2009.12.01

▽なぜ負けたのか?――『日本「半導体」敗戦』

湯之上隆『日本「半導体」敗戦』(光文社)

本書の著者は、半導体技術者として、日立に十六年半勤務し、2002年のITバブル崩壊時に退職勧奨に応じるかたちで、研究者へと転身した。本書に書かれている著者の経歴については、ニュース・サイトJBpressのコラムでも読むことができる。

日本「半導体」の凋落とともに歩んだ技術者人生
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2229?page=5

この図の通り、著者は、日本のDRAMのシェアが世界トップの時に、技術者人生が始まり、その後、韓国に抜かれ、台湾に追いつかれそうになったところで終わりを告げる。この日本凋落の原因を、「日本の半導体産業には、過剰技術で過剰品質の製品を作ってしまう病気があるからだ」と指摘する。

そもそも、日本がDRAMで世界シェア・トップにたった時期というのは、メイン・フレームが主流で、そこで使用されるDRAMも、25年保証という高品質が要求された。この成功体験が「過剰技術、過剰品質」の病気をもたらした。

1990年代半ばになって、パソコンが普及し始めると、DRAMに求められるのは、せいぜい3年程度の品質保証であり、これに見合った低価格のDRAMを韓国メーカーが供給し始めるようになると、日本の半導体メーカーの凋落が始まる。また、日本の技術者は、技術の高度化には関心が高いが、製造コストを下げる技術への関心は薄いという。

64ページの注記には次のようにある。
《「インテルは原価から逆算して利益が出るように工程フローを開発している」という話を、自動車産業を研究している経営学者に話したところ、「そんなの当たり前じゃないか」と一蹴されてしまった》

そして著者は、こうした敗戦の原因は、経営戦略にもある、とも指摘する。1999年に日立とNECの合弁で設立されたDRAMメーカー、エルピーダは、設立当初の混乱を2002年に社長に就任した坂本幸雄の手腕で収束させるが、2008年のリーマン・ショックの影響で、2009年には、公的資金による支援を受けることになる。

こうした日本の半導体産業の凋落を、自身の体験、エルピーダ社員などへの聞き取り調査、国際比較などの豊富な事例によって、説得力のある説明をしている。

[目次]

はじめに

第1章 過剰技術、過剰品質
(1) 日本半導体業界の定説
(2) 半導体生産に関する技術には3階層ある
(3) 現在の日本の技術力は?
(4) 日本は過剰技術で過剰品質の製品を作っている

第2章 イノベーションのジレンマ
(1) 日本がDRAMで世界一になった理由
(2) 韓国のキャッチアップ
(3) 韓国に負けた日本半導体メーカーの言い訳
(4) イノベーションのジレンマとは?
(5) 日本半導体産業のジレンマ

第3章 海外高収益メーカーとの違い
(1) 利益率が低い日本半導体メーカー
(2) インテルと日本メーカーとの違い
(3) 韓国サムスン電子の組織
(4) 世界を牽引する台湾のファンドリーTSMC

第4章 自ら陥った4つのジレンマ
(1) コンソーシアムのジレンマ
(2) 合弁会社のジレンマ
(3) 日本の組織のジレンマ
(4) 日本メーカーの特許のジレンマ

第5章 装置メーカーとの共退化現象
(1) 共進化現象
(2) 露光装置
(3) 絶縁膜ドライエッチング装置

第6章 ネジクギになった半導体
(1) 世界一周してみました
(2) BRICsリポート
(3) 半導体の微細化はどこまで続くのか?
(4) 半導体の微細化が止まった世界とは?
(5) IT革命とはなにか?
(6) 半導体産業の未来

おわりに


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