート事件Ⅴ――リクルート事件に関連して
 長いあとがき

あとがきのあとがき

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2009.11.05

▽「週末起業」への心構えの書

藤井孝一『週末起業サバイバル』(ちくま新書)


著者は、「週末起業」という言葉の生みの親という。この『週末起業サバイバル』は、『週末起業』(ちくま新書)、『週末起業チュートリアル』(ちくま新書)に続くもの。内容は、下記の目次を見ればわかるように、週末起業の具体的なアイデアよりも、週末起業をする際の心構えに重点を置いて書かれている。

興味深かったのは下記のくだり。
《最初の本『「週末起業」これで私もお金持ちかも』(中経出版)を2001年に出版したが売れませんでした。その後、2003年に同名のタイトルで出版したら、ベストセラーになりました。……その後、2005年からは景気がもち直し、すっかり忘れられました。そして、2007年、サブプライム問題の影響で景気が悪化すると、再び脚光を浴びるようになりました》(pp.107-108)

[目次]
はじめに
第1章 雇われる生き方がリスクになった
 現実になった厳しい予測 / クビを切られるのは誰か? / 正社員も安泰ではない / 国への負担も増えるばかり / 企業・国には期待すべきでない / フリーエージェントという働き方 / 自信をもて / 今の仕事にやりがいはありますか? / やりがいだけでは食べていけない /自力で稼ぐには? / まずは会社にいながらやってみろ / 転ばぬ先のリスクヘッジ

第2章 週末起業のまばゆい魅力
 副業とは何だろうか / 最近の週末起業のトレンド / 週末起業の魅力とは / 収入はあるほうがよい / デメリットもある / 週末起業を始める上で注意するべき点

第3章 安く、早く、確実に稼ぐ
  成功する週末起業とは? / 自分のアイデアをビジネスにしたJさん(50代・男性) / やりたいことで食べていくことに成功したKさん(30代・女性) / 趣味をお金に換えたSさん(40代・男性) / 資格を活かして年商1300万円(40代・男性) / 飲食店の経営者になったOさん(40代・男性) / ネットオークションをオンラインショップに発展させる(40代・男性) /

第4章 ネットをうまく利用しよう
 週末起業にまつわる疑問1 週末起業は週末だけでいいのか? / 週末起業にまつわる疑問2 本当にお金をかけないのか? / 週末起業にまつわる疑問3 やっぱり会社は辞めないのか? / 週末起業にまつわる疑問4 「好きなこと」がおすすめか? / 週末起業にまつわる疑問5 「できること」でやるべきか? / 週末起業にまつわる疑問6 時流に乗ることは必要か? / 週末起業にまつわる疑問7 アルバイトじゃダメなのか? / ツールの充実でハードルが下がった / まずは情報発信せよ / インターネットを味方につけよう

第5章 めざせ月商50万円!
 4割が悩む「ネタがない!」の事情 / 分野を絞る / 起業ネタを見つける / 最悪なのは「エア起業」 / 3万円の壁 / その楽しさがアダになる / サービスの利用者に甘んじていないか / サービスの提供者になるには? / セミナーや勉強会を開催する / オフ会を開く / 自分の空きスペースを商品化する / 仕入れに挑戦する / いちばん手強い「1円の壁」 / 月に100時間をあてられるか / かわいいお金に旅をさせろ /  広告宣伝でビジネスを育てる / 人脈に対する投資 / 「月商50万円の壁」突破法 / 虎の子を人に払えるか? / 場所に対する投資が時間効率を高める! / 「月商50万円」が限界か? / 「月商50万円」を超えて、なお伸ばすには / 独立の壁、そして独立してからの壁 / 先輩に訊く / 独立成功のポイント / どうしてもネタがないなら

第6章 トラブル回避のための法律講座
 税金リテラシーを高めよ / 開業届を出す必要はあるか? / さもしい? 無税の人 / サラリーマン法人のすすめ / 独立する人が「ダメもと」でやる作戦 / 時代おくれの「法人4兄弟」 / 気になる本業との関係 / 就業規則の法的妥当性 / 非正社員は、副業しやすい / 許可を得て回避する / 会社に黙ってやる / ばれてしまった時の対処 / 同僚への後ろめたさ / 良い面、悪い面がある

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2009.11.02

▽小沢一郎・野中広務・菅直人・森喜郎の証言録

『90年代の証言 小沢一郎 政権奪取論』(朝日新聞社)


以前、ひょんなことから休刊した『論座』(朝日新聞社)のバックナンバーを読んでいたら、たまたま「90年代の証言」というシリーズの菅直人の回が載っていて、とても興味深く読みました。そして、このインタビューを受けた何人かについては、本にまとめられていることを知り、菅直人に続いて、小沢一郎、野中広務、森喜郎と続けて読んでみました。

細川首班による非自民連立政権の成立と崩壊、自社さ連立、新進党や民主党の結成、自自公連立、小渕首相の急逝から森政権の成立、加藤の乱、そして小泉政権の誕生といった日本政治の節目節目を、それぞれの視点から語っていきます。同じ出来事であっても、立場によって微妙に見方が異なるのが面白いですね。

いまNHKでやってる『証言ドキュメント 永田町・権力の興亡』の元ネタといえるかもしれません。

『菅直人 市民運動から政治闘争へ 90年代の証言』(朝日新聞社)


『野中広務 権力の興亡 90年代の証言』(朝日新聞社)


『90年代の証言 森喜朗 自民党と政権交代』(朝日新聞社)

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