2009.11.15

▽リクルート事件――いまなお残る疑問

江副浩正『リクルート事件・江副浩正の真実』(中央公論新社)


リクルート事件といえば、1980年代のバブルや昭和末期の政財界を象徴するような事件ではあったものの、中心人物である江副浩正リクルート元社長が執行猶予付きの有罪判決を受けて結審する2003年には、すっかり風化してしまった感がある。

さらに江副の執行猶予が解けたのが2008年で、事件発覚から実に20年もたった後に、江副が自らの視点でリクルート事件に関する報道、検事による取り調べ、裁判を振り返ったのが本書である。叙述に当たっては、拘置所で綴った日記がもとになっているという。

事件当時から、未公開株譲渡の違法性や贈賄が立証できるのか、という疑問が指摘されていたが、本書を読んでも、その疑問は解けないまま残る。さらに、江副を取り調べた宗像紀夫検事が、裁判が終了してから、コンサート会場で偶然出会った江副に問われて次のように語っている。

《公判で証取法にまつわる株譲渡の経緯の詳細、臨教審問題など訴因に関係のない審理が続いたことについて尋ねたところ、「いやあ、公判が始まっても、どうやって贈賄罪を立証するかを検討していて時間が足りなかった。二年以上それに費やしたかな」との話だった》(pp.378-379)

検事による取り調べも、怒鳴りつけたり、立たせたりと、いろいろと問題があったようで、そもそもリクルート事件とはいったい何だったのか? という疑問は、本書で解けるどころか、深まるばかりである。

[目次]
リクルート事件Ⅰ――発端
 会長退任
 国会証人喚問
 政治家との交わり

リクルート事件Ⅱ――特捜の取調べ
 特捜部とメディアの“共演”
 拘置所での取調べ
 現代の拷問
 政治家ルート

リクルート事件Ⅲ――保釈後から裁判開始まで
 保釈後のこと

リクルート事件Ⅳ――裁判
 裁判開始
 政界ルート
 労働省ルート
 NTTルート
 文部省ルート
 調書の信用性
 論告求刑・最終弁論・判決

リクルート事件Ⅴ――リクルート事件に関連して
 長いあとがき

あとがきのあとがき


|

書評2009年」カテゴリの記事