書評2009年

2009.12.31

▽当ブログで売れた本――2009年

当ブログで、2009年に売れた本十傑を紹介します。

まあ、ランキングをつけるほどは売れていないので、あくまでも十傑ということで・・・・・・。

『ほぼ日刊イトイ新聞の本』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/10/post-6685.html
『やりがいある仕事を市場原理のなかで実現する!』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/post-84fe.html
『600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/05/post-65fd.html
『フリーペーパーの衝撃』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/04/post-3385.html
『ガラパゴス化する日本の製造業』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2008/12/post-581c.html
『シビックプライド―都市のコミュニケーションをデザインする』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/post-d65f.html
『ヒット企業のデザイン戦略 イノベーションを生み続ける組織』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/post-b603.html
『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/11/post-feeb.html
『日本「半導体」敗戦』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/post-b1e8.html
『「うそつき病」がはびこるアメリカ』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/01/post-d711.html

当ブログで取り上げる本のコンセプトは、基本的には「クロス・カルチュラルなノンフィクション」です。もちろん例外もありますが、ノンフィクションで異文化がクロスするような内容のもの、あるいは、時代の転換点を分析するようなもの、が中心です。

献本もお待ちしていますので(笑)、ここをご覧になられている出版社の方がいらっしゃったら、右カラム上の「メール送信」のところをクリックしてご連絡いただければ幸いです。

では、これからもいっそうの内容充実をめざして精進しますので、今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

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2009.12.22

▽ヒット企業のデザインとイノベーションの戦略を紹介する

『ヒット企業のデザイン戦略 イノベーションを生み続ける組織』(英治出版)


本書のタイトルにある「デザイン」とは、日本語のデザインが意味する「製品の形状」よりも、もっと幅広い意味を持っている。

本書では、「ビジネス・モデルをいかに設計するか」という視点から、概念的なものだけでなく、iPodのヒットやハリーポッター現象など、豊富な事例を数多く紹介しており、読みやすい。

[目次]

プロローグ イノベーションは誰が起こす?

1 新時代のイノベーター
 フォード――スタイリッシュ・カーへの転換
 ワールプール――白物家電からの脱却
 ニューバランス――顧客中心のデザイン
 イノベーターになるには?

2 残された唯一の道
 イノベーションは発明を超える
 フォードのモデルチェンジが意味するもの
 ベンチャー企業のイノベーション
 コモディティからの脱却
 有機的成長をめざす
 アジア企業の台頭
 イノベーションの波に乗る

3 イノベーションをデザインする
 アディダス・ワンの挑戦
 全てはインサイトから始まる
 曖昧さを受け入れる
 本能に従え
 イノベーションの基本プロセス
 基本ルール――イノベーターの思考回路

4 トレンドをデザインする
 キャズムを越える
 SET要因でトレンドを読む
 トレンドの波には逆らえない
 ヒントは日常のなかにある
 ミラチュア誕生

5 ファンタジーをデザインする
 ハリーポッター現象が示すもの
 経験経済からファンタジー経済へ
 形状にメッセージをこめる
 日用品にもファンタジー
 ファンタジー志向が企業を変える

6 ステークホルダーをデザインする
 ルブリゾール――技術志向から顧客志向へ
 パワーズ・オブ・テン分析
 パワーズ・オブ・テンを活用する
 リアルな人物像を描き出す

7 B2B製品をデザインする
 最後のフロンティア
 B2Bのファンタジー
 レッドゾーン・ロボティクス――倒産からの再生
 三つの戦略
 製品にブランドメッセージをこめる
 産業の未来を創る

8 意思決定をデザインする
 複雑で膨大な意思決定をコントロールする
 トレードオフへの対処
 バタフライ効果
 カオスを歓迎せよ
 成功を導く意思決定

9 商品機会をデザインする
 ニューバランスのブランド・エクイティ
 産学連携によるイノベーション
 CASE STUDY――肥満者市場を開拓する

10 知財戦略をデザインする
 P&G――知財戦略で優位に立つ
 ノウハウを守れ
 知的財産権――特許
 知的財産権――意匠特許
 知的財産権――著作権と商標
 知的財産権――トレード・ドレス
 知的財産権――トレード・シークレット
 知的財産権――特許の仮出願
 商品システムの特許
 製造と提供の特許
 アイデンティティを保護する

11 チームをデザインする
 なぜ失敗するのか?
 IDEO――エンジニアリングとデザインの融合
 社外コンサルタントを活用する
 リサーチからインサイトを得る
 ソフトとハードのバランスをとる
 多様性を活かす

エピローグ イノベーション・パワー
 個人のパワー
 企業を方向転換させるパワー
 市場を拡大させるパワー
 地域環境を再生させるパワー
 グローバルに展開するパワー
 アートと科学のルネサンスチーム

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▽シビックプライド――ヨーロッパにおけるケーススタディ

読売広告社都市生活研究局『シビックプライド―都市のコミュニケーションをデザインする』(宣伝会議)


本書によると、「シビックプライド」(Civic Pride)とは、「市民が都市に対してもつ誇りや愛着のこと」(p.164)という。このシビックフライドは、近年の日本でも、注目を集めているもので、その理由として、地方都市で顕著になりつつある人口減少と、地方分権による都市間競争の二つがある。

つまり、地方都市それぞれが努力して、より魅力のあるものへと変貌していかないと、市民をつなぎ止められないことを意味している。本書は、そのシビックプライドのケーススタディとして、ヨーロッパの8つの都市と、2つの取り組みを紹介している。

[目次]
はじめに

■第1章 10のケーススタディ
アムステルダム:“市民こそ都市である”というメッセージ
バルセロナ:都市の未来を共有するクリエイティブなキャンペーン
ハンブルク:まちがつくられるライブ感
ニューキャッスル/ゲイツヘッド:建築とアートのデリバリー
マンチェスター:シビックプライドの基点「URBIS」ほか
ボルドー:まちの求心力としての公共空間
ブリストル:トータルな都市デザインでまちが語り始める
ブラッドフォード:都市は変われると信じる気持ちを育てる
オープンハウス:都市のリテラシーがまちへの愛着を裏付ける
英国建築都市環境委員会(CAVE):都市空間と人々の生活をつなぐ公的機関の可能性

■第2章 5つの論考
Urban Governance:シビックプライドとは何か
Design:デリバリーのためのデザイン
Landscape:パブリックライフがつくる風景
Communication:変わるコミュニケーション
Activity:シビックプライドを創る
Column:シビックプライド・プレリサーチ

■第3章 シビックプライドの育て方 (シビックプライド・マネジメントサイクル)
Planning PRIDE(誇りの種を発見する)
Designing DELIVERY(誇りの種を植える)
Checking CHANGE(誇りの芽を育て世話をする)

おわりに

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2009.12.17

▽やりがいある仕事を市場原理のなかで実現する! には?

渡邉正裕『やりがいある仕事を市場原理のなかで実現する! 』(光文社)


最近ちょっと話題になっているようなので読んでみました。

著者は、有料課金モデルのニュース・サイトMyNewsJapanを設立し、経営を軌道に乗せた渡邉正裕。日本経済新聞の記者、IBMのコンサルタントを経て、いろいろと検討を重ねた後に、MyNewsJapanを起ち上げました。

MyNewsJapanを読者のニーズに合わせたジャーナリズムとして成立させるために、二つの戦略をとります。まず、広告主への配慮をしたくないということから、広告に依存しない課金モデルを採用しました。また、一つのコンテンツを、ウェブ、雑誌、書籍と何度も「使い回し」することでコストを回収する。

では、どんなコンテンツを提供するのか? おそらく、この点での選択が、その後の成功の基礎を作ったのではないかと思います。著者は、リクルートの発想を思い起こします。つまり、お稽古ごと、就職・転職、結婚、住宅購入、車購入など……
《これらの情報は、人生の方向性にかかわる決定的に重要な情報だから必ず市場がある、というのがリクルートの発想で、それはきわめて妥当な考えだと思われた。我々の強みを活かして、人生の節目を扱えそうなものといえば――「就職・転職」しかなかった》(p.148)

こうして「就職・転職」をテーマとした連載「ココで働け! 企業ミシュラン」をキラー・コンテンツとして、ウェブと書籍への同時展開へと進んでいきます。MyNewsJapanの立ち上げから軌道に乗せるまでを、論理的にグイグイと説明していくので、読んでいて痛快な気分なってきますね。

[目次]1 なぜ今、「ビジネスモデル構築力」が必要なのか
2 やりがいある仕事でサラリーマン以上に稼ぐポイント
3 新聞記者時代に身についたこと
4 コンサルタントとして身についたこと
5 本格的なビジネスモデル構築
6 新事業スタート後の試行錯誤
7 実際の経営データ推移

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2009.12.12

▽「地球の歩き方」の歩き方

山口さやか、山口誠『「地球の歩き方」の歩き方』(新潮社)


「地球の歩き方」と言えば、誰しも一度は旅行の時にお世話になったことがあると思う。その「地球の歩き方」の創刊30年を記念して、上梓されたのが本書らしい。

もともと「地球の歩き方」は、旅行会社の販促用パンフレットとして制作されたものが市販され、じょじょにカバーする国や地域が増えていき、バックパッカーのバイブルへと成長していった。

初期の頃は、実際に、個人旅行をした学生などに原稿執筆を任せていた。面白かったのは、ライターの一人の次のような述懐。

《僕らは書いても無報酬に近かったのです。原稿料はもらっていしまた。でも、もらうとすぐに「その原稿料で、また旅行へ行っておいで」と送り出されました。旅をして、書いて、原稿料をもらったら、またそれを次の旅行につぎ込む、というサイクルを……作られてしまった。僕らの手元にはお金が残りませんでしたが、それでも好きなことをやってるからいいだろう、と思ってました》(p.141)

いまで言うCGM(Consumer Generated Media)の走りだったのだろうが、その後のマスコミによる「地球の歩き方」バッシングを経て、じょじょに、掲載される記事も信頼性を重視するように変わっていった。

本書は、「地球の歩き方」制作サイドの苦労話を軸に、1980年代の個人旅行ブームの勃興から最近までの、個人旅行や旅行業界、そしてガイドブック業界の移り変わりを振り返ることができる。

ちょっと残念なのは、インターネット時代を迎えて、旅行ガイドブックが、これからどうなっていくのかについての展望が欠けている点だろうか。

[目次]
序章 ボクらの旅を、みんなへ

第一章 「自由旅行」の原石
一 「就職ガイド」の会社――「地球の歩き方」前史の前史
二 「自由旅行」の原風景
三 ロンドンの夜
四 「自由旅行」のゆりかご――旅行説明会とマニュアルの誕生

第二章 「自由」を仕掛ける
一 強敵の出現――リクルート・ヤングツアーの参入
二 競争と差別化――眠れない夜が続く日々
三 説明会とマニュアルの到達点――非売品「地球の歩き方」の制作

第三章 「地球の歩き方」の創刊
一 「地球の歩き方」の市販化――旅行情報を開放したい
二 見たことを見たとおりに書く――初期の編集方針
三 失敗と成功――「地球の歩き方」が初めて書店に並んだ日

第四章 みんなで作るガイドブック
一 出版業と旅行業――それぞれの宝探しに奔走した四人組
二 運命のインド編――「地球の歩き方」の道を決めた第三弾
三 手探りと手作り――若き書き手たちの「歩き方」

第五章 シリーズ化への道
一 道なき道を歩く――中国の「自由旅行」とユーレイルパス
二 歩こう! ハワイ――リゾートでも、歩くガイドブック
三 投稿が開いた東南アジアへの道――新しい世代とアジアの旅

第六章 プラザ合意の波に乗って
一 「友の会」から「編集室」へ――プラザ合意前夜の体制変更
二 拡大と拡散――だんだん読者の顔が見えなくなってきた
三 貧乏旅行だけが「自由旅行」じゃない――「南の島」と「都市」

第七章 トップシェアの孤独
一 「旅行」以上「留学」未満――「自由旅行」とは違う旅の提案
二 未知の領域へ――ビジュアルで提案する旅
三 逆風に吹かれて――バッシングと苦情

第八章 世代交代のとき
一 学生旅行の変貌――DSTと旅行説明会の終着点
二 「地球の歩き方マガジン」の実験――創刊メンバーと第二世代の恊働
三 「四人組」体制の終わり――安松清の社長就任と世代交代

終章 新しい歩き方へ
一 ライバルの出現――引き戻される「貧乏旅行」イメージ
二 大リニューアル、そして新しい「地球の歩き方」へ
附 もう一つの歩き方――表紙の三〇年

あとがき
年表

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2009.12.01

▽なぜ負けたのか?――『日本「半導体」敗戦』

湯之上隆『日本「半導体」敗戦』(光文社)

本書の著者は、半導体技術者として、日立に十六年半勤務し、2002年のITバブル崩壊時に退職勧奨に応じるかたちで、研究者へと転身した。本書に書かれている著者の経歴については、ニュース・サイトJBpressのコラムでも読むことができる。

日本「半導体」の凋落とともに歩んだ技術者人生
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2229?page=5

この図の通り、著者は、日本のDRAMのシェアが世界トップの時に、技術者人生が始まり、その後、韓国に抜かれ、台湾に追いつかれそうになったところで終わりを告げる。この日本凋落の原因を、「日本の半導体産業には、過剰技術で過剰品質の製品を作ってしまう病気があるからだ」と指摘する。

そもそも、日本がDRAMで世界シェア・トップにたった時期というのは、メイン・フレームが主流で、そこで使用されるDRAMも、25年保証という高品質が要求された。この成功体験が「過剰技術、過剰品質」の病気をもたらした。

1990年代半ばになって、パソコンが普及し始めると、DRAMに求められるのは、せいぜい3年程度の品質保証であり、これに見合った低価格のDRAMを韓国メーカーが供給し始めるようになると、日本の半導体メーカーの凋落が始まる。また、日本の技術者は、技術の高度化には関心が高いが、製造コストを下げる技術への関心は薄いという。

64ページの注記には次のようにある。
《「インテルは原価から逆算して利益が出るように工程フローを開発している」という話を、自動車産業を研究している経営学者に話したところ、「そんなの当たり前じゃないか」と一蹴されてしまった》

そして著者は、こうした敗戦の原因は、経営戦略にもある、とも指摘する。1999年に日立とNECの合弁で設立されたDRAMメーカー、エルピーダは、設立当初の混乱を2002年に社長に就任した坂本幸雄の手腕で収束させるが、2008年のリーマン・ショックの影響で、2009年には、公的資金による支援を受けることになる。

こうした日本の半導体産業の凋落を、自身の体験、エルピーダ社員などへの聞き取り調査、国際比較などの豊富な事例によって、説得力のある説明をしている。

[目次]

はじめに

第1章 過剰技術、過剰品質
(1) 日本半導体業界の定説
(2) 半導体生産に関する技術には3階層ある
(3) 現在の日本の技術力は?
(4) 日本は過剰技術で過剰品質の製品を作っている

第2章 イノベーションのジレンマ
(1) 日本がDRAMで世界一になった理由
(2) 韓国のキャッチアップ
(3) 韓国に負けた日本半導体メーカーの言い訳
(4) イノベーションのジレンマとは?
(5) 日本半導体産業のジレンマ

第3章 海外高収益メーカーとの違い
(1) 利益率が低い日本半導体メーカー
(2) インテルと日本メーカーとの違い
(3) 韓国サムスン電子の組織
(4) 世界を牽引する台湾のファンドリーTSMC

第4章 自ら陥った4つのジレンマ
(1) コンソーシアムのジレンマ
(2) 合弁会社のジレンマ
(3) 日本の組織のジレンマ
(4) 日本メーカーの特許のジレンマ

第5章 装置メーカーとの共退化現象
(1) 共進化現象
(2) 露光装置
(3) 絶縁膜ドライエッチング装置

第6章 ネジクギになった半導体
(1) 世界一周してみました
(2) BRICsリポート
(3) 半導体の微細化はどこまで続くのか?
(4) 半導体の微細化が止まった世界とは?
(5) IT革命とはなにか?
(6) 半導体産業の未来

おわりに

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2009.11.21

▽インテル・インサイドとアップル・アウトサイド――技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか

妹尾堅一郎『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由』(ダイヤモンド社)


本書は、そのタイトル『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』通り、技術力のあるはずの日本が、どうしてビジネスの面で負けるのか、についての考察と、そこから得られる処方箋を提示したものである。

考察の中心にあるのは、第3章で紹介されているインテルとアップルのケース。著者は、この2社の戦略について、インテルは、その広告にあったように「インテル・インサイド」と、アップルについては、これをもじって「アップル・アウトサイド」と紹介している。

《インテルは、パソコンにとっても最も重要な中央演算装置(MPU)の中で、演算機能と外部機能とをつなぐPCIバスを徹底的に開発しました。そして、PCIバスの内部技術を完全なブラックボックスに閉じこめたのです》(pp.67-68)

その一方で、インテルは、外部との接続プロトコルはオープンにした。著者は、これを「内クローズ、外オープン」と呼んでいる。さらにインテルは、MPUを搭載するためのマザーボードを製造するノウハウを台湾メーカーに提供することで、これらの中間製品メーカーを味方につけ、完成品メーカーを間接的に支配することに成功する。

もう一つの「アップル・アウトサイド」とは、iPodにiTunesを組み合わせることで、音楽配信ビジネスの支配的なプラットフォームを構築することであり、また、iPhoneのソフト開発キットを安価で配布することで、サード・パーティーを味方につけてアプリケーションを充実させる、という戦略をさしている。

インターネットが普及した時に、「すべてをオープンにしろ」という主張があったものの、ビジネスで成功するには、クローズにする部分と、オープンにする部分を戦略的に組み合わせることが重要であることがわかる。また、日本の企業は、こうした戦略的なビジネス・モデルの構築が、あまり得意ではないようだ。

本書には、「インテル・インサイド」や「アップル・アウトサイド」のほかにも、参考になる事例が紹介されている。

[目次]
序 技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか
 日本の自動車産業、最大の危機
 なぜインテルだけが勝ち残るのか?
 武将(技術)の強さか、軍師(戦略)の知恵か
 負ける日本の、二つの問題意識
 「三位一体」型戦略の本質
 知財マネジメントをどうやっていくのか?

第1章 成長か? 発展か? ──モデル錬磨とモデル創新
 「成長」と「発展」の違いを理解する
 モデルを変えられて負け続ける日本
 妹尾のイノベーション七原則
 生産性向上だけで “競争力”を語ってよいのか?
 コラム▼スポーツと日本人の創造性
 コラム▼新規事業が生まれない産業生態系の枯渇

第2章 イノベーションモデルの基本型 ──二つのサイクルモデルと一つの促進モデル
 イノベーションモデル(1)
 技術起点型知的創造サイクル(テクノロジープロジェクションモデル)
 コラム▼知的創造サイクルにおける知財関係者の寄与
 イノベーションモデル(2)
 ビジネスリフレクションモデル(事業構想・イノベーションシナリオ起点型事業創造サイクル)
 イノベーション促進モデル
 ソシアルイシューマネジメント型(社会問題起点型)

第3章 インテル・インサイド、アップル・アウトサイド ──計算ずくで創られるイノベーション
 インテル・インサイド:基幹部品主導で完成品を従属させる
 日本の部材産業は本当に強いのか?
 アップル・アウトサイド:完成品イメージ主導で部品を従属させる
 大企業も中小企業も学ぶべきこと
 コラム▼スマイルカーブと付加価値
 次は自動車産業が崩される?
 電気自動車普及の衝撃を甘く見るな
 新ロボット産業も崩される?

第4章 イノベーションモデルのイノベーション ──新しい十分条件の登場
 プロパテントからプロイノベーションへ
 米国の競争力政策の歴史を俯瞰すると……
 イノベーションモデルはこう変わってきた

第5章 技術のオープン化が市場を拡大する ──「内クローズ、外オープン」の衝撃
 製品特性とビジネスモデル
 コラム▼標準化の基礎知識
 コラム▼中国が仕掛ける「国際標準化モデル」の革命?
 技術のオープン化が新規モデルを普及させる

第6章 イノベーションイニシアチブと「三位一体」経営 ──「発明」と「普及」を組み合わせる戦略的シナリオ
 新しいイノベーションモデル:研究開発段階の協業
 コラム▼分業と協業
 コラム▼「オープン」と「コラボレーション」の誤解
 新しいイノベーションモデル:製品開発と普及における分業
 コラム▼ディフュージョンの意味
 三つの「オープン戦略」
 イノベーションイニシアチブ
 「三位一体」経営へ──ビジネスモデルのせめぎ合い
 コラム▼「日本チーム、猛攻一七安打、二〇残塁で零封される」~技術の残塁の山をつくるな~
 コラム▼日本企業の自縛、自爆(門前和縛り、役満縛り、役決め縛り)

第7章 ビジネスモデルと知財マネジメント ──事業競争力の保持・強化に向けて
 知財マネジメントの基本的前提
 コラム▼特許の量と質から特許の使い方の質へ
 「事業戦略」における知財マネジメント
 事業競争力強化の知財マネジメント(1)
 事業リスクの最小化(リスクミニマム)
 事業競争力強化の知財マネジメント(2)
 事業機会の最大化(チャンスマキシマム)
 プロイノベーションで変わる、知財マネジメントの意味
 コラム▼事業における知財マネジメントの位置づけの変化
 ビジネスモデルと知財マネジメントを対応させる

第8章 可変的/発展的イノベーションモデルへ ──科学技術立国・日本に至る道 診断書──なぜ、技術で勝って、事業で負けるのか?
 コラム▼モデルの変容と多様化に対応する
 役員・幹部が率先してモデルを再点検する
 コラム▼「真珠湾・マレー沖海戦思考」
 コラム▼水に流す前に、真摯に振り返る
 結び:科学技術「大国」から「立国」へ

補章 思考イノベーションのヒント

妹尾流・創発・思考
 コラム▼日本のノーベル賞受賞者を知っていますか?

あとがき

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2009.11.20

▽リクルート報道の再検証

田原総一朗『正義の罠 リクルート事件と自民党 二十年目の真実』(小学館)


『リクルート事件・江副浩正の真実』(中央公論新社)の中で触れられていた本を、いくつか読んでみました。

まず、田原総一郎の『正義の罠 リクルート事件と自民党 二十年目の真実』。本書において、著者は、「リクルート事件は、検察が作った冤罪である」という主張をしています。
ところで、リクルート・コスモスという不動産会社の未公開株を譲渡したことの是非はさておき、側近の証言として紹介されている次の二点が、リクルート事件の背景にあったことがわかります。

《江副が側近に「広告情報誌事業では、どんなに飛ばしても年間に一〇〇〇億円の利益をあげるのに二〇年かかる。それが不動産だと、五〇〇億円で買った土地を、うまくすると明日にでも六〇〇億円で売れる」ともらしたのはホンネのホンネで、メーカーになりたいという悲願と合致したのだろう》(p.98)

《リクルート元部長も、「江副さんは、経済同友会や経団連に顔を出すようになっても、『どこの馬の骨かわからない男』だし仲間外れにされ、メジャーでないというコンプレックスを強く感じていた。特に第二電電入りを拒否されたことは痛手だった。だから、何とかして、一人前として仲間に入れてほしい。仲間にしてほしい。そんな願いがあって、未公開株を政財界の要人たちに譲渡した」のだと強調した。》(p.108)

ただ、事件当時の感覚では、未公開株の譲渡自体は違法ではない、という感覚が政財界の中にあったのは事実のようです。

リクルート疑惑の報道の端緒を開いた朝日新聞横浜支局、そして朝日新聞社会部の側の様子は、次の二冊を読むとわかります。

『追跡 リクルート疑惑―スクープ取材に燃えた121日』(朝日新聞横浜支局)

『ドキュメント リクルート報道』(朝日新聞社会部)

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2009.11.15

▽リクルート事件――いまなお残る疑問

江副浩正『リクルート事件・江副浩正の真実』(中央公論新社)


リクルート事件といえば、1980年代のバブルや昭和末期の政財界を象徴するような事件ではあったものの、中心人物である江副浩正リクルート元社長が執行猶予付きの有罪判決を受けて結審する2003年には、すっかり風化してしまった感がある。

さらに江副の執行猶予が解けたのが2008年で、事件発覚から実に20年もたった後に、江副が自らの視点でリクルート事件に関する報道、検事による取り調べ、裁判を振り返ったのが本書である。叙述に当たっては、拘置所で綴った日記がもとになっているという。

事件当時から、未公開株譲渡の違法性や贈賄が立証できるのか、という疑問が指摘されていたが、本書を読んでも、その疑問は解けないまま残る。さらに、江副を取り調べた宗像紀夫検事が、裁判が終了してから、コンサート会場で偶然出会った江副に問われて次のように語っている。

《公判で証取法にまつわる株譲渡の経緯の詳細、臨教審問題など訴因に関係のない審理が続いたことについて尋ねたところ、「いやあ、公判が始まっても、どうやって贈賄罪を立証するかを検討していて時間が足りなかった。二年以上それに費やしたかな」との話だった》(pp.378-379)

検事による取り調べも、怒鳴りつけたり、立たせたりと、いろいろと問題があったようで、そもそもリクルート事件とはいったい何だったのか? という疑問は、本書で解けるどころか、深まるばかりである。

[目次]
リクルート事件Ⅰ――発端
 会長退任
 国会証人喚問
 政治家との交わり

リクルート事件Ⅱ――特捜の取調べ
 特捜部とメディアの“共演”
 拘置所での取調べ
 現代の拷問
 政治家ルート

リクルート事件Ⅲ――保釈後から裁判開始まで
 保釈後のこと

リクルート事件Ⅳ――裁判
 裁判開始
 政界ルート
 労働省ルート
 NTTルート
 文部省ルート
 調書の信用性
 論告求刑・最終弁論・判決

リクルート事件Ⅴ――リクルート事件に関連して
 長いあとがき

あとがきのあとがき

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2009.11.05

▽「週末起業」への心構えの書

藤井孝一『週末起業サバイバル』(ちくま新書)


著者は、「週末起業」という言葉の生みの親という。この『週末起業サバイバル』は、『週末起業』(ちくま新書)、『週末起業チュートリアル』(ちくま新書)に続くもの。内容は、下記の目次を見ればわかるように、週末起業の具体的なアイデアよりも、週末起業をする際の心構えに重点を置いて書かれている。

興味深かったのは下記のくだり。
《最初の本『「週末起業」これで私もお金持ちかも』(中経出版)を2001年に出版したが売れませんでした。その後、2003年に同名のタイトルで出版したら、ベストセラーになりました。……その後、2005年からは景気がもち直し、すっかり忘れられました。そして、2007年、サブプライム問題の影響で景気が悪化すると、再び脚光を浴びるようになりました》(pp.107-108)

[目次]
はじめに
第1章 雇われる生き方がリスクになった
 現実になった厳しい予測 / クビを切られるのは誰か? / 正社員も安泰ではない / 国への負担も増えるばかり / 企業・国には期待すべきでない / フリーエージェントという働き方 / 自信をもて / 今の仕事にやりがいはありますか? / やりがいだけでは食べていけない /自力で稼ぐには? / まずは会社にいながらやってみろ / 転ばぬ先のリスクヘッジ

第2章 週末起業のまばゆい魅力
 副業とは何だろうか / 最近の週末起業のトレンド / 週末起業の魅力とは / 収入はあるほうがよい / デメリットもある / 週末起業を始める上で注意するべき点

第3章 安く、早く、確実に稼ぐ
  成功する週末起業とは? / 自分のアイデアをビジネスにしたJさん(50代・男性) / やりたいことで食べていくことに成功したKさん(30代・女性) / 趣味をお金に換えたSさん(40代・男性) / 資格を活かして年商1300万円(40代・男性) / 飲食店の経営者になったOさん(40代・男性) / ネットオークションをオンラインショップに発展させる(40代・男性) /

第4章 ネットをうまく利用しよう
 週末起業にまつわる疑問1 週末起業は週末だけでいいのか? / 週末起業にまつわる疑問2 本当にお金をかけないのか? / 週末起業にまつわる疑問3 やっぱり会社は辞めないのか? / 週末起業にまつわる疑問4 「好きなこと」がおすすめか? / 週末起業にまつわる疑問5 「できること」でやるべきか? / 週末起業にまつわる疑問6 時流に乗ることは必要か? / 週末起業にまつわる疑問7 アルバイトじゃダメなのか? / ツールの充実でハードルが下がった / まずは情報発信せよ / インターネットを味方につけよう

第5章 めざせ月商50万円!
 4割が悩む「ネタがない!」の事情 / 分野を絞る / 起業ネタを見つける / 最悪なのは「エア起業」 / 3万円の壁 / その楽しさがアダになる / サービスの利用者に甘んじていないか / サービスの提供者になるには? / セミナーや勉強会を開催する / オフ会を開く / 自分の空きスペースを商品化する / 仕入れに挑戦する / いちばん手強い「1円の壁」 / 月に100時間をあてられるか / かわいいお金に旅をさせろ /  広告宣伝でビジネスを育てる / 人脈に対する投資 / 「月商50万円の壁」突破法 / 虎の子を人に払えるか? / 場所に対する投資が時間効率を高める! / 「月商50万円」が限界か? / 「月商50万円」を超えて、なお伸ばすには / 独立の壁、そして独立してからの壁 / 先輩に訊く / 独立成功のポイント / どうしてもネタがないなら

第6章 トラブル回避のための法律講座
 税金リテラシーを高めよ / 開業届を出す必要はあるか? / さもしい? 無税の人 / サラリーマン法人のすすめ / 独立する人が「ダメもと」でやる作戦 / 時代おくれの「法人4兄弟」 / 気になる本業との関係 / 就業規則の法的妥当性 / 非正社員は、副業しやすい / 許可を得て回避する / 会社に黙ってやる / ばれてしまった時の対処 / 同僚への後ろめたさ / 良い面、悪い面がある

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2009.11.02

▽小沢一郎・野中広務・菅直人・森喜郎の証言録

『90年代の証言 小沢一郎 政権奪取論』(朝日新聞社)


以前、ひょんなことから休刊した『論座』(朝日新聞社)のバックナンバーを読んでいたら、たまたま「90年代の証言」というシリーズの菅直人の回が載っていて、とても興味深く読みました。そして、このインタビューを受けた何人かについては、本にまとめられていることを知り、菅直人に続いて、小沢一郎、野中広務、森喜郎と続けて読んでみました。

細川首班による非自民連立政権の成立と崩壊、自社さ連立、新進党や民主党の結成、自自公連立、小渕首相の急逝から森政権の成立、加藤の乱、そして小泉政権の誕生といった日本政治の節目節目を、それぞれの視点から語っていきます。同じ出来事であっても、立場によって微妙に見方が異なるのが面白いですね。

いまNHKでやってる『証言ドキュメント 永田町・権力の興亡』の元ネタといえるかもしれません。

『菅直人 市民運動から政治闘争へ 90年代の証言』(朝日新聞社)


『野中広務 権力の興亡 90年代の証言』(朝日新聞社)


『90年代の証言 森喜朗 自民党と政権交代』(朝日新聞社)

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2009.10.27

▽日本国の正体とは?

長谷川幸洋『日本国の正体』(講談社)


東京新聞論説委員の長谷川幸洋は、日本国を支配している本当の権力者は官僚であり、マスコミ、とりわけ新聞記者が、その忠実な「代理人、あるいはポチ」に堕している、と自己批判する。本書の内容自体は、かねてより、さまざまな識者が指摘してきたことと同じであって、目新しさは無いが、新聞記者自らが懺悔したことに意味があるのかもしれない。

ちょっと驚いたのは、2009年の2月から3月にかけて相次いで起きた事件について、次のように、はっきりと述べている点。

《中川財務相の朦朧会見、小沢秘書逮捕、それに高橋洋一の窃盗事件。……これらの事件は一見すると、相互に関係がないように見える。それを認めたうえで、傍観者の立場で事件を見ると、私には一連の事件が「一本の糸」でつながっているようにも見える。なぜなら、事件が起きて喜んだ「勢力」が同じであるからだ。それは「霞が関」である》(p.21)

長谷川は、安倍政権下において、高橋洋一を支援するかたちで官僚改革に関わってきた。その官僚との攻防は、『官僚との死闘七〇〇日』(講談社)に詳しい。


長谷川幸洋『日本国の正体』(講談社)
[目次]
第1章 官僚とメディアの本当の関係
・新聞は何を報じているか
・不可解な事件
・霞が関の補完勢力になった新聞
・転向の理由
・政権を内側からみるということ

第2章 権力の実体
・政治家と官僚
・「増税」をめぐるバトル
・財務官僚の変わり身
・福田首相の本心
・事務次官等会議

第3章 政策の裏に企みあり
・「政策通」の現実
・カネは国が使うべきか、国民が使うべきか
・定額給付金は「ばらまき」か
・「官僚焼け太り予算」を点検する
・政策立案の手法
・「専務理事政策」とはなにか

第4章 記者の構造問題
・記者はなぜ官僚のポチになるのか
・真実を報じる必要はない?
・「特ダネ」の落とし穴
・記者は道具にすぎない
・官僚にとっての記者クラブ

第5章 メディア操作を打破するために
・霞が関幻想
・先入観としての「三権分立」
・「政府紙幣発行問題」の顛末
・記者が陥る「囚人のジレンマ」
・報道の力を取り戻すために

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2009.10.22

▽オバマ・ショックとは何か?

越智道雄・町山智浩『オバマ・ショック』(集英社新書)


オバマ・ブームに便乗した本かと思い、長い間、積ん読になっていたのですが、読んでみたら面白かったので、要点を箇条書きにしておきます。アメリカ史におけるオバマの位置づけが、わかると思います。

・ブッシュの8年間でアメリカは、絶頂からどん底まで落ちた
・1980年のレーガンから28年間続いた共和党支配が終焉した
・「イラク=テロの黒幕」説はアメリカの主要メディアで否定されたが米国民の7割は支持していた。2007年でも4割が支持している
・アメリカ人が新聞を読む比率は3割以下、ニュースサイトを読むのは11%
・ブッシュはソーシャル・セキュリティ(社会保障制度)は連邦政府の仕事だということを知らなかった
・ブッシュは父親からバカにされていた
・父親ができなかったフセイン討伐をするが、逆に、父親から叱られてしまう
・「歴史になるころには私たちはもう死んでるよ」と発言したブッシュには歴史意識が欠如していた
・ブッシュはソーシャル・セキュリティ(社会保障制度)を解体しオーナーシップ・ソサエティへの移行を進めようとしたが結果として住宅バブルを招いた
・モノを作ってるうちは労働倫理が国民精神のバックボーンとなるが、富が蓄積されるとモノを作らなくなり国が衰退する
・イラク戦争と、イギリス衰退のきっかけとなったボーア戦争は似ている
・政治や経済が衰えても文化は残る。ギリシャやローマやイギリスの文化は残ったが、アメリカのポップ・カルチャーは生き残れるかわからない
・いまハリウッドには全然お金が入ってこない。ハリウッドの産業規模はゲーム業界を下回る
・共和党支持基盤の白人ですら「もうバカやっちゃいられない」とレーガンやブッシュ路線の共和党に決別し、オバマに投票した
・オバマはマジック・ニグロ=過去のない黒人、つまり先祖に奴隷経験がなかった黒人
・オバマは人種、階級、宗教、コミュニティ、家族関係など、あらゆる面でどこにも帰属してこなかった「絶対的アウトサイダー」
・ミシェル夫人と結婚して「人種的アイデンティティのある家庭」を手に入れることができた

なかなか面白いのでお薦めです。

[目次]
第1章 オバマがチェンジ(変革)するもの—レーガン連合の二八年
第2章 失われた八年—ブッシュとは何だったのか
第3章 アメリカン・ドリームという博打—サブプライムと投機国家
第4章 覇権国家の黄昏—衰える軍事、経済、文化のヘゲモニー
第5章 異端児か、救世主か—オバマが選ばれた理由
終章 彼の「強運」は世界の味方なのか—オバマの未来、アメリカの未来

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2009.10.19

▽養老孟司と内田樹

『考える人』 (新潮社)2009年秋号・特集「活字から、ウェブへの……。」

昨日紹介した『考える人』 の中から、気になったコメントをいくつか。

まず養老孟司は、まず、ウェブで書かれる文章は、反論を予測しながら書くことになるため、

《官僚の作文に近くなっていきます。しかし、用意周到な文章なんて、読んでいてこれほどおもしろくないものはない》(p.44)

と指摘しています。また、ウェブの中にある文章とは、

《古典だろうが昨日の出来事だろうがすべては過去なんです。パソコンを使って向き合っているのは過去でしかない。……パソコンを使うようになるにしたがって、人類全体が過去に埋没しはじめたんじゃないか。だから生きている気がしない人が増えているのは当然ですね》(p.45)

と警鐘をならしています。一方、ウェブ上のテクストは著作権を放棄している内田樹は、

《あらゆる読者はその長い読書人生を『無料読者』という立場から始めます。……この膨大な無料購読者たちのうちの一部がやがて活字中毒者となり、……『有料購読者』になります》(p.65)

と、まずは無料の読者を増やすことが重要であると説いています。

『考える人』特集「活字から、ウェブへの……。」
http://www.shinchosha.co.jp/kangaeruhito/mokuji.html

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2009.10.18

▽ほぼ日刊イトイ新聞ができるまで

糸井重里『ほぼ日刊イトイ新聞の本』 (講談社文庫)

新潮社が発行している季刊誌に『考える人』というのがあります。定価はなんと1400円。

最新号である2009年秋号の特集は、「活字から、ウェブへの……。」という、ここ十年くらいの間に、いろんな雑誌や書籍が取り上げてきたテーマを、まだ、やってるのか!? と、ちょっと驚いてしまうようなものでした。ただ、その「活字から、ウェブへ」の代表的な存在としてインタビューされていたのが、「ほぼ日刊イトイ新聞」を立ち上げた糸井重里でした。

そのインタビューの一部はウェブでも読むことができますが、私が、なるほどと思ったのは、次の一節。

糸井重里ロングインタビュー「ここにいることがうれしい」
http://www.shinchosha.co.jp/kangaeruhito/high/high132.html
《お客さんがたくさん来るか、来ないかという問題では、手招きして呼び寄せる方法ばかりが語られているような気がしますね。手招きする筋肉ばかり発達させても、長続きしないんですよ。たぶんいつかくたびれてくる。》

企業のサイトにしろ、個人のブログにしろ、最近は、アクセス数を伸ばすことを優先しすぎて、結果として、同じネタがぐるぐると繰り返し登場するようになっている気がしています。戦略的には正しいことなのかもしれませんが、中の人が長く続けられることなのか、という点で疑問を感じていました。ですので、この「手招きする筋肉ばかり発達させても、長続きしない」という指摘は、とてもうなずけるものがあります。

そして、糸井重里が、どんな考えで、ほぼ日刊イトイ新聞を開設したのか知りたくなり、『ほぼ日刊イトイ新聞の本』を読んでみました。以下は、その概略です。

1990年代の半ばから、長引く不況やマスメディアの構造転換によって、広告のクリエイティブな世界にもダンピングの波が押し寄せてきて、仕事にあぶれたクリエイターや、意に沿わない仕事をさせられて、すり減っているクリエイターが増えてきた。糸井自身も将来の展望が見えなくなった中で、クリエイティブが主体となったメディアを作りたい、という気持ちが生じてきたという。

コンテンツも、無料で知り合いに書きたいことを書いてもらう、というスタンスで、「クリエイターのまかないめし」を提供してもらうことを重視していた。「ただでもやりたいことをやりたい」というクリエイターは多く、コンテンツが足りないということは無かったそうだ。また、スポンサーをとることは、自由度が無くなるという理由で拒否し、誹謗・中傷が書き込まれやすいので、掲示板も設置しないで、読者からの声はメールだけに限った、という。

本書が最初に書かれたのが2001年で、2004年に文庫化されるにあたり、第8章が追加されたが、この時点でも、「ほぼ日」単体では赤字のままで、書籍や手帳などの物販と、糸井自身の仕事の利益で、黒字を達成している状態という。

「考える人」のインタビューのタイトルにある「ここにいることがうれしい」とは、捨て身で始めた「ほぼ日」が存在し続け、こうしてインタビューを受けることができることに対する喜びを表していることがわかりますね。

[目次]
第1章 ぼくが『ほぼ日』をはじめた理由
第2章 とにもかくにもはじまった
第3章 「いま仕事が流行っている」
第4章 『ほぼ日』をはじめて気づいたこと
第5章 もう一度よく考えてみた
第6章 『ほぼ日』に風が吹く
第7章 『ほぼ日』幼年期の終わり
第8章 その後の『ほぼ日』

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2009.10.17

▽うつ病じゃないけど、うつな人のための本

日垣隆『折れそうな心の鍛え方』(幻冬舎新書)

日垣隆の著作は、少年法や事件のルポ以外は、あまり評価しておらず、自己啓発本の類は読んだことはなかったのですが、本書のプロローグに綴られた、自身の体験により、本書を、ある種のノンフィクションとして読みました。

[参考]プロローグと第一章
http://www.gfighter.com/images/shop/orespunatachiyomi.pdf

まあ簡単に言えば、人間誰しもうつな状態になることはある、医者や薬に頼らずに、自分の力でやり過ごそう、というのが本書の主張である。そのためのハウツーが、著者の経験を交えつつ書かれている。

たとえば、人間の脳内にはセロトニンという物質があり、これが欠乏すると、鬱状態になるという。そして、セロトニンを活性化させるのによい方法とは、「よく歩くこと、よく物を噛んで食べること、腹式呼吸をすること」(p.82)という。

第五章では、泣ける映画を観て、涙を流すことで、うつからの回復を促すことを薦めており、そのための「泣ける映画ベスト30選」があげられている。

[目次]
プロローグ――「医療関係者のみなさん、しばらく黙っていてください」

第一章 「勝手に自己診断」編
1「喪失の落ち込み」をウツ病にするのはもうやめよう
2「バカボンのパパ」は変人だから愛される
3 会社に行けずディズニーランドは楽しくても、自分を責めない
4「好きだったことがイヤになった」は落ち込みのバロメーター
5 しんどくても、日常生活が破綻していないなら大丈夫
6「イヤ」の理由を分析すると、解決策が見えてくる
7 自分がどの手のトラブルに弱いのか知っておこう
8 共感力が高い人はウツがうつりやすいので要注意
9「ほかの人は平気でも自分には耐えられない」ことはあって当然

第二章 とりあえず「ガス抜き」編
10「ストレス耐性」のコップを溢れさせない
11「時間の経過」だけに任せず、小さなガス抜きを繰り返す
12 話を聞いてくれる人の力を借りて、毒を吐き出す
13 原因を人のせいにする愚痴は、ストレスを育てるだけ
14 じっくり相手を選ぶより、「誰でもいいから即相談」
15「何だか不安」は「何が不安か」が分かっていないから
16「自分のつらさは特別」という思い込みをぶち壊す
17 たくさん笑う。思いきり泣く。我慢しないで言葉にする。
18 人は自分で超えられる悩みや落ち込みしか抱えない

第三章 「まずは応急処置」編
19「忘れる」「取り戻す」「埋め合わせる」で喪失を乗り越える
20 一発逆転を狙わず、やれることは全部やる総力戦で
21 「三カ月で立ち直る」と期限を切ろう
22 人に「がんばれ」と言わせず、自分ではがんばる
23 「始めるためのハードルを下げる」工夫に力を注ごう
24 ジャージで一日ゴロゴロしていいのは、元気な人だけ
25 ぼんやり見ているテレビはエネルギーを奪うのでご用心
26 二八年間サバイバル生活をした横井庄一さんの本を読む
27 よく歩きよく噛みよく呼吸して、自前のセロトニンをつくる
28 パラセイリングとジェットスキーでスカッとする
29 占いのためだけに台湾旅行をしてみる
30 パートナー以外の異性を交えた三人旅をする
31 「給料以外に稼ぐこと」がストレスを減らす鍵になる
32 打ち明け話をするなら中年サラリーマンより女子高校生に
33 七割の人にほめられ、三割に批判されるのがちょうどいい
34 犬を飼って「自分が必要な存在である実感」を取り戻す

第四章 「日々、鍛えてみよう」編
35 ちょっと難しい課題を引き受けて「自分の器」を大きくする
36 才能ある人とは、自分なりの「鍛える努力」を続けられる人
37 諦めずに抵抗すれば、老眼だってずっと先延ばしにできる
38 努力しない長生きタイプは努力する短命タイプに勝てない
39 自分への期待値が高すぎる人は挫けやすい
40 「やればできるけど苦手なこと」は無理してやらない
41 「人に任せられること」は自分で思っているより多い
42 失業もウツも「最悪の事態」を経験できる貴重な機会
43 映画に誘える異性、自分と発想が異なる同性の友人をもつ
44 退屈にも多忙にも翻弄されない自分のペースを持って生きる
45 「いずれ関係が破綻しそうな人」は早めに見限っておく
46 迷ったら縦軸・横軸の四分割で考えるとうまくいく
47 「どうすればいいですか?」は失敗をカバーする魔法の言葉
48 嫉妬は「自分への他者評価」を上げるバネになる
49 一パーセントの可能性にかける潔さをもつ
50 落ち込んだら、まず出口をイメージするのが回復の第一歩

第五章 大人たちよ、映画を観てもっと泣こう――泣ける映画ベスト30選
なぜ「泣ける映画ベスト30選」か
「シンデレラマン」 /「遠い空の向こうに」(と「フラガール」)
「セント・オブ・ウーマン」 /「男たちの大和 YAMATO」
「サトラレ」と「天国までの百マイル」 /「学校Ⅱ」
「明日の記憶」 /「ライフ・イズ・ビューティフル」
「ショーシャンクの空に」/「レインマン」
「アメリカン・プレジデント」 /「スタンドアップ」
「山の郵便配達」
「僕の彼女を紹介します」「ラブストーリー」「猟奇的な彼女」「コールドマウンテン」「ひまわり」
「ターミナル」 /「JSA」
「ギャラクシー★クエスト」 /「あの子を探して」
「グッバイ、レーニン!」と「やさしい嘘」
「BUENA VISTA SOCIAL CLUB」
「RUDY 涙のウイニングラン」/「ラスト・プレゼント」
「ある愛の詩」より断然「ホリデイ」
「オールド・ルーキー」 /「變臉 この櫂に手をそえて」
「ALWAYS 三丁目の夕日」 /「象の背中」
「ベンジャミン・バトン」「エレジー」「歩いても 歩いても」
「SEX AND THE CITY」 /「グラン・トリノ」

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2009.10.16

▽エコノミストは一貫性が大事

東谷暁『エコノミストを格付けする』(文春新書)


本書は、タイトルどおり、40人のエコノミストを格付けしたもの。著者は、経済ジャーナリストの東谷暁で、2003年の『エコノミストは信用できるか』(文春新書)の続編である。

話題になりやすいのは、終章のエコノミストの格付けの部分であるが、これは、各エコノミストの主張の学問的な当否よりも、主張の論理性や一貫性を見るための指標とした方が良さそうである。

格付け以外の部分で、私が、「やはり、そうだったか」と感じた点は、以下のような点である。

《労働生産性は、実質GDP(国内総生産)を国民の総労働時間で割った数値をもとに算出されるので、当面、手っ取り早く上昇させようと思えば、解雇とアウトソーシングを推進することで見かけ上は達成できる。……アメリカでは、ITバブルが崩壊して雇用が減少したので、かえって労働生産性は上昇したが、住宅バブルが始まって雇用が増えると、今度は労働生産性が下落していった》(p.80)

《グリーンスパンはデータよりも自分の勘を信じるあまり、労働生産性の算出法を変えてIT革命を演出した。つまり、データを自分の勘に合わせたのである。……発表されたアメリカの労働生産性上昇率のグラフは、九五年から上方に折れ曲がっていた。もちろん、九五年にIT革命が起こったからではない。グリーンスパンたちが、意図的に九五年をIT革命元年にしたからなのである。これはITバブルを抑止するどころか、IT時代の到来を印象づけて加速させてしまった》(pp.102-103)

《日本経済を不況から脱出させるには、インフレターゲット政策しかないと論じたのは、アメリカの人気経済学者ポール・クルーグマンだったことはすでに述べた。……では、今回の金融危機に陥って景気後退を経験しているアメリカは、インフレターゲット政策を採用したのだろうか。いまだにFRBも採用していない。これはFRB議長のベン・バーナンキが、インフレターゲット論の本家本元であることを考えると、実に奇妙なことといわねばならない。代わりにアメリカ政府が行なっているのは、日本のインフレターゲット論者たちが、ごく最近まで「効かない」と主張してきた財政政策なのだ。しかも、その旗を振っているのが、クルーグマンその人なのである。……そもそもクルーグマンという経済学者は、自らの言説に責任感の強いエコノミストというわけではけっしてない》(pp.128-129)

[目次]
エコノミストたちの「大恐慌」
金融崩壊を予測できた人、予測できなかった人
新自由主義の罪と罰
格差社会と「小さな政府」
なぜ日本が世界で一番落ち込んだのか
神様グリーンスパンの正体
インフレターゲット論の着地点
財政出動は時代遅れなのか
中国とインドが未来の支配者か
日本経済を復活させる鍵
エコノミストたちの採点評
エコノミスト格付け表(〇九年版)

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2009.09.20

▽ベーブルースとともに来日した大リーガーは、アメリカのスパイだったのか?

NHK取材班『日本を愛したスパイ』(日本放送出版協会)


たまたま図書館で見つけて読んだ本なのですが、なかなか面白かった。ノンフィクションなのですが、ミステリーのような趣があり、そして、ちょっとしたドンデン返しもあったりして……。内容については、本書の帯から推測してください。お薦め。

16ミリフィルムに秘められた44年前の謎
こよなく日本を愛した、ある大リーガーの
数奇な一生をドラマチックに描いた、
異色のドキュメンタリー

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2009.09.03

▽民主党の人間関係をおさらいする

大下英治『民主党政権』(KKベストセラーズ)


本書は、政治ジャーナリストの大下英治が、民主党のここ半年くらいの流れを、主要な人物へのインタビューをもとに概観したもの。いわゆる暴露物では無いが、鳩山由紀夫や小沢一郎を軸とした民主党内の人間関係を把握するのに役立つ。
 また、民主党の掲げる「脱官僚」のお手本として、菅直人が調査に赴いたイギリスの制度も紹介されている。これによるとイギリスには、「シビルサービスコード」という規則があり、官僚がやるべきこととやってはいけないことの線引きが明確に定められている、という。さて、民主党は、本当に「脱官僚」できるのでしょうか……?

[目次]
序章 政権交代へのカウントダウン 
第1章 小沢一郎、その肚を明かす―独占インタビュー
第2章 小沢代表辞任がもたらした政権交代
第3章 鳩山が動く、小沢が蠢く、岡田が正す
第4章 官僚主導政治を打破せよ
第5章 鳩山民主、政権公約の実効性
第6章 民主党の真価が問われる
あとがき

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2009.07.31

▽街歩きの効用とは?

堤清二x三浦展『無印ニッポン―20世紀消費社会の終焉』(中公新書)


元セゾン・グループ代表の堤清二と『下流社会』などで知られる三浦展の対談集。ちょっと散漫な上に、内容的には、それほど目新しい事はないが、二人が街歩きの効用を語る部分は興味深い。

《堤◎東京でも街を歩いていると、向こうから情報あるいはメッセージを送ってくる。あれっ、と思うことがあるわけですよ。最近では、いま変わり始めている消費、そして社会、これは並大抵な変わり方ではないぞという感じがするの。空気みたいな、風みたいな何かが話しかけてくる。新宿、渋谷、浅草なんかは、そういった意味での話しかけが多い街です。
三浦◎最近はどのへんをお歩きになっているんですか。
堤◎そうですね。代官山、大久保。神楽坂、高円寺なんかも、最近はかなり変わってる。》(p.116)

《三浦◎わたしの場合は渋谷にずっといたということで、暗黙知みたいにして学んだのでしょうね。パルコを辞める頃は、次に何が流行るか、だいたいわかりました。公園通りで定点観潮をやっていて、ちょっといままでと違って輝いているものを見つけ、いいなと思って写真を撮ると、その撮ったものが翌月に流行るんです。パルコを辞める頃にラルフ・ローレンの輸入物の靴下を買ったんです。渋谷パルコから山手線の方に降りて行ったところにあった店で。これがあんまりぴちっとしてなくて、ちょっとゆるゆるしている。一説によると、それがルーズソックスの始まりなんです。当時はクシュクシュソックスと言われていましたが、それを買って履いていたんです。だから、ルーズソックスを最初に履いたのは俺だ、と(笑)。》(p.117)

[目次]
1 アメリカ型大衆消費社会の終わり
2 戦後日本とアメリカ
3 無印ニッポン
4 日本のこれから

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2009.07.20

▽2011年に新聞・テレビ消滅の根拠は……

佐々木俊尚『2011年 新聞・テレビ消滅』(文春新書)


著者の佐々木俊尚は、なぜ『2011年 新聞・テレビ消滅』というタイトルをつけたのか? それは、

《アメリカのメディア業界で起きたことはつねに三年後に日本でも起きる。すべては約束された運命なのだ》(pp.10-11)

とし、アメリカでは2008年に新聞業界の崩壊が始まったから、日本でも、その3年後の2011年に新聞業界の崩壊が始まる。さらに、2011年には、地上波デジタルへの完全移行と、情報通信法の施行により、いわゆる電波利権が溶解する、と、やや2011年という年を新聞・テレビの崩壊の年と断定するには、根拠が薄いが、それでもマス・メディアの衰退は、インターネットの普及によって不可避と言える。

著者は、グーグルの及川卓也の言葉を引いて、メディア産業を「コンテンツ」、「コンテナ」、「コンベヤ」の三つの層からなるとし、マス・メディアの時代から、インターネットの時代へと、それぞれの層の担い手が変化することをあげて、メディア業界の変化を説明していく。

32ページには、新聞のケースとして
《コンテンツ=新聞記事、コンテナ=新聞紙面、コンベヤ=販売店》
とあげられている。これが、どのように変化していくか、については、著者のさまざまな考察が本書にあげられている。読者も自分なりに、メディアの将来像を考えてみるきっかけになりうるだろう。

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2009.06.26

▽志らくが語る談志と談春

立川志らく『雨ン中の、らくだ』(太田出版)

立川流の兄弟子で、立川ボーイズの相方でもあった立川談春の『赤めだか』を補完するに書かれたのが『雨ン中のらくだ』。『赤めだか』とあわせて読むと倍楽しめますね。

▽談春が見た志らく
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/01/post-8359.html

志らくと言えば、古典落語、シネマ落語、コント、芝居、映画批評と、多彩な才能を発揮しているのですが、唯一の汚点と言えば映画監督で、本書でも、そのあたりのことが率直に語られています……。

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2009.06.10

▽英国人が見たニッポンとアメリカ

コリン・ジョイス『「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート』(生活人新書)


コリン・ジョイス『「アメリカ社会」入門―英国人ニューヨークに住む』(生活人新書)


日本で十四年間暮らした英国人記者が、ニッポン社会について考察したものと、その続編として、ニューヨークに移住してアメリカ社会に考察した二冊。日本では前著が、話題になったようですが、続編の方も、アメリカ人に対するイギリス人の、やや屈折した感情が読み取れて面白い。イギリスやイギリス人のことを知っているといっそう楽しめることでしょう。

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2009.05.23

▽村上春樹が欧米で高く評価される理由

浅川港『NYブックピープル物語―ベストセラーたちと私の4000日』(エヌティティ出版)


本書は、1989年から2000年に、ニューヨークの講談社アメリカで英文出版に従事した著者が、アメリカにおける編集作業やマーケティング活動などの体験を綴ったものである。アメリカの講談社と聞くと、村上春樹の英訳版を出したところ、と思うかもしれないが、そちらは講談社インターナショナルで、著者の勤務した講談社アメリカとは、別の組織のようだ。



それでも、独自の出版活動により、100歳を超える黒人姉妹の伝記『Having Our Say』をミリオン・セラーにしたり、プラハの春の指導者ドプチェクの回想録を出版するなど、大きな実績をあげている。

そんな著者が、村上春樹がなぜ欧米で評価されるのかについて述べた部分は興味を引く。

《しかし日本で絶大な人気を誇る司馬氏や井上靖氏の作品は、残念ながら欧米では必ずしも高く評価されない。理由は、フィクションかノンフィクションかはっきりしないという点にある。……その対極にあるのが、三島由紀夫氏や村上春樹氏の作品。この二人を同列に論じたら、ご当人たちから相当苦情が来そうだが、じつは共通点がある。「想像力で書く作家」という点。それと、海外で非常に評価が高い点。小説は想像力で書くもので、史料を引用するなどは、フェアでない。そういう思い込みが根強い海外、特に欧米での三島、村上春樹両氏の評価は高いのだ。》(p.210)

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▽世襲を生み出す要因とは?

上杉隆『世襲議員のからくり』(文春新書)


本書は、ジャーナリストの上杉隆が、『週刊文春』誌上で連載していた政治家の世襲問題に関するレポートを再構成して、新書としてまとめたものである。世襲議員が有利とされるのは、政治資金団体の非課税相続、後援会組織の世襲、苗字などの継続性、という鞄、地盤、看板の三つのバンを引き継げるから、である。

これらの三バンについては、世襲批判の根幹として、かねてより指摘されてきた点である。それ以外の要因として、著者は、マスコミとの関係を指摘している。たとえば、鳩山家で、幼少時の由起夫や邦夫のお馬さん役をしていた人物は、現在は某新聞社の権力者であり、また、マスコミにも多数の政治家の子女が入社している、ということである。

[目次]
第1章 二世の投げ出しはなぜ続く
第2章 民主党の二世たち
第3章 からくりその1 - 政治資金管理団体の非課税相続
第4章 からくりその2 - 後援会組織の世襲
第5章 からくりその3 - どんな無理もする「看板の世襲」
第6章 世襲大国日本
第7章 国民の意思が世襲を断ち切る

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2009.05.16

▽日本最大のレシピサイト「クックパッド」の作り方

上阪徹『六〇〇万人の女性に支持される「クックパッド」というビジネス』(角川SSC新書)


本書は、料理のレシピ・サイト「クックパッド」の誕生から、運営を軌道に乗せるまでの苦労を綴ったものである。クックパッドは、ユーザーが料理のレシピ投稿できるCGM(Cosumer Generated Media)サイトとして、1997年に設立された。現在は600万人ものユニーク・ユーザーを集める人気サイトに成長した。

クックパッドは、ユーザーに楽しんでもらうことを基本に置いてきた。開設以来、レシピの投稿のしやすさや検索のしやすさなどを追求してきた。また、ユーザーは無料でレシピを見たり投稿することができるが、人気レシピのランキングは有料会員にならないと見ることができない。

広告についても、ユーザーにメリットのある広告を選んで載せるほか、食品メーカーとタイアップして、レシピ・コンテストを開催するなど、料理の楽しさを追求することを、常に追求しているのが成功の秘訣といえる。

無料会員と有料会員との差別化、使いやすさ・参加しやすさのの追求、ユーザーにとっても役に立つ・楽しめる広告を選択的に入れる、といった点は、他のCGMサイトにも参考になることだろう。

[目次]
はじめに

序章 女性なら知っている。料理サイト「クックパッド」
 数百万人の女性が、週に一度は訪れている
 どうして五〇万件ものレシピが、投稿されているのか
 たくさん使いたい材料で検索する人も多い
 二〇万人が広告主の登場を待っている「レシピコンテスト」
 料理が楽しくなることをやる。それ以外はやらない

第一章 就職を選ばなかった男が、辿りついた目標
 学生では、すべてがイベントになってしまう悔しさ
 お金の保証を会社に預けてしまう、という恐怖
 今の世の中の延長線上に、スカッとした笑顔が出てくるか
 アメリカから日本に戻って知った、日本の食の豊かさ
 ユーザーが″増えない努力″をしていた創業期

第二章 クックパッドは、なぜ「女心」をつかんだのか
 情報の送り手側はユーザーに甘え、倣慢になっている
 まずはユーザーを正しく理解する、ことから始める
 ただ入力するだけではダメ。楽しく入力できないと
 説明が必要なサービスは、レベルが低い
 「肉じゃが」だけで、約二〇〇〇種類もある意味
 小さなほころびを絶対に放置しない。だから、安心できる
 十三文字を超えると可読性が下がり、二四文字を超えるとさらに下がる

第三章 細やかなサービスを実現するのは、テクノロジー
 テクノロジーは道具。重要なのは、それで何をするか
 ユーザーの期待を上回る動線を用意できた理由
 ユーザーの印刷率は、ほしい情報が手に入ったかのバロメーター
 PDCAを圧倒的にしやすくするのが「Ruby」だった
 日本の製品には説明が多い。これではグローバルで戦えない

第四章 広告を見た人から「ありがとう」といわれるサイト
 マスメディア的なネット広告で果たしていいのか
 成功や失敗は、自分の意志でコントロール出来る
 ユーザー一〇〇万人。でも広告は安易に入れなかった
 必要なのは、どんな広告が成立し得るか、事例をたくさん作ること 
 広告主にもユーザーにも魅力。レシピコンテスト
 定番ブランド商品の需要底上げ。典型的な成功例「焼肉のたれ」
 意外な商品が大ヒットした「ロングテール商品の再評価」
 なかなか売れなかった商品に、ユーザーから「ありがとう」の声
 メーカー側が思ってもみなかった商品の使い方が生まれた
 日々の食卓決定をしているユーザーに「新商品の垂直立ち上げ」
 飲料メーカーがクックパッドを使ってプロモーション
 広告主自らが自信のレシピを提案する「スポンサードキッチン」
 二週間でプラス二〇万世帯の食卓に、お酢を使った料理が並んだ
 料理が楽しくなるのなら、どんな広告主でも活用できる
 モノを買うには、理由が必要な時代。動機付けができているか
 お金を払ってくれる顧客だけを見ていると、事業を見誤る
 検索データベース「たべみる」から見える、本当のユーザーの気持ち
 エリアごとの週次データに出てくる「旬」ではなく「欲求」

第五章 六〇〇万人を呼び込む「経営」と「マネジメント」
 オフィス環境に徹底的にこだわるのは、それこそ経営力だから
 一緒に仕事をする外注も、プロかどうかを厳しく選定する
 新オフィスへの引っ越しパーティに、佐野が待ったをかけた
 残業するよりしないはうがトクをする「ノー残業手当」
 インターネットは、まだ社会で一パーセント程度しか生かされていない

おわりに

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2009.05.15

▽名古屋の三大苦労人

最近、名古屋の苦労人たちの本を読みました。

それは、40歳を超えてなお現役を続ける中日ドラゴンズの200勝投手・山本昌、放送禁止歌「金太の大冒険」で全国的にも知られている・つぼイノリオ、名古屋でアクセサリー・ショップを経営していたものの一時期は十億円を超える借金を抱えて自殺まで考えたというタレントの宮地佑紀生。

各人ともに、断片的な話は聞いたことがあるのですが、それが実際はどういうことだったのかがわかって、なかなか興味深く読めました。

▼山本昌『133キロ怪速球』(ベースボールマガジン社新書)


▼つぼイノリオ『つボイ正伝 「金太の大冒険」の大冒険』(扶桑社)


▼宮地佑紀生『宮地佑紀生の天国と地獄―名古屋で30年間しゃべり続けた男が初めて明かす』(クリタ舎)

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2009.05.09

▽医療事故をめぐるネット言説

鳥集徹『ネットで暴走する医師たち』(WAVE出版)

以前、『ウェブはバカと暇人のもの』という本を紹介しましが、
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/04/post-13ba.html

本書は、バカでも暇人でもない「お医者さん」とネットの関わり、特に「医療事故」をめぐるネット言説を中心に据えて、現状をレポートしたものです。

[目次]
はじめに――「ネット医師」と呼ばれる人々

第1章 カルテを流出させたのはだれか―奈良県立大淀病院事件
 侮辱罪で捜査された医師 
 しゃべり続ける<鬼瓦> 
 当事者が語る事実 
 医師擁護に傾くスレッド 
 マスコミに対する不信感 
 内部情報の流出 
 ネット医師たちの批判の根拠 
 2ちゃんねるで晒し者になった記者 
 だれがカルテを流出させたのか 
 謝罪にきた「真犯人」

第2章 追い詰められる遺族―杏林大学割り箸事件
 『医療の限界』と割り箸事件 
 コピペされる事実無根の情報 
 裁判で議論された親の責任 
 小松秀樹氏とのやり取り 
 「被害者」と名乗ってはいけないのか

第3章 真実を求める遺族は「モンスター」か―福島県立大野病院事件
 「2ちゃんで叩きまくる」 
 m3から始まった抗議運動 
 事故は「不可避」だったか 
 飛び交った噂 
 バッシングされた医師 
 生かされなかった助言 
 反省点はなかったか 
 渡辺さんが出した要望書

第4章 「テロリスト」と呼ばれた被害者
 医師を侮辱する発言 
 「医療崩壊」プロバガンダ 
 ウィキペディアをいじくり回す 
 医師ブログへの波及 
 見る目を歪ませる色眼鏡

第5章 ネット医師たちはなぜ暴走するのか
 全国医師連盟とネット医師 
 「自称被害者」というレッテル 
 ブログに隠された素顔 
 なぜ、誹謗中傷するのか 
 コミュニケーション不全症候群 
 「医療の信頼」の崩壊 
 ネット公論の危険性 
 我々は敵ではなく友人なのだ

あとがき

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2009.05.08

▽ホンダF1失敗の研究

川喜田研『さらば、ホンダF1 ~最強軍団はなぜ自壊したのか?~』(集英社)

《2008年12月5日、強い南風が吹き荒れる青山一丁目の交差点。「F1撤退」の記者会見を終え、ホンダ本社ビルを出た僕のアタマには、いくつかの異なる感情が複雑な形をしながら漂っていた。あまりにも呆気なく、そしてあまりにも情けない「第3期ホンダF1活動」の幕切れに、ドンヨリと曇った暗い空が、なんともお似合いな日だった。
 ホンダを出てから30分ほど地下街の喫茶店で集英社の東田君と簡単な打ち合わせを済ませ、再び地上に出てみると、外は土砂降りの雨。
 「ホラ、本田宗一郎が泣いてますよ……」》(p.3)
http://books.shueisha.co.jp/tameshiyomi/978-4-08-780521-5.html

ホンダがF1に三度目の挑戦を開始したのは2000年のこと。しかし、この第三期は、栄光の第二期と比べれば惨敗といっていい状態のまま、2008年末に撤退が宣言された。直接の引き金は、リーマン・ショックに端を発する世界的な金融危機と、自動車産業を直撃した不況であるのは言うまでもないことだが、たとえそれが無かったとしても、ホンダの第三期は、やはり駄目だったのだろうと本書を読んで思わされた。やや扇情的なタイトルのため、いわゆる「水に落ちた犬を叩け」的な、こきおろし本のような印象を受けるが、著者は、ホンダ第三期を取材するためにフリーランスになったジャーナリストで、表の報道ではわからなかったホンダ惨敗の裏事情を解き明かしていく。

2004年6月20日には、BARホンダのドライバー佐藤琢磨が、アメリカGPで3位となり、日本人ドライバーとしては鈴木亜久里以来の十四年ぶりの表彰台となった。

下記の記事は、その直後の26日にイギリスで開催されたグッドウッド・フェスティバルで記者会見をやったときのもの。いまから思えば、この時が、ホンダにとっても、佐藤琢磨にとっても、日本のF1ファンとっても、ごく短い絶頂の時だったのだろう。

[参考]僕がイギリスに行ったわけ――佐藤琢磨インタビュー
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/news/2004/06/post-a63f.html

そして本書を読むと、本田宗一郎が体現していた日本人のチャレンジ・スピリッツは、いったいどこに行ってしまったのだろうかとも思う。

《ホンダが不幸だったのは、かつて自らが作り上げた「レースはホンダのDNA」というイメージによって、誰もが「ホンダらしく」振る舞わなければならないという、半ば強迫観念にも似た空気が社内に存在していたことだろう。そのため、多くの人が無意識に「レースの好きなホンダ」を演じていた。中には「自分はレース好き」と信じ切っているのだが、実体は全然そうではない人もいた。僕はそれを「バンカラもどき」と呼んでいたが、ホンダが築き上げた過去の栄光による過信を背に「威勢のいい言葉」を発し続けながら、現実には空回りしているように見えるその姿が、傍目には悲しげにすら見えた。》(pp.238-239)

[目次]
第1章 迷走の始まり
 ホンダと僕の最初の一歩
 ジョン・サーティースが語るホンダとの絆 ほか
第2章 分裂と挫折
 「ビコーズ・ウィー・ラブ・レーシング」
 ポラックとヴィルヌーヴの出会い ほか
第3章 天国から地獄へ
 琢磨、初表彰台!
 頂点まであと一歩 ほか
第4章 ホンダF1はなぜ自壊したのか?
 第3期ホンダF1はサラリーマン集団
 そもそもホンダの実力では勝てなかった ほか

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2009.05.07

▽岡田斗司夫が語るネット社会の欠陥

唐沢俊一x岡田斗司夫『オタク論2!』(創出版)

本書は、月刊『創』誌上において連載されていた唐沢俊一と岡田斗司夫の対談をまとめたもの。岡田斗司夫といえば2007年に『いつまでもデブと思うなよ』(新潮新書)において、レコーディング・ダイエットを提唱し、それにちなんだ携帯電話サービス「いいめもダイエット」を巡っては、ネット内でもちょっとした騒動になった。

[参考]アイデアに著作権なし……それでも「いいめもダイエット」サービス停止
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/0710/16/news008.html

岡田は、この記事で引用されている抗議文については、《あきらかに僕の文体と違う》と否定し、《「アイデアに著作権がある」なんて本気で思っているわけがない》と主張する。そして、誤解と曲解の連鎖をもとに批判された体験から、「ネット社会の欠陥」を次のように指摘する。

《ネットの中にある情報というのは、映画を観た人とか店に行った人じゃなくて、「『店に行った人の記事』を読んだ人」とか「『店に行った人の記事を読んだ感想の記事』を読んだ人」とかいうふうに、どんどん「解釈」のほうが増えているから、その「解釈」のほうをみんな「正解」だと思う。おまけに、それがもし「不正解」だった場合、「情報元の公式サイトがそれを訂正しないのはケシカラン」という話になっちゃう。つまり客観的に見ると「訂正責任は被害者の側にある」ということにされちゃっている。これは人間性が低いからとか、頭が悪いからではなく「ネット社会が持つ本質的な欠陥」なんですよ。》(p.119)

[目次]
第1部 オタク論  DEATH
コミケで儲ける人たち
男のホームレス化、女の腐女子化
鉄オタブームは来るか
スピリチュアルを信じるか?
オタク論壇の老害化 !?

第2部 オタク論 REBIRTH
リアルでもキャラは重要だ!
ノスタルジーってなんなのさ
本を捨てたら見えてくる世界
ババンババンバンバン♪ネットするなよ!
キャラ話ふたたび
ぼくのプロデュース論、私のプロデュース論
プライベートの充実ってなんなのさ
日本貴族奴隷党に二票!
はぐれもののススメ

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2009.04.30

▽世襲問題を考えるための基本テキスト

神一行『閨閥 特権階級の盛衰の系譜[改訂新版]』(角川文庫)

本書は、政治家や企業経営者などエスタブリッシュメントの姻戚関係、つまり「閨閥」に焦点をあてたもので、このジャンルの入門書としては、よく出来ている。もともとは1989年に毎日新聞社から発行されたもので(1993年には講談社文庫より発行)、それを元に加筆・訂正し、改訂新版として2002年に角川文庫より発行されている。

この改訂新版で、内容的に追加されたのは、小泉純一郎の系譜、そして、天皇家に嫁いだ小和田家、川嶋家の系譜である。

2001年に内閣総理大臣となった小泉純一郎は、政治家としてみれば三代目の世襲政治家ではあるが、閨閥という観点からみれば、その家系において他の有力者との姻戚関係は、ほとんど無いといっていい。小泉以後に首相となった、安倍、福田、麻生の華々しい家系と比べると、その違いは際だっている。

また、たたき上げの政治家の代表格である田中角栄の家系図も本書には掲載されているが、思わず笑ってしまうほどに、有力家系との姻戚関係はみられない。これは、現在の民主党党首、小沢一郎も同様で、第9章に描かれているように自民党時代は、竹下登、金丸信の家族と姻戚関係があったが、自民党離脱後の小沢一郎には、こうした閨閥の影響力は、ほとんど失われてしまったことがわかる。

[目次]
プロローグ――日本は特権閨閥によって支配されている

第1部 政界編
第1章 吉田家―保守本流の始祖
第2章 鳩山家―四代にわたる政界の超エリート家系
第3章 岸・佐藤家―兄弟首相を生んだ長州人脈の最高峰
第4章 池田家―災いを福となし這い上がった苦労人
第5章 田中家―政界を震撼させる父娘の恩讐
第6章 福田家、三木家―学歴エリートと傍系派閥の栄光と悲哀
第7章 鈴木家、大平家―閏閥に連なり名門入りした庶民派
第8章 中曽根家―名血との結合で頂点を極めた寝業師
第9章 竹下・金丸家―政界を牛耳った固い血の結束
第10章 宮沢家―高級官僚・政治家を輩出する華麗なる一族
第11章 安倍家―良血を誇る政界のサラブレット
第12章 小泉家―三代目にして首相を輩出した政治家系

第2部 財界編
第1章 豊田家―〝世界のトヨタ″になるまでの愛憎のドラマ
第2章 松下家―〝経営の神様″が一族のために燃やした執念
第3章 上原家―庶民夫婦が築き上げた日本有数の大富豪一家
第4章 鹿島家―建設業界に君臨した名門閏閥の実力
第5章 弘世家―ニッセイ王国を育て上げた創設家
第6章 堤家―急成長を成し遂げた西武グループの総帥
第7章 安西家―皇室にまで繋がる日本最大の閏閥
第8章 三井家、岩崎家、住友家―旧財閥のその後
第9章 正田家―民間初の皇太子妃を生んだ「新華族」
第10章 小和田家、川嶋家―対照的な学者一家と官僚一家

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2009.04.28

▽梅田望夫が見た初代永世竜王決定戦

梅田望夫『シリコンバレーから将棋を観る』(中央公論社)

「指さない将棋ファン」を自認する著者が、2008年10月から開催された将棋の竜王戦を軸に、羽生善治やそのライバル達の証言などを著者なりの視点でまとめたもの。

私も「指さない将棋ファン」でして、この竜王戦は主にネット中継で観戦していました。この竜王戦は、単なるタイトル戦ではなく、渡辺明竜王、羽生善治挑戦者の勝った方が、初代永世竜王の資格を得るという、将棋界の歴史においても重要な棋戦でした。

そしてパリで行われた第一戦。渡辺竜王は得意の居飛車穴熊という堅い陣形を組み、余裕綽々で軽くジャブを放ったところ、羽生挑戦者からがつんがつんとアッパーカットを食らってあっという間に、負かされてしましました。陣形を組み合った時点では、素人目には、渡辺竜王の方が堅く見えたのですが、羽生挑戦者が、その堅陣を次々と引っぺがしていく様は圧巻というほかありませんでした。本書は、そのパリでの第一戦が中心となっています。

その後、羽生挑戦者が三連勝したものの、四戦目の終盤に、渡辺竜王が逆転し、結局、初代永世竜王の資格は、渡辺竜王のものとなります。いろいろな意味で、将棋界の歴史に残る対決だったといえます。

残念なことに本書には、七戦すべての棋譜が掲載されいませんので、竜王戦全体の様子がわからないので、『第21期 竜王決定七番勝負』(読売新聞社)を脇に置いて、読み進めた方がわかりやすいかもしれませんね。

梅田望夫『シリコンバレーから将棋を見る』(中央公論社)
[目次]
はじめに――「指さない将棋ファン」宣言
第一章 羽生善治と「変わりゆく現代将棋」
 変わりゆく現代将棋
 予定調和を廃す緊張感
 将棋の世界に革命を起こす
 盤上の自由
 イノベーションを封じる村社会的言説
 将棋の未来の創造
 オールラウンドプレイヤー思想
 知のオープン化と勝つことの両立
 高速道路とその先の大渋滞
 将棋界は社会現象を先取りした実験場
 ビジョナリー・羽生善治
 二〇〇八年、ベストを尽くす

第二章 佐藤康光の孤高の脳――棋聖戦観戦記

第三章 将棋を観る楽しみ
 ネットの優位を活かす人体実験
 修業ですから!
 「将棋を指す」と「将棋を観る」
 将棋を語る豊潤な言葉を
 一局の将棋のとてつもなく深い世界
 ネットと将棋普及の接点/出でよ! 平成の金子金五郎
 金子の啓蒙精神
 「現代将棋にも金子先生が必要です」

第四章 棋士の魅力――深浦康市の社会性
 「喧嘩したら勝つと思うよ」
 サンフランシスコの棋士たち
 深浦康市の郷里・佐世保への思い
 安易な結論付けを拒む「気」を発する対局者
 現代将棋を牽引する同志
 二つのテーブル
 人生の大きな大きな勝負

第五章 パリで生まれた芸術――竜王戦観戦記

第六章 機会の窓を活かした渡辺明
 終局後、パリのカフェで
 「立て直せる時間があるかもしれない」
 羽生王座への祝辞、十七年という長さ
 「勝負の鬼」が選んだ急戦矢倉
 若き竜王に大きく開いた「機会の窓」
 初代永世竜王への祝辞、将棋グローバル化元年
 少しでも進歩しようとすること

第七章 対談――羽生善治×梅田望夫
 リアルタイム観戦記と「観る楽しみ」のゆくえ
 揺れ動き続ける局面と、均衡の美
 羅針盤のきかない現代将棋の世界
 対局者同士が考えていること
 雲を掴むように、答えのない問題を考え続ける
 人は、人にこそ、魅せられる
 けものみちの時代、「野性」で価値を探していく
 「相手の悪手に嫌な顔をする」真意は?
 盤上で、すべてを共有できるという特性
 進化のプロセスを解析する研究者たち
 コンピュータとともに未来の将棋を考える
 指す者と、観る者の、これから

あとがき――「もっとすごいもの」を

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2009.04.25

▽アメーバニュース編集者が語るネットのバカたち

中川淳一郎『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)

面白い本です。梅田望夫の『ウェブ進化論』に代表されるようなウェブの希望的な面を強調する論調に対し、アメーバニュースの編集責任者でもある著者は、自身の体験からウェブの持つ実態、つまり駄目な部分をつまびらかにしていきます。

《梅田氏は、ネットのこちら側(ハード上で情報処理を行う主体:IBM、マイクロソフトに象徴される古い勢力)と「あちら側」(ネット上で情報処理 を行う主体:グーグル、アマゾンに象徴される新しい勢力で、コンピューター・サイエンス分野のトップクラスの人々がその才能を活かす場所)という概念を説 き、「あちら側」の優れた点について言及した。
 それに対し、私はネットの使い方・発信情報について、「頭の良い人」 「普通の人」「バカ」に分けて考えたい。梅田氏の話は「頭の良い人」 にまつわる話であり、私は本書で 「普通の人」 「バカ」 にまつわる話をする。》(pp.18-19)

本書で語られる内容については、上記のような文章やタイトルからも伺えると思いますが、著者の言いたいことは、「ネットにあまり期待するな」ということに尽きると言えます。ネットの世界の現実が理解できる、とても面白い本ですので、お奨めしますよ。

[目次]
第1章 ネットのヘビーユーザーは、やっぱり「暇人」
 品行方正で怒りっぽいネット住民
 ネット界のセレブ「オナホ王子」
第2章 現場で学んだ「ネットユーザーとのつきあい方」
 もしもナンシー関がブログをやっていたら…
 「堂本剛にお詫びしてください」
第3章 ネットで流行るのは結局「テレビネタ」
 テレビの時代は本当に終わったのか?
 ブログでもテレビネタは大人気
第4章 企業はネットに期待しすぎるな
 企業がネットでうまくやるための5箇条
 ブロガーイベントに参加する人はロイヤルカスタマーか?
第5章 ネットはあなたの人生をなにも変えない

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2009.04.23

▽アマゾンに対するアンビバレントな気持ち

横田増生『アマゾン・ドット・コムの光と影』情報センター出版局)


本書は、流通関係の業界紙で記者をしていた著者が、日本のアマゾンに書籍のピッキングを行うアルバイトとして潜入し、その体験を中心にまとめたものである。2005年4月の出版ということもあって、アマゾンの決算や経営方針に関する考察はデータがやや古くなっているが、潜入ルポの部分は、とても興味深く読むことができる。

特に、アマゾンの利用者の世帯年収は500万円を超えているのに対して、アマゾンで働くアルバイトの年収は200万円そこそこ、という現実を前に、著者はアマゾンに対して次のようなアンビバレントな心情を吐露している。

《私の心のなかには、職場としてこの上ないほどの嫌悪感を抱きながらも、一方利用者としてはその便利さゆえにアマゾンに惹きつけられていくという相反する気持ちが奇妙に同居していく。
 そしていつもその気持ちに、居心地の悪さを感じていた。》

[目次]
プロローグ 密かに急成長するアマゾンジャパン
第1章 アマゾン・ドット・コム上陸前夜
第2章 アマゾン心臓部・物流センターの実態
第3章 空虚な職場に集う人々
第4章 アマゾンの秘密主義を恐れる出版業界
第5章 日本で躍進した本当の理由
第6章 その強さの裏側にある底辺
第7章 アマゾンの目指す「完成形」
エピローグ アマゾン化する社会の行方

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2009.04.19

▽羽生名人が語る「天才の頭脳」

『先を読む頭脳』(新潮社)

『先を読む頭脳』(新潮社)は2006年に出版された本で、羽生名人が自分の将棋に対する考えを語った章の間に、認知科学やコンピュータの専門家が解説した章が挿入されています。

以前、羽生名人の語りおろしと言われながらも、ゴーストライターが勝手に、いろいろと書き加えた本がありましたが、それよりは正確なものになっていると思います。羽生名人の言葉で、印象に残っている部分は以下の三点です。

《私は、パソコンの画面でマウスをクリックして動かすのと、実際の盤上で駒を動かすのとでは、蓄積される記憶の質が違うように感じています。その理 由は、一つにはパソコンの画面で動かすとどうしても早く手を進めていってしまうので、結果的に長く覚えていられないという点にあると思います。
 一方、盤に駒を並べて一手一手ゆっくりと動かしていくと、その過程を通して頭の中で手を整理しながら記憶していけるのです。》(pp.50-51)

《時間に関して言うと、私は終盤ギリギリの段階で「残り二分」になっていることがよくあります。「残り一分」 ではなく、二分にしておくのです。
 それは私なりの危機管理法で、相手に予想外の手を指されたときに、その一分があるかないかで全然違ってきます。》(p.93)

《一方で、最近は将棋から離れて、できるだけ将棋のことは考えない日も作るようにしています。四六時中将棋のことを考えてオンとオフの区別がなくなると、結果的にプラスに働かないことが経験上わかってきました。》(p.146)

また羽生名人が、さまざまな有名棋士の棋風について語っている部分があるのですが、すでに引退している吉田利勝八段という、あまり有名ではない棋士の名もあげている点は、ちょっと興味深いですね。

[目次]
1 「先を読む頭脳」を育む
2 効果のあがる勉強法
3 先を読むための思考法
4 勝利を導く発想
5 ゲームとしての将棋とコンピュータ

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2009.04.18

▽ペヨトル工房が出版をやめたわけ

今野裕一『ペヨトル興亡史―ボクが出版をやめたわけ』(冬弓舎)

本書は、あるところで見かけたので手にとって、奥付を見ると2001年とあって、少し驚きました。ペヨトル工房といえば、超マニアックな本を意地で 出しているような出版社というイメージが強かったので、逆に、出版不況にも強いし、場合によってはネットへの移行もうまくやれるのではないかと思っていた のですが、それが9年前に解散していたとは……。

今後出版業だけでなく、すべてのメディア産業は、複製ではなく実物を見せる方向へと移行するのでしょうか? でも、それって興業の世界に足を突っ込むことになるわけで、いろいろと苦労もあるのではないかと思います。

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2009.04.17

▽フリーペーパーの発展の日本と海外の違い

稲垣 太郎『フリーペーパーの衝撃』(光文社新書)


本書はフリーペーパーの現状をレポートしたもので、日本だけでなく海外の情報も豊富である。日本でフリーペーパーといえば「R25」を始めとする無 料週刊誌スタイルのフリーペーパーが多いのに対し、海外ではスウェーデン発祥「メトロ」に代表される日刊無料紙スタイルのフリーペーパーが定着している。

日本でも、2002年に日刊無料紙として「HEADLINE TODAY」が創刊されたが、わずか4カ月で週刊へと後退してしまった。この要因としては、日本の通信社からの記事配信を受けられずロイターやブルームバーグなどの外電が記事の中心になってしまったこと、大手広告代理店の協力がえられなかったこと、キオスクで販売されている有料紙への配慮から地下鉄構内 にラックを置かせてもらえなかったこと、印刷や用紙の調達にも協力がえられなかったこと、ストレート・ニュース中心の紙面が支持されなかったこと、などが上げられる。同紙は週刊誌化し、記事も柔らかいニュースを中心にしてからは軌道に乗りつつあるようだが、日本では、既存の新聞ビジネスに切り込んでいくには、かなり大変なことであることが伺える。

[目次]

はじめに
第1章 異業種出身の成功者たち
  1 フリーペーパーとは?
  2 創業者3人の軌跡
第2章 フリーマガジン大国・日本
  1 無料誌ブームの主役リクルート
  2 趣味性・嗜好性の分野へ拡大
第3章 問われる広告効果
  1 ターゲット媒体として注目
  2 信頼性を獲得する道は?
  3 まとまらない業界組織
  4 潜在ニーズを掘り起こせ
第4章 海外に浸透する日刊無料紙
  1 スウェーデンから全世界に広がる『メトロ』
  2 ライバル無料紙も続々
  3 無料紙が伸びる土壌
  4 紙面の質をめぐる競争で二紙が限界?
  5 広告だけで新聞ジャーナリズムは成り立つか?
第5章 日本に『メトロ』が誕生する日
  1 『ヘッドライン・トゥデイ』の挑戦と挫折
  2 首都圏に誕生する可能性
第6章 誰でも出せる「紙のブログ」
  1 高校生たちが挑戦したフリーペーパー発行
  2 大学キャンパスは大きな市場
第7章 有料と無料の違いって何だ? 吉良俊彦氏との対談
  おわりに

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▽フリーペーパーR25の創刊編集長が語るR25世代

藤井大輔『「R25」のつくりかた』 (日経プレミアシリーズ)


著者は、フリーペーパー『R25』の創刊に携わり、その苦労話を通して、読者であるR25世代が何を求めているか、について語っている。

「新聞を読まない」と言われるR25世代だが、アンケートやインタビューをすると、ほとんどが「読んでいる」と答えることに著者は気づく。そして、 いろいろな工夫をこらしたインタビューにより、R25世代は、日経新聞を読みたいと思いながらも時間がない、難しいといった理由から読めないでいるという 実態にたどりつく。また、R25世代は、インターネットによってもたらされる情報過多に疲れていることにも気づく。ここから、R25の「ニュースをコンパ クトにわかりやすく解説する」というコンセプトが誕生する。

さらに、面白い情報よりも役に立つ情報、一ヶ月前に話題になったニュースを取り上げても面白く読める、まじめなニュース(政治経済)・興味を引く ニュース(ITやスポーツ)・雑学の比率は2:6:2くらい、表紙は女の子でない方がいい、同世代ではなく年上の成功者の苦労話を読みたい、などとR25 世代の関心を絞り込んでいく……と、このあたりまでは痛快なサクセス・ストーリー風に読めるのですが、広告を取ったり、スポンサーのタイアップ記事などに 話題がおよぶと、ちと、普通の雑誌の苦労話みたいになってしまって新鮮味はないかも。

[目次]
第1章 少人数の組織で「業界常識」に立ち向かう
第2章 M1層はホンネを語ってくれない
第3章 M1層に合わせた記事づくり&配布作戦
第4章 世の中のちょっとだけ先を行く発想術
第5章 M1世代とM1商材を結びつける
第6章 さらにビジネスを広げるために

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▽クーポン・マガジンの誕生秘話

平尾勇司『Hot Pepper ミラクル・ストーリー』(東洋経済新報社)

"クーポン・マガジン"という新しいジャンルのフリー・ペーパーであるHot Pepprを事業として成功させたリクルート社員の体験記。

Hot Pepperの前身は、「サンロクマル」という情報誌だったが、地域ごとにばらばらに運営されていたため赤字が続いていた。著者は、唯一成功していた北海道・札幌の「サンロクマル」を分析して、札幌の「サンロクマル」の成功の要因を指摘する。<1>飲食店、特に居酒屋の広告が多い。<2>営業商圏が狭い。<3>クーポン掲載必須。<4>働く女性の動線にそっている、などで、これらの方針が全国のHot Pepprへ受け継がれた。

また、飲食店の割引クーポンをつけることに関しては、次のように説明している。

《クーポンは値下げではない。売れない→定価を下げる→利益が下がる→減価・経費を下げる→人件費をを下げる→所得が下がる→物が買えない→物が売れないというデフレスパイラルの最大の間違いは「定価を下げた」ところにある。》(pp.42-43)

《クーポンは「定価はそのまま」で、時間を限って、ユーザー対象を限って、商品を限って、個数を限って行う賢い価格政策だ。いつもはこんな価格のサービスを今回は特別に……お得感を増幅させる。効果抜群の価格コントロールである。》(p.43)

さらに、製作体制は、ウェブ入稿システムで日本のどこからでも原稿を入れられる仕組みを作り、日本全国に印刷工場を配置することでローコストを実現している。

以上のようなことが始めの50ページくらいに書かれていて、あとは、プロジェクトX風の営業マン心得とか、組織運営のノウハウなんかが紹介されています。

いま雑誌不況とか言われて雑誌の休刊が続いていますが、紙かウェブかという対立はさておき、紙媒体に限って言えば、既存の出版社の持ってる中央集権的な生産体制は時代にあわなくなりつつあり、ローカルに根ざした地域分散的な広告営業や生産体制が活路なるのでしょう。

[目次]
第1章 『ホットペッパー』の本当のすごさ
第2章 『ホットペッパー』とはいったい何なのか?
第3章 失敗が教えてくれた11の警告
第4章 事業立ち上げの仕組みづくり
第5章 急成長のキッカケとそのしかけ
第6章 顧客接点づくりの仕組み化
第7章 セオリーに反する営業の仕組みづくり
第8章 マネジメント・リーダーの育成

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2009.04.16

▽司法記者が見た特捜部の崩壊

石塚健司『「特捜」崩壊 墜ちた最強捜査機関』(講談社)

最近なにかと話題の「特捜」、つまり東京地検特捜部の捜査が「崩壊」しているのではないか? という問題提起をしている。著者は、産経新聞の記者で、司法記者クラブのキャップや、社会部次長などを歴任している。

著者は、「特捜崩壊」の事例として、著者が関わった二つの事件を挙げている。一つ目は、1998年の大蔵キャリア官僚の過剰接待事件。二つ目は、2008年の防衛省汚職事件の″防衛利権のフィクサー″として、団体役員が脱税で逮捕された事件。この事件では、著者は、逮捕された容疑者の友人として、事件そのものにリアル・タイムで接していた。

著者のいう「特捜崩壊」とは、つまり特捜の事件の見立てに誤りがあり、その原因は、検察の人事のあり方にある、としている。

なお、1998年の大蔵キャリア官僚の過剰接待事件の過剰接待が無理筋であったことは、朝日新聞記者の村山治の『特捜検察 VS. 金融権力』や『市場検察』でも触れられている。



2008年の防衛省汚職事件の方は、容疑者自ら反論の書を上梓している。

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▽2001年の時点ですでに指摘されていた特捜検察の闇

魚住昭『特捜検察の闇』(文藝春秋)

ダミー会社認定のあやふやさ、検察側の証人が実は横領していた、被告の発言のこじつけ的解釈、ずさんな国策捜査による冤罪の可能性……。

これ、最近の事件ではなくて、ジャーナリスト魚住昭が2001年に上梓した『特捜検察の闇』において、人権派弁護士・安田好弘の債権回収妨害事件の裁判のくだりで、明らかにしたことです。この裁判、一審では被告無罪、二審では罰金刑がくだり、現在は最高裁の判決待ちという状態ですが、昨今の特捜批判の世論の中では、検察にとって厳しい判決がでる可能性も否定できません。

著者のあとがきが印象的です。

《正直言って、私はつい最近まで自分がこんな本を書くことになろうとは夢にも思っていなかった。四年前の拙著『特捜検察』(岩波新書)を読まれた方ならおわかりになるだろうが、私はリクルート事件などで政官界の腐敗構造をえぐり出した東京地検特捜部を高く評価していたし、そこで働く検事や事務官たちが好きだった。
 その気持ちは今もまったく変わらない。だが、時が流れ、人も移り変わって検察はかつての検察ではなくなった。》


魚住昭『特捜検察の闇』(文藝春秋)
[目次]
第1章 許永中の盟友
第2章 大阪特捜に田中森一あり
第3章 闇世界の守護神
第4章 石橋産業事件
第5章 夢の終わり―カブトデコム事件
第6章 中坊公平の「正義」
第7章 安田弁護士の逮捕
第8章 法廷の逆転劇
第9章 国策捜査
終章 変容する司法

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2009.04.07

▽11人のアルファ・ブロガーが語るブログ術

『アルファブロガー 11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから』(翔泳社)


ちょっと古い本なのですが……。2005年10月20日発行ということで、本書は、ブログが一般人にも広まりつつある中で出版されたものです。「ア ルファブロガー」という言葉は、いまいち定着しなかったみたいですが、アクセス数の多い人気ブロガー十一人に、それぞれのブログ運営に対する心構えのよう なものをインタビュー形式で聞いているものです。

ただ、本書に登場するブロガーは、一部を除いて、いまでも有名ブロガーとして既存メディアで取り上げられるような方ばかりで、話している内容も、3 年以上のギャップを感じさせ無いようなことばかりです。結局、一般の人にブログが広まっても、あまり事態はかわらなかったのかもしれませんね。

[目次]
1 「人気ブログ」の運営スタイル
 ネタフル コグレマサト氏
 百式 田口元氏
 極東ブログ finalvent氏
2 「プロフェッショナル」のブログ活用術
 Ad Innovator 織田浩一氏
 R30 マーケティング社会時評 R30氏
 isologue 磯崎哲也氏
 On Off and Beyond 渡辺千賀氏
3 テクノロジストとインターネットの未来
 NDO Weblog 伊藤直也氏
 Passion For The Future 橋本大也氏
 切込隊長BLOG 山本一郎氏
 英語で読むITトレンド 梅田望夫氏

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2009.04.06

▽誰でもメディアの時代?

小林弘人『新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に』(バジリコ)


著者は『ワイアード日本版』、『サイゾー』の元編集長である小林弘人で、ギズモード日本版などのニュース・サイトも運営している。本書は、「日経ビ ジネスオンライン」で連載していた「誰でもメディア宣言」をまとめたもの。「誰でもメディア」というキーワードを軸に、ウェブやブログを使った新しいメ ディア・ビジネスの構築を、既存の出版社の編集者だけでなく、個人にも呼びかけている。

本書のメッセージは、個人でも、すぐに新しいメディア・ビジネスを立ち上げられるという触れ込みで、主にアメリカの事例を中心に、数多く紹介されています。それぞれのビジネスの立ち上げ方、発展についての情報は興味深く読むことができます。

しかし、いつも、この手の本を読んで思うのは、さすがに個人のレベルだと、訴訟やトラブルに巻き込まれた場合のデメリットが大きすぎて、それに、どう対処すればいいのかが明確ではない点ですよね。

小林弘人『新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に』(バジリコ)
[目次]
あなたの知っている「出版」は21世紀の「出版」を指さない
「注目」資本主義は企業広報を変えた
ストーリーの提供で価値を創出する
デジタル化で消えてゆくのは雑誌・書籍・新聞のどれ?
雑誌の本質とは何か?
無人メディアの台頭と新しい編集の役割
既存メディアの進化を奪う
名もなき個人がメディアの成功者になるには?(その1)—マジックミドルがカギを握る
名もなき個人がメディアの成功者になるには?(その2)—人はコンセプトにお金を投じる
メディアが変わり、情報の届け方も変わった
〔ほか〕

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2009.04.05

▽現代のクリエイターは過去のコンテンツと競争しなければならない

岡本一郎『グーグルに勝つ広告モデル』(光文社新書)


コンテンツや情報がデジタル化された時代に、マス・メディアや広告産業は、どのように対応しなければならないかについて述べている。この手の本にあ りがちな、断定調の未来予測はあまり無く、現在の状況から言えることが明示されている一方で、これから先どうなるかわからないことについては「わからな い」とはっきり言っている点は好感が持てる。

特に、最初の章に重要な分析が出ていたので簡単に紹介すると、

《テレビも含めたメディア/コンテンツ産業が、他の産業と大きく異なる点の一つとして、「過去のストックが競合になる」 という点が挙げられま す。……ストックは、時間の経過にともない、いずれ無限大まで増加します。一方、需要はその瞬間に存在する市場に限定されるため、受給のバランスは時間が たつにしたがって、ストックが無限に大きい方向に振れ続けていく、というのがコンテンツ産業の持っている宿命的な流れです。》(pp.16-17)

これまで、増大する過去のコンテンツ資産が、新しいコンテンツの競合としてそれほど恐ろしいものでは無かった理由として、著者は、過去のコンテンツ 資産の量が、あまりにも膨大であるために、探索コストが高く、競合として怖くなかったことをあげます。ところが、インターネットの普及によって、モノと情 報が分離して扱えるようになり、そのことによって膨大な量のラインナップを探索するコストが、「劇的に下がった」と著者は指摘します。

では、グーグルのような、何も新しいコンテンツを作っていない企業の時価総額が10兆円を超えている、という事実をどう考えるべきか? と問いかけます。

《端的にいえば、社会全体が、膨大になりすぎたコンテンツや情報を整理することに対して、高い付加価値を見出している、ということなのです。
 これをミクロ経済学的にいえば、一人ひとりの個人がこれまで情報の整理にかけていたコストを、グーグルが削減しているということになります。》(p.20)

そして、社会学者のリチャード・フロリダによる、クリエイティブ・クラスという知識労働階級にとって、もっとも貴重なものは時間となるだろう、という予言を引いて次のようにまとめています。

《この考え方になぞらえれば、グーグルはクリエイティブ・クラスの人々に「時間を売っている」ということになるのです。そして、その時間が貴重であればあるほど、集積としてグーグルの時価総額は高まるわけです。》(pp.20-21)

[目次]
マスメディアの本質は「注目=アテンション」の卸売業
アテンションのゼロサムゲームから脱却できるか?
マスメディアの競合としてのインターネットメディア分析
4マスメディアvs.インターネット
テレビvs.インターネット
オンデマンドポイントキャスト事業の提言
ターゲットメディアとしてのラジオの確立
情報のコモディティ商戦から新聞は抜け出せるか
ネットとの差別化に特化する雑誌
合従連衡によってプレイヤーの数を減らす
なぜ、それでもマスメディアは必要なのか
コンテンツ論
マーケッターに求められるパラダイムシフト

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2009.03.30

▽官僚すべてを敵にした男の告白

高橋洋一『さらば財務省!―官僚すべてを敵にした男の告白』(講談社)


『さらば財務省!―官僚すべてを敵にした男の告白』は、元財務省官僚の高橋洋一が、小泉政権時に手がけた郵政民営化や政策金融機関の改革の舞台裏を描いたものですが、いかに財務省から嫌われていたかが、わかります。

しかし、このニュースにはびっくりしましたね。

小泉政権ブレーン・高橋洋一教授を窃盗容疑で書類送検
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090330-OYT1T00754.htm
《警視庁練馬署は30日、温泉施設のロッカーから財布や腕時計を盗んだとして、元財務官僚で東洋大教授の高橋洋一容疑者(53)を窃盗容疑で書類送検した。
  同署幹部によると、高橋容疑者は24日午後8時ごろ、東京都練馬区の温泉施設「豊島園庭の湯」の脱衣所で、区内に住む男性会社員(67)が使っていたロッ カーから、現金約5万円が入った財布や、数十万円相当のブルガリの高級腕時計を盗んだ疑い。ロッカーは無施錠だったという。
 男性の通報で駆けつ けた同署員が調べたところ、防犯カメラに高橋容疑者に似た男が写っていたため、浴場から出てきた高橋容疑者に事情を聞くと、盗んだことを認めたという。調 べに対し、高橋容疑者は「いい時計だったので、どんな人が持っているのか興味があり、盗んでしまった」と供述しているという。
 逮捕しなかった理由について同署は「証拠隠滅の恐れがないと判断したため」としている。
  高橋容疑者は小泉政権で竹中平蔵・元総務相のブレーンとして郵政民営化などを推進。安倍政権では内閣官房参事官として公務員制度改革の青写真を描いたが、 2008年3月に退官。「さらば財務省!官僚すべてを敵にした男の告白」などの著書がある。東洋大は「教育に携わる者として許し難いことであり、厳正に処 分を行いたい」としている。》

高橋洋一『さらば財務省!―官僚すべてを敵にした男の告白』(講談社)
[目次]
序章 安倍総理辞任の真相
第1章 財務省が隠した爆弾
第2章 秘密のアジト
第3章 郵政民営化の全内幕
第4章 小泉政権の舞台裏
第5章 埋蔵金の全貌
第6章 政治家vs.官僚
第7章 消えた年金の真実
終章 改革をやめた日本はどうなる

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2009.03.14

▽産経新聞の抱える闇とは

中川一徳『メディアの支配者 上』(講談社)


中川一徳『メディアの支配者 下』(講談社)


本書は、社史の書かれないフジサンケイグループについて、その誕生から、ホリエモンによるニッポン放送株買収騒動が勃発する直前までの歴史を描いたものである。もちろんフジテレビ内部の暗闘もすさまじいものがあるのだが、同じ筆者による『月刊現代』2008年1月号の記事でも明らかにされているように、産経新聞も大きな闇を抱えていることが伺える。


中川一徳『メディアの支配者 上』(講談社)
[目次]
プロローグ
第1章 彫刻の森―鹿内信隆のつくった王国
第2章 クーデター―鹿内宏明解任
第3章 抗争―日枝久の勝利
第4章 梟雄―鹿内信隆のメディア支配(前)

中川一徳『メディアの支配者 下』(講談社)
[目次]
第4章 梟雄―鹿内信隆のメディア支配(後)
第5章 華麗なる一族―後継者・鹿内春雄
第6章 改革者―鹿内宏明の試み
第7章 宿命―フジサンケイグループの抱える闇
エピローグ

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2009.03.13

▽ホリエモンの右腕だった男の弁明の書

宮内亮治『虚構 堀江と私とライブドア』(講談社)


ホリエモンの『徹底抗戦』を読んだので、こちらも読んでみました。本書も、それなりに説得力はあるので、まさに「真相は藪の中」という感じですね。

興味深かった点は
・近鉄買収は単なる話題づくりだった
・ニッポン放送買収も初めからイグジットを考えていた
・ソニー買収はありえない
・ボーダフォン買収は食指が動いていた(資金調達次第)
といったところでしょうか。

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2009.03.12

▽ホリエモンが語る塀の中の暮らし

堀江貴文『徹底抗戦』(集英社)


ホリエモンこと、元ライブドア社長で、2006年1月に証券取引法違反の容疑で、東京地検特捜部に逮捕された堀江貴文の反論の書。高裁判決までは執行猶予無しの実刑判決だったが、最高裁判決を前に、反論すべきことは反論しておこう、というのが出版の趣旨のようだ。

本書で興味深いのは拘置所の独房暮らしの過酷さ。特に、土日の取り調べがない日に他人と接する機会が無いことから生じる孤独さや、いつまで拘留され 続けるのかがわからない不安感は、ホリエモンですら精神的にへこませてしまい、検察と妥協する寸前まで追い詰められてしまったという。

反論の部分についてはおきますが、ホリエモンは偽悪的ではあっても本物の悪人ではない、というのが私の本書を読んだ感想ですね。

[目次]
予兆—“虎の尾”を踏んだ、ニッポン放送株買収と衆院選出馬
魅惑のフジテレビ
いざ、買収へ
敵対的買収
意外な「援軍」
立候補した理由
日本にも大統領制を
幻のソニー買収作戦

青天の霹靂—逮捕、そして勾留へ
強制捜査
証拠隠滅なんて…
ストップ安
本当の戦犯
野口英昭氏の怪死
後任社長が平松庚三氏になった理由
私は仕手戦の株屋なのか?
容疑者ルームにて
逮捕の日
勾留決定
検事、取調べ開始
独房の日々
気の利く差し入れ
風呂でオナニー
嗚咽するほど泣いた話
熊谷氏との邂逅
読書の話
刑務所の中
起訴後勾留
温かい刑務官
ラジヲの時間
内藤検事登場
自分との闘い
保釈の日

徹底抗戦—われ、検察とかく戦えり
保釈直後
対人恐怖症の克服へ
初公判へ向けて
徹底抗戦!
公判前夜
世論の変化
究極の「政治屋」亀井静香
地裁判決の日
ゴルフ道
税務調査
控訴審
上告へ
ライブドア事件の本質

真相—いまだから書ける、あんなことこんなこと
株主総会のこと
世界的企業を目指した理由
SBI北尾吉孝氏のはなし
拝金主義について
悪役(ヒール)へ
突撃記者・日本テレビ木下黄太氏
検察制度改革
保釈金のこと
過剰報道
懲役の恐怖
将来のこと
その後のライブドア
人を信じるということ

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2009.03.11

▽元検事が「朝ズバッ」を追及する

郷原信郎『思考停止社会~「遵守」に蝕まれる日本』(講談社現代新書)


小沢一郎の秘書逮捕後に、一躍、時の人になった感のある元検事の郷原信郎ですが、小沢秘書逮捕の直前に、秀逸なメディア・検察批判の書を出していました。特に、TBS「朝ズバッ」における不二家への報道被害に関しては、うやむやな内部調査でお茶を濁したTBSを、厳格な調査を行った関西テレビ「あるある大事典」と比較して、過剰な法令遵守社会のダブル・スタンダードを次のように批判しています。

《もしTBSが、「あるある」について関西テレビが行ったように、「朝ズバッ」での不二家関連報道全体について自主的な検証を行わざるを得なくなっていたら、一月二二日の放送以外にも捏造や真実性に問題がある報道が明らかになった可能性があります。……報道による被害という意味では、関西テレビの「あるある」より、TBSの「朝ズバッ」のほうがはるかに大きいのではないでしょうか》(pp.177-178)

[目次]
第1章 食の「偽装」「隠蔽」に見る思考停止
第2章 「強度偽装」「データ捏造」をめぐる思考停止
第3章 市場経済の混乱を招く経済司法の思考停止
第4章 司法への市民参加をめぐる思考停止
第5章 厚生年金記録の「改ざん」問題をめぐる思考停止
第6章 思考停止するマスメディア
第7章 「遵守」はなぜ思考停止につながるのか
終章 思考停止から脱却して真の法治社会を

郷原信郎『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮新書)


[目次]
第1章 日本は法治国家か
第2章 「法令遵守」が企業をダメにする
第3章 官とマスコミが弊害を助長する
第4章 日本の法律は象徴に過ぎない
第5章 「フルセット・コンプライアンス」という考え方
終章 眼を持つ組織になる

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2009.03.10

▽アントニオ猪木のリアルと非リアル

柳澤健『完本 1976年のアントニオ猪木』(文春文庫)

プロレスがあらかじめ創られたシナリオにそって行われる格闘技であることは、ファンだけではなく一般人の間でも、うすうす気づかれている事実であった。すべての試合が八百長であったならば、話は単純なのだろうが、時々、リアル・ファイトの真剣勝負が紛れ込むことから、プロレスというスポーツの様相は、複雑になってくる。この機微こそが、日本のプロレスの魅力と言えるだろう。

本書は、アントニオ猪木が1976年に戦った4つのリアル・ファイト――柔道家のウィリアム・ルスカ、ボクシングのモハメド・アリ、韓国のプロレスラー、パキスタンの格闘家――を中心に据えて、アントニア猪木と日本のプロレス界の表と裏を描き出す。こうした優れたノンフィクションが書かれてもなお、いくつもの謎が残されてしまうのが、アントニオ猪木のすごいところなのかもしれない。

[目次]
はじめに プロレスを変えた異常な4試合
第1章 馬場を超えろ-1976年以前
第2章 ヘーシンクになれなかった男-ウィリエム・ルスカ戦
第3章 アリはプロレスに誘惑される
第4章 リアルファイト-モハメッド・アリ戦
第5章 大邱の惨劇-パク・ソンナン戦
第6章 伝説の一族-アクラム・ペールワン戦
第7章 プロレスの時代の終わり
終章 そして総合格闘技へ
アントニア猪木が語る『1976年』

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2009.02.28

▽新自由主義国の中の社会主義

ロジャー・ローウェンスタイン『なぜGMは転落したのか―アメリカ年金制度の罠』(鬼澤忍訳、日本経済新聞出版社)


『なぜGMは転落したのか―アメリカ年金制度の罠』という邦題だが、実際のところGMと全米自動車労組(UAW)についての記述は第一部だけで、第二部は全米運輸労組(TWU)、第三部はサンディエゴ市と、それぞれの年金問題に費やされています。

原題に"While America Aged"とあるように、「アメリカが老いている間に」、特定の労働組合に所属している労働者だけは、とても手厚い年金や社会保障を得られるようになっており、なぜそうした特権が認められるようになったかの歴史が綴られています。淡々と事実を積み重ねていくジャーナリスティックなスタイルの上に、なじみの無い人名や組織名が続くため、あまり読みやすいとは言えませんが。

これまでアメリカは、新自由主義の国と見なされ批判されてきたかと思いますが、実際は、新自由主義の荒波の中に、ところどころに、きわめて強固で社会主義的な島が浮かんでいるような、そんな特殊な国だったということを改めて実感させられます。

[目次]
第1部 誰がGMを殺したか
 ビッグスリーとデトロイト協定
 妥協と無策の果てに
第2部 年金をめぐる戦い
 「公務員」という名の特権階級
 ストライキ!
第3部 自治体が破産するとき
 最高の都市、サンディエゴ
 年金をめぐる陰謀
 支払期日の到来
結び 打開策

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2009.02.26

▽不良債権処理にまつわるエトセトラ

高橋洋一x長谷川幸洋『百年に一度の危機から日本経済を救う会議』(PHP研究所)


高橋洋一と長谷川幸洋の対談本で、内容的には、それぞれの他の著書のほうが充実していると思う。ただ、大蔵相在職時代に不良債権処理に関するバイブルとも言われた『金融機関の債権償却』(金融財政事情研究会、1994年)を書いた高橋洋一の証言は衝撃的だ。

《当時の大蔵省銀行局の幹部のほとんどは不良債権の定義すらきちんと言えなかった。そもそも「償却」と「引当」の違いすらわかっていないし、会計処理についてまったく無知だった。不良債権について誰も知らないから、処方箋を出すこともできない。それが一九九五、六年のころでした。
 それであたふたしているうちに住専問題が明るみに出たけれど、もちろんその処理の方法も誰も知らない。住専問題については、まずもって損失額をきちんと確定する作業が必要だったのに、どう確定し処理すればいいのかわからぬまま、どんどん債務が大きくなってしまった。》(p.51)

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2009.02.13

▽人間味のあるスパイハンターの回顧録

泉修三『スパイと公安警察-ある公安警部の30年』(バジリコ)


本書の著者は、警視庁公安部などで、いわゆる″スパイハンター″として活躍した元警官で、その三十年にわたる経験を語ったもの。タイトルの『スパイ と公安警察』からは、厳しくかつシリアスな世界を想像するが、本書の語り口は実に人間味のあるもので、うまくいった話よりも、失敗をしたような部分の方が 楽しく読める。

もちろん、その語り口とは裏腹に、語られている事件の多くは、当事者にとっては重要な事件も多く、わかる人にはわかる″真相″も随所に盛り込まれているのだろうと、推測する。

[目次]
新米巡査
地獄の上野警察署
連続企業爆破事件
イリーガルスパイ
篭絡されたCIA女性職員
基地班の捜査線上に浮かんだサンキスト
北朝鮮工作員に協力する「土台人」
機動隊員に変装
内閣調査室国際部
ソ連スパイとの闘い
右翼対策・過激派対策の現場へ
国際テロ班
協力者工作
警部昇任と自律神経失調症
恋人
公安警部

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2009.01.29

▽盗まれたムンクを捜して

エドワード・ドルニック『ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日』(河野純治訳、光文社)


1994年2月、ノルウェーのオスロにあるノルウェー国立美術館から、ムンクの代表作である『叫び』が盗まれた――。ロンドン警視庁美術特捜班の チャーリー・ヒルは、『叫び』奪還への協力を申し出る。彼は、アメリカのゲティ美術館の代理人という身分を借りて、犯人グループとの接触を試みる……。

まるで映画のようなストーリーですが、本書はノンフィクションです。チャーリー・ヒルという美術捜査官も実在の人物です。本筋の『ムンク』奪還劇に 交えて、ヒルの人となりや、美術捜査官としての体験なども紹介されています。ちょっとまどろっこしいところもありますが、それでも面白く読むことができま す。

[目次]

第1部 二人の男と一本のハシゴ
第2部 フェルメールとギャング
第3部 ゲティから来た男
第4部 囮捜査の技術
第5部 地下室にて

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2009.01.28

▽アメリカ人はいかにして嘘つきになりしか?

デービッド・カラハン『「うそつき病」がはびこるアメリカ』(小林由香利訳、NHK出版)

タイトル通りの本で、あらゆる分野で、いかにアメリカ人が嘘をつくのが平気になってしまったかを淡々と記述しています。アメリカで出版されたのは2004 年で、いわゆる「市場原理主義」に反対するプロパガンダのようなスタンスの本かと思ったのですが、その後のアメリカの政治経済状況を鑑みるに、この時点 で、すでにアメリカ人のモラルは、深刻なまでに崩壊していたことがわかります。

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▽もう一人の大統領が語るもう一つの「不都合な真実」

アル・ゴア『理性の奪還 もうひとつの「不都合な真実」』 (竹林卓訳、ランダムハウス講談社)


アル・ゴアといえば、2000年の大統領選挙で、フロリダ州の開票問題によって落選したが、もしかしたら大統領になっていたかもしれない人物。その後は、環境問題に取り組み、環境問題を扱った『不都合な真実』をベストセラーにし、ノーベル平和賞を受賞した。

その第二弾とも言える本書『理性の奪還』の副題となっている"もうひとつの「不都合な真実」"とは何か? それは、ブッシュ大統領や、その政府高官 たちが、国民にきちんとした情報を与えないどころか、嘘をまき散らし、過度なテロ対策やイラク開戦へと突き進んだこと。そして、それにテレビが大きく加担 したこと、である。アメリカでは2007年5月に出版されてベストセラーになったという。

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▽映画やドラマで見る最近のアメリカ

町山智浩『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』(文藝春秋)


『悪から我らを救いたまえ』、『神の御許のパンク』、『ブッシュとの旅』、『神の仲間達/アレクサンドラ・ベローシの自動車旅行』、『フェア・ゲー ム』、『告発のとき』、『ギァンタナモへの道』、『マイティ・ハート』、『レンディション』、『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』、『オサマ・ビンラ ディンは世界のどこにいる』、『ウォルマート/激安の代償』、『なぜウォルマートは成功し、一部の人々を激怒させるのか』、『ウィーズ』、 『30Days』、『シッコ』、『キング・コーン』、『レッド・スコルピオン』、『誰が電気自動車を殺したか?』、『大統領暗殺』、『007トゥモロー・ ネバー・ダイ』、『コルベア・レポート』、『イディオクラシー』、『シンプソンズ』、『ヒップホップ・プレジデント』、『父達の信念』

以上が、本書で紹介されているテレビ番組や映画(一部撮影中を含む)です。公開時期は、イラク戦争は間違いだったんじゃないか、とアメリカ国内でも 思われ始めた2005年から2008年にかけて。日本でも、小泉内閣が郵政選挙で圧勝して以降、アメリカにおける新自由主義的な政策の負の面に言及する際 に、こうした映画に絡めて取り上げられる話題が多かったと思います。

日本でも、社会派の映画は作られることはありますが、話題になる作品は、それほど多くないと思います。ところが、アメリカの場合は、イラクやアフガ ニスタンで戦争をやってることもあって、実に多い。もちろん、普通の娯楽映画も作られているんでしょうけど、日本で、最近洋画が低調なことと、関係がある ような気もしますね。

[目次]
序章 アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない
第1章 暴走する宗教
第2章 デタラメな戦争
第3章 バブル経済と格差社会
第4章 腐った政治
第5章 ウソだらけのメディア
第6章 アメリカを救うのは誰か
終章 アメリカの時代は終わるのか

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2009.01.27

▽ジャーナリストが感じた三島由紀夫と自衛隊

杉山隆男『「兵士」になれなかった三島由紀夫』(小学館)


本書は、もっと評価されるべき本だと思う。ある意味でスクープと言ってもいい。

1970年、盾の会のメンバーとともに自衛隊市ヶ谷駐屯地に乱入し、自衛隊員に決起を呼びかけた後に、割腹自殺をした三島由紀夫は、生前、自衛隊のレンジャー部隊の訓練に参加していたことはよく知られている。

本書は、自らも自衛隊に体験入隊した経験のあるジャーナリストの杉山隆男が、三島の訓練に立ち会った複数の自衛隊員を訪ねて、レンジャー訓練における三島の様子を浮かび上がらせたものである。

当時の自衛隊員が三島をどう思っていたかについても率直に語られており、「なぜあの決起が成功しなかったのか?」という疑問に対する、一般の自衛隊員の側からの回答が読み取れる。

[目次]
第1章 忍(黙契;走る人;懸垂;水兵渡り;救出;美学)
第2章 剣(段級審査;手合わせ;服装点検;同期の二人;メダリスト)
第3章 絆(告白;継続監視;自立の宴;最後の会話;運命)
最終章 手紙

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2009.01.26

▽フランス人ジャーナリストが見た猪瀬直樹と小泉改革

ニルス・プラネル『僕が猪瀬事務所で見たニッポン大転換』(草思社、橘明美訳)


ヘルシンキ生まれのフランス人ジャーナリスト、ニルス・プラネル(Niels Planel)は、2007年3月に"Un autre Japan 2001-2005"という本をフランスで出版した。"Un autre Japan"とは、「もう一つの日本」という意味である。

同氏は、2001年に猪瀬直樹事務所の研修生となり、その後いったん帰国、2005年に再来日して、2007年にかけて猪瀬事務所でスタッフとして働いた。その時の体験を記録したもので、日本では2007年12月に『僕が猪瀬事務所で見たニッポン大転換』(草思社、橘明美訳)として出版された。

原著のタイトルに"2001-2005"とあるように、2001年から2005年の日本は、ちょうど小泉純一郎政権下で構造改革が進められていた時期であり、猪瀬直樹は小泉内閣の下で、道路公団民営化に携わっていた。

歴史的な転換点を迎えていた日本を、外国人として、あまり利害関係の無い立場から振り返ったのが本書といえる。もちろん猪瀬直樹の肩越しから小泉改 革を眺めている部分もあるが、同氏が自分なりの視点で日本の政治や社会を考察しているところも多いので、『僕が猪瀬事務所で見たニッポン大転換』というタ イトルは、やや内容を矮小化して伝えているようで残念である。

プラネル氏の個人的な体験も交えているが、紙幅の多くは、外国人から見た小泉時代の日本政治や日本社会を観察し、考察することに費やされている。

最近の政治状況と関連して、本書の記述で目を引くのが、小泉純一郎は、日本で初めて地方で暮らしたことがないまま、総理大臣になった人物という指 摘。確かに、小泉以前は、地方出身者が総理大臣を務めてきたし、小泉以降は、安倍、福田、麻生と、選挙地盤は地方のままだが、幼少期から東京で過ごしてい る政治家ばかりである。

また、道路公団民営化に比べると、郵政民営化は透明性に欠けているのではないかとも指摘されているが、最近のかんぽの宿をめぐる騒動をみると、なるほどと思わせる。本書は小泉時代は何だったのかを振り返る上で、読み応えのある記録となっている。

[目次]
第1章 ムッシュー・イノセ
第2章 カフェの日本人
第3章 変わらない日本
第4章 変わりゆく日本
第5章 まだ打つ手はあるはずだ

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2009.01.22

▽漱石の孫が見た世界のマンガ事情

夏目 房之介『マンガ 世界 戦略 カモネギ化するかマンガ産業』(小学館)


マンガ評論家の夏目房之介が自身の体験にもとづいて、日本の漫画が、諸外国でどのように受容されているかについて、文化的な面だけでなく、ビジネス の面からも語っている。「カモネギ化するかマンガ産業」という副題が、ある種の警鐘であることが理解できるだろう。2001年の出版だが、現在でも十分読 むに値する。

[目次}
第1章 マンガと異文化
第2章 私のマンガ「国際化」前史
第3章 一九九九年、私的マンガ「国際化」元年
第4章 「国際化」の先人達
第5章 アジアからみる日本
第6章 これからのマンガ
第7章 マンガ・世界・戦略

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2009.01.20

▽タイのウルトラマンの憂鬱

安藤健二『封印作品の憂鬱』(洋泉社)


安藤健二の『封印作品』シリーズ第三弾『封印作品の憂鬱』では、半分近くの分量を1974年にタイで公開された『ハヌマーンと7人のウルトラマ ン』(邦題『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』)という映画に費やされている。ハヌマーンとは、タイにすむ猿の神様であり、この映画は、ウルトラ兄弟とともに ハヌマーンが怪獣軍団と戦うという異色作である。

もちろん本書の主題は、この映画がなぜ封印されるに至ったか、その背景を探ることにある。そして読者は、「悪いのはタイ人か? 日本人か?」という 二分法では割り切れない意外な結論へ導かれる。また、タイでは、どのようにウルトラマンが受容されているのか、タイにおいてハヌマーンとはどんな存在なの か、タイと日本における残酷描写の受け止められ方の違い、1970年代のタイの世相などについても、興味深く読むことが出来る。

[目次]
第1章 ポケットの中の悪夢―日本テレビ版『ドラえもん』
(石化した時間;富山事件;不可解な出生 ほか)
第2章 白猿の暗黒舞踏―『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』
(オート三輪と高層ビル;ウルトラリンチと呼ばれて;ベトナム戦争とサービス精神 ほか)
第3章 歯車と少女―みずのまこと版『涼宮ハルヒの憂鬱』
(涼宮家の一族;禁じられた妄想)

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2009.01.18

▽元外交官による人間観察の集大成

佐藤優『交渉術』(文藝春秋)


まず断っておいた方が良いと思われることは、本書のタイトルは『交渉術』とはいうものの、実際のところ本書で「交渉術」を学べるかというと、あまり役には立たないと思います。そういう意味では実用性は低いと言えます。

さらに内容についても、同じ著者のベストセラーとなった『国家の罠』や『自壊する帝国』において既出のエピソードが多いうえに、これらの著作と比べ ると、外務省をゆさぶった鈴木宗男疑惑の「国策捜査」、あるいは日露交渉の舞台裏などのスリリングな内幕ものとしての魅力も乏しいと言わざるをえません。

しかし、それでも面白く読むことができます。その理由は何かと考えると、本書がクロス・カルチュラルな人間観察のエッセイ集であることが指摘できる と思います。おそらく、『国家の罠』や『自壊する帝国』を書いた頃から時間を経たことによって、著者が関わった人たちのことを、より客観的に描けるように なった結果ではないかと思われます。そういう意味では、実用書を装った「交渉術」というタイトルは、実用書ブームをあてこんでいるようで残念と言えば残念 なタイトルです。

さて、著者が描く人間模様は、エリツィンやプーチンなどのロシアの政治家、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜郎、鈴木宗男などの日本の政治家、さらに日本 の外務官僚の奇人変人ぶりなど、多岐にわたります。本書の構成は、通読すると一つの大きなテーマが見えてくるというわけではありませんので、あくまでも エッセイ集として、一つ一つのエピソードを楽しむべきものだと思います。

[目次]
神をも論破する説得の技法
本当に怖いセックスの罠
私が体験したハニートラップ
酒は人間の本性を暴く
賢いワイロの渡し方
外務省・松尾事件の真相
私が誘われた国際経済犯罪
上司と部下の危険な関係
「恥を棄てる」サバイバルの極意
「加藤の乱」で知るトップの孤独
リーダーの本気を見極める
小渕VSプーチンの真剣勝負
意地悪も人心掌握術
総理の女性スキャンダル
エリツィンの五段階解決論
米原万里さんの仕掛け
交渉の失敗から学ぶには

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2009.01.17

▽談春が見た志らく

立川 談春『赤めだか』(扶桑社)


『赤めだか』は、立川流の落語家、立川談春の自伝です。修業時代から真打ち襲名までを、割と赤裸々に語っています。ま、語っていないことも多々あるのでしょうが。立川談志を軸にした落語界の裏も、垣間見えて興味深いですね。

個人的には、談春と言えば、TBSの深夜番組で弟弟子の志らくと「立川ボーイズ」というコンビを組んで、コントをやっていた時の印象が強いですね。なんて言うか、深夜でないとやれないような危ないネタが多かったのですが。

本書によると、「立川ボーイズでは売れ損なった」と、志らくは語っているようですが、売れっ子になるつもりで、ああいうネタをやっていたのかよ、と、ちょっと突っ込みを入れたくなってしまいました。

[目次]
第1話 「これはやめとくか」と談志は云った。
第2話 新聞配達少年と修業のカタチ
第3話 談志の初稽古、師弟の想い
第4話 青天の霹靂、築地魚河岸修業
第5話 己の嫉妬と一門の元旦
第6話 弟子の食欲とハワイの夜
第7話 高田文夫と雪夜の牛丼
第8話 生涯一度の寿限無と五万円の大勝負
特別篇その1 揺らぐ談志と弟子の罪—立川流後輩達に告ぐ
特別篇その2 誰も知らない小さんと談志—小さん、米朝、ふたりの人間国宝

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2009.01.16

▽押井守が語る兵器と戦争

押井守、岡部いさく『戦争のリアル Disputationes PAX JAPONICA』(エンターブレイン)


映画監督の押井守が軍事評論家の岡部いさくと、戦争や自衛隊や兵器について語り合う。押井の「僕に言わせれば『正しい装備』というのは『絵』にな る。むしろ絵にならなきゃおかしいんだとすら思っているんですよ」という主張はうなずけるものがあります。本書は、そういう視点から、軍隊や装備が語られ ているわけで、その意味ではなかなか面白く読めます。

[目次]
第1章 敗戦のトラウマと日本のアニメ—総論として
第2章 イラクで何が起こっていたのか?—光学サイトから読みとる裏の事情
第3章 かっこいい自衛隊を目指して—勝てそうな携行兵器
第4章 押井的次期戦闘機導入計画?スホーイサイコー!?
第5章 日本海防衛構想—地域限定海軍vs.漁船ワラワラ戦術
第6章 戦争を語るのは誰なのか?—妄想と現実の間で

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2009.01.15

▽井上夢人が語る岡嶋二人

井上夢人『おかしな二人―岡嶋二人盛衰記』(講談社文庫)


ミステリー作家の岡嶋二人は、井上夢人と徳山諄一の二人のペンネーム。岡嶋二人の結成から、江戸川乱歩賞受賞、そして解散までの過程を井上夢人が 綴った。コンビ作家の結成から解散までのドキュメントとして読むことができる。また、アイデアの練り方から、構成の立て方まで、ミステリーの作り方の参考 になる。

[目次]
盛の部
 出会い/僕はパパになった/サニーの中で/「徳さん」 ほか
衰の部
 貴賓室とゴム長靴/はじめての仕事/罠の中の七面鳥/不吉な予言 ほか

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2009.01.12

▽カナダで悠々自適に暮らす一匹オオカミの起業ストーリー

滝沢修『セミリタイア成功術~海外で半分遊んで半分働く豊かな暮らし』(結書房)

本書の著者は、カナダのケロウナに移住して起業。ワインなどを日本向けに販売するかたわら、ゴルフやスキー三昧の充実したセミ・リタイア生活を送っている。

著者は、不況で家業をたたみ、カナダに移住した上で、改めて自分の好きなこと、やりたいことをビジネスとして立ち上げた。単に理想を追うのではなく、合理的な判断の積み重ねでビジネスを立ち上げていった著書の次の言葉はとても印象に残るものだ。

《自分の名前で勝負ができれば、これほど強いものはありません。ある意味、一匹オオカミ的な立場になるかもしれませんが、一匹オオカミは決して孤独になりません。そもそもオオカミという動物は群をなします。起業の世界も同じことがいえると思うのですが、起業した一匹オオカミ同士がお互いの存在価値を認め、業務提携という形で共同作業を行うからです。》(p.183)

著者のサイト『少しだけ悠々自適の海外生活』
http://www.ogtcanada.com/

滝沢修『セミリタイア成功術~海外で半分遊んで半分働く豊かな暮らし』(結書房)
[目次]
1 いざ!カナダへ
2 ゼロからの起業はこうして軌道に乗った
3 カナダ・セミリタイアを保障する7つのメリット
4 海外起業を目指すための7つの常識リセット
5 海外起業を成功させる12の営業戦略
6 ちょっとした財産をつくる7つのコツ
7 海外で豊かに安全に暮らすための6つのアドバイス

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2009.01.10

▽ダイエー中内の強さの源泉

佐野眞一『カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」〈上・下〉』 (新潮文庫)

ジャーナリスト佐野眞一による中内ダイエーの研究の書。いまは亡きダイエー創業者・中内功の強さの源泉を次のように描いている。

《 このとき私はある経営コンサルタントに会い、目からウロコが落ちるような話を聞いた。
 ダイエーは地元からどんなに強い反対運動があっても最後は結局、出店してしまう、なぜなんでしょう。そうたずねると、経営コンサルタントは、なんでそんな簡単なことがわからないのか、という顔をした。
「簡単です。地元の反対運動は大勢ですが、ダイエーは中内さん一人だからです」
「多勢に無勢では、ダイエーの方が不利なんじゃないですか」
「そこが違うんです。複数は弱い。特に時間がたてばたつほど。あいつはひょっとして賛成派に回っているんじゃないかとか疑心暗鬼になり、最後は仲間割れになる。その点、一人は強い。絶対に割れっこないからです」
 私はあっ、と思った》(下巻p.424)

佐野眞一『カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」〈上〉』 (新潮文庫)
[目次]
第1部 苦悶と狂気
 沈む半月マーク
 メモリアルのなかの流通帝国
第2部 飢餓と闇市
 三角の小さな家
 書かれざる戦記
日本一長い百貨店
 キャッシュレジスターの高鳴り
 牛肉という導火線
第3部 拡大と亀裂
 神戸コネクションと一円玉騒動
 わが祖国アメリカ
 黄金の60年代
 ベビーブーマーたち
 血と骨の抗争

佐野眞一『カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」〈下〉』 (新潮文庫)
[目次]
第4部 挑戦と猜疑
 「わが安売り哲学」
 三島由紀夫と格安テレビ ほか
第5部 膨張と解体
 持ち株会社第一号とローソンの反乱
 宮古の怪、福岡の謎 ほか
第6部 懊悩と終焉
 中内ダイエーの一番長い日
 インサイダー疑惑の衝撃 ほか

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2009.01.09

▽エヴァンゲリオンが誕生した瞬間

武田康広『のーてんき通信―エヴァンゲリオンを創った男たち』 (ワニブックス)

「新世紀エヴァンゲリオン」を世に送り出し、アニメ製作会社としての地位を不動のものにしたガイナックス。その創設からトップに立ち続けた現・取締役総括本部長が、これまでの歩みを赤裸々に語る。エヴァンゲリオンの誕生の瞬間は次のように述べている。

《 その日、庵野は帰ってきて「キングの大月さんと一緒にテレビやることにしたから」って言った。ぼくらも「あぁそう、ええんちゃう」って軽い感じで受け止めた。
 そのときぼくはビックリしたわけではなく、「あぁ庵野は決めたんだな」ってすんなり受け入れられた。
 よく考えれば、実はこの「決めた」ということが、学生時代からガイナックスに至ってのぼくらの一番の強みであり特徴なのだ。このことが最近になってようやくわかった。ようするに、「行動する意思」の強いものが作品(イベントも)を作ることができるということなのだ。》
 
武田康広『のーてんき通信―エヴァンゲリオンを創った男たち』 (ワニブックス)
[目次]
大阪編—すべての未来はSF
 少年期の終わりに
 運命の大学入学 ほか
叫ぶ!笑う!走る!泣く!武田康広・21世紀最初の大立ち回り
 第40回日本SF大会SF2001
 大会実行委員長&日本SFファングループ連合会議議長 ほか
東京編—そして、上京
 ガイナ荘
 東京生活 ほか
山賀博之・赤井孝美・庵野秀明特別鼎談 欠席裁判!武田康広まるはだか!?

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2009.01.08

▽映画監督になる方法とは

『庵野秀明 スキゾ・エヴァンゲリオン』、『庵野秀明 パラノ・エヴァンゲリオン』(太田出版)


『庵野秀明 スキゾ・エヴァンゲリオン』、『庵野秀明 パラノ・エヴァンゲリオン』(太田出版)は、「クイック・ジャパン」に掲載された庵野秀明へのインタビュー集。いちばん笑ったところは、『庵野秀明 パラノ・エヴァンゲリオン』(pp.37-38)より。

《竹熊 山賀さんっていうのは、映画青年というイメージがあるんだけど。
庵野 いや、全然。彼、あんまり映画見ないですよ。有名になるため の方法論が映画監督だったということで。だから映画監督になるには、どうしたらいいんだろうというので、淀川長治のエッセイを読んだらしいんですよ。そこ に「同じ映画を一〇回見れば、誰でも映画監督になれる」って書いてあったんで、それで『がんばれベアーズ特訓中』を一〇回見て、これで映画監督になれるっ て。
大泉 (爆笑)
竹熊 ただものじゃないね。よりにもよって『ベアーズ』・・・・・・。
庵野 『がんばれベアーズ』ならまだわかるんですけど、『特訓中』ですから。つまんないと言ってましたね。
竹熊 そのつまんなかったやつを一〇回も。山賀さん、それでもう映画はわかったと。
庵野 映画監督にこれでもうなれると。
大泉 実際なったからすごいね。》

『庵野秀明 スキゾ・エヴァンゲリオン』
[目次]
第1部 庵野秀明 ロングインタビュー
 僕たちには何もない
 物語の終わらせ方
 創作とはオナニーショウである
 「デビルマン」とエディプス・コンプレックス
第2部 『エヴァンゲリオン』スタッフによる庵野秀明“欠席裁判”
第3部 綾波レイとは何か?(大泉実成)

『庵野秀明 パラノ・エヴァンゲリオン』
[目次]
第1部 庵野秀明 ロングインタビュー
 もう、僕は勉強しない
 ダイコンフィルム誕生
 エヴァへの長い道
 絶望は思うんだけど、そこからスタートです
第2部 『エヴァンゲリオン』スタッフによる庵野秀明“欠席裁判”
第3部 私とエヴァンゲリオン(竹熊健太郎)

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2009.01.07

▽東野圭吾のたぶん最初の決断

東野圭吾『たぶん最後のご挨拶』(文藝春秋)


ミステリー作家の東野圭吾が直木賞受賞を機に、それまでに書いたエッセイなどをまとめたもの。江戸川乱歩賞受賞前は、自動車メーカーでエンジニアとして働いていたのは、よく知られている。

《 「就職して一、二年は無我夢中だった。当然のことながらエンジニアとしても半人前だから、早く一人前にならねばと焦っていた。だがそんな風に過ごしながらも、一つの疑いが脳裏から離れなかった。
 俺の居場所は本当にここなのか、というものだった。
 たしかにエンジニアになることも夢の一つであった。だがそれならば、子供の頃から何度も繰り返したあの「真似事」は何だったのだ。それらに対して何ひとつチャレンジしないまま、一生を終えてもいいのか。後悔はしないのか。
 慣れない会社生活から逃避したくてそんなふうに思うだけなのだ、と自分にいい聞かせていたが、「もしほかの夢を追っていたらどうなっていただろう」という空想は、日に日に私の心を掴んで離さなくなっていた。
 二十四歳の秋、ついに一つの決心を固めた。》(p.261)

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▽ジョブズが語る自分の居場所

『スティーブ・ジョブズ-偶像復活』(東洋経済新報社)

アップルコンピュータを創ったスティーブ・ジョブズの第二幕。アメリカ人ジャーナリストが、カリスマの虚像と実像を追った。下記はアップルを追われた時のジョブズの手紙の内容である(p.198)。

《僕が得意なのは、才能のある人材を集め、何かを作ることです。アップルの方針をどうこう言うつもりはありません。ただ、僕自身は、何か作っていたいのです。僕が何かを作る場所がアップルにないのなら、過去、2回もしたことをもう1度するだけです。自分の居場所を自分で作るんです。アップル創業のとき、ガレージでしたこともそうでしたし、Macをはじめたときも、いわばガレージで同じことをしたようなものでした。》

ちなみにジョブズが、ペプシ・コーラの辣腕経営者ジョン・スカリーを口説いた時の言葉は……

《スカリーの著書によれば、彼がアップルの誘いを断れないと自覚したのは、ある日マンハッタンのビルの屋上に立ちハドソン川を眺めながら、ジョブズが振り返りこうたずねた時だった--「あなたは一生砂糖水を売って過ごすつもりですか、それとも世界を変えるチャンスに賭ける気はありませんか?」》(『アップル』上巻p.28)

また、ジョブズがスティーブ・ウォズニャックにコンピュータ・キットの組立・販売会社を設立しようと、説得した時の言葉は……

《すると彼は言ったのです。「いいかい、スティーブ。僕たちは、お金を失うことになるかも知れないけれど、会社をつくるというのは一世一代のことなんだ。”僕たちは会社をつくったことがあるんだ”と人に言えることだけでも、それだけでも誇れることだし、実際のところ価値のあることなんだよ」と。》(『新・電子立国1ソフトウェア帝国の誕生』p.224)

ちなみにアスキーの創業者である西和彦が、古川亨をアスキーに誘った時の言葉は……

《西さんに口説かれまして、大学を中退してアスキー社に入りました。西さんから、「今、入社したら重役で迎えるが、あとからでは保証の限りではない」と言われて入ってみると、アスキー社のオフィスはアパートの四畳半でした。部屋が狭すぎて仕事をする場所がない。そこで、風呂場の空の浴槽に体を沈めて、蓋の上で記事を書きました。西さんとともに新しい時代をつくるためのメッセージを発信するんだ、という思いでいっぱいでした。既成の社会に埋没するのでなく、新しい何かに触れて、それを広く伝えたいという気持ちでした。ですから私は、西さんから声をかけられたことは人生の転機だったと思います。》(同pp.214-215)

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2009.01.06

▽天才棋士が見た何もないところ

大崎善生『聖の青春』(講談社)


難病と闘いながら、29年の短い生涯を生き抜いた天才棋士・村山聖の伝記。

《村山は旅立った。どこからどういうルートで向かったのか大阪から函館に着くまでに、6日間を費やしたという。そして、約束通りに、森の部屋に電話がかかってきた。
「森先生。いま北海道にいます」
「無事についたんか」
「はい」
「どうや、そっちは」
「北海道って、花ばかりが咲いていて、何もないところなんですね」
電話の向こうで村山は、とても晴れがましい声で言った。
 それでいいんやと、口には出さなかったが森は思った。それを知るために旅があるんだ。》 (pp.161-162)

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2009.01.03

▽『仁義なき戦い』をつくった男たち

山根貞男x米原尚志『『仁義なき戦い』をつくった男たち―深作欣二と笠原和夫』(日本放送出版協会)


『仁義なき戦い』で初めて深作欣二と組んだカメラマン、吉田貞次の言葉。

《僕はそれまで深作さんの作品を何本か見てきて「動」の多い演出だなと思ってました。深作さんの作品にお客が入らないのは、「動」を活かす「静」が欠けているからではないかと僕なりに考えていたわけです。だから『仁義なき戦い』で初めて組むことになったとき、そこに気をつければ深作さんの映画はもっと面白くなると思いました。だから、あの作品では、ホームドラマみたいなところは、普通の作品以上に、これはもう時代劇みたいにピチッとした絵を作っています。》(p.116-117)

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▽『仁義なき戦い』ができるまで

笠原和夫『昭和の劇―映画脚本家』(太田出版)

『昭和の劇―映画脚本家』(太田出版)は、映画脚本家の笠原和夫が、インタビュー形式で自作について語っている。特に、代表作の『仁義なき戦い』の脚本制作の舞台裏を語った「『仁義なき戦い』の三〇〇日」は、一読に値する。

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2009.01.02

▽マイクロソフトの強さの秘密

フレッド・ムーディー『わたしは電子の歌をうたう―マイクロソフトがマルチメディアに挑んだ1年』(広瀬順弘訳、早川書房)


ちょっと古い本です。内容は、米マイクロソフトが1995年初頭に発売したCD-ROM版百科事典『エクスプロラペディア』(コードネームは『セン ダック』です)の、2年におよぶ開発プロジェクトを、ジャーナリストのフレッド・ムーディー(Fred Moody)が綴ったもの。

ぶっちゃけて言うと、開発にともなう混乱の様子をだらだらと記述しただけの冗長な感じのする本です。暇つぶしに読むにしても、非常にストレスフルな内容なので、あまりお薦めできません。お薦めしない本なので、簡単に肝となる部分だけを紹介しちゃいます。

この『エクスプロラペディア』(コードネームは『センダック』)の開発に混乱が生じた、そもそもの原因は、マイクロソフトの幹部たちにあります。開 発チーム自身がたてた1992年12月の時点の見通しでは、「発売時期を1995年2月」と設定していました。それが、マイクロソフトの経営陣によって、 半年早い1994年9月に設定させられてしまいます。その結果、開発のスケジュールは、窮屈なものとなり、チームには不協和音が生じ、それからずっと混沌 した状態が続きます。

案の定と言うべきでしょうか、結局、開発は予定よりも遅れます。そして、新たに設定された発売時期は、1995年1月……。そのことを知った著者の感想は、以下のようなものでした。

《そのとき私の頭に浮かんだのは、それはまさに、一九九二年一二月にジェイリーン・ライバークが最初に作った制作計画で『センダック』の出荷期日に 決められていた日だということだった。ふいに私は、目のくらむような光に包まれたように感じて、驚きに震えながら立ち上がり、外へ出た。……私は足を止 め、驚異の念に打たれて、ずらりと並ぶ窓のかなた"怒りのゲイツ"の御座すところを見上げた》

このことは何を意味するか?

《『エクスプロラペディア』とその製作過程を振り返って、私は、いまようやく気づいた。ビル・ゲイツや彼の部下の管理職たちが実現不可能な目標や基 準を設定したのは、巧妙な策略だったのだ。『センダック』のスケジュールを理不尽なまでに短縮することによって、かれらは、プロジェクトが成功した場合で も、担当者たちがそれを失敗とみなすように仕向けた。……部下に勝利を収める手段を与える一方で、彼は、部下がその勝利を敗北とみなすように仕向けた。マ イクロソフト社の社員は、栄誉に安住するわけにはいかない。それどころか、敗北の汚名をそそぐために、ただちに次の企画に飛び込んでいくのだ。》

……。言葉がありませんね。マイクロソフトのプログラマーと言えば、それは能力の高い優秀な集団でしょう。その優秀なプログラマーたちが、自らの能 力から推測して設定した開発スケジュールのままだったら、彼らには達成感や満足感しか残りません。しかし、マイクロソフトの幹部たちは、あえて無理なスケ ジュールを要求します。

結果として、もし仮にプログラマー自身の推定通りのスケジュールで発売されたとしても、彼らには「目標を達成できなかった」という無力感が残るだけ です。しかし、マイクロソフトという会社は、当初の見通しのスケジュールで製品を販売することができます。なんという会社でしょう。これがマイクロソフト という会社の強みということが出来ます。

私は、この本を十年くらい前に読みました。その時「コンピュータ業界とは、かように面白いものか」と感じたもので、「もう少し、この業界を見てみよ う」と思いました。また、内容とはあまり関係が無いのですが、『わたしは電子の歌をうたう』というタイトルも、妙に惹かれるものがありました(原題は"I Sing the Body Electronic")。

『わたしは電子の歌をうたう』を読んで十年ほどたった2007年の秋に、ボーカロイド『初音ミク』が登場し、一大ムーブメントを巻き起こしました。 私は、「ああ、このタイトルは、『初音ミク』の登場を予言していたのかも」と思うとともに、コンピュータ業界の一つの画期を見届けたような気がしましたね。

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2009.01.01

▽落合が語るコーチング術

落合博満『コーチング 言葉と信念の魔術』(ダイヤモンド社)


2006年に、落合博満が中日ドラゴンズの監督になって以来、その手腕には注目が集まってきましたが、本書は、監督になるずっと前の2001年に出版された本です。

《目立つ長所があり、欠点がさほど仕事や人間関係に影響しないものであれば、その長所をどんどん伸ばしてやればいい。それが自分の長所であるという 自覚を持てば持つほど、仕事や身のこなしにも自信があふれてくる。そして、そんな人の欠点は、いつしか長所の陰に隠れてしまうことが多い。では、欠点が目 立つ場合はどうするか。最もいけないやり方は、本人にそれが大きな欠点であることを感じさせてしまう指導や言動だ。》(p.103)

のように、落合監督の指導者としての筋の通った考えを知ることができます。

というか、中日の監督になるまでは、単なるわがままな選手だと誤解していました。現役時代は、「練習嫌い」のイメージもありましたが、実際は、そんなことはなくて、他の選手の何倍も練習した努力家だったそうです。落合監督ごめんなさい。

落合博満『コーチング 言葉と信念の魔術』(ダイヤモンド社)
[目次]
第1章 教えるのではなく、学ばせる―押しつけない。ヒントを与える。「自分で育つ」ためのコーチング
 コーチは教えるものではない。見ているだけでいいのだ
 選手が勝手に育つまで、指導者はひたすら我慢すべき ほか
第2章 指導者とは何か―成果主義時代の今まさに必要とされる、真のコーチ像
 長嶋監督もマイナス思考。最初からプラス思考では、良い指導者になれない
 あくまでも主体は選手。相手の感覚でしか物事は進められない ほか
第3章 選手(部下)をダメにする選手言葉の悪送球―上司失格。若き才能や可能性の芽をつむ禁句集
 「そんなことは常識だ」と言う前に、納得できる理由を示せ
 「なんだ、そんなこともわからないのか」は上司の禁句 ほか
第4章 組織の中で、「自分」を生かす術―三冠王はこうして生まれた。結果を出し、自身を高める方法
 “俺流”をアピールすることは、組織から外れることではない
 まず「個人」があって「組織」がある時代。明確な目標設定でモチベーションを持て ほか
第5章 勝ち続けるために、自分自身を鍛えろ!―仕事のプロとしての自覚と自信を手に入れるための「思考」
 勝負を急ぐな。避けられるリスクを負うな
 誰のためにやるのか。余分なプレッシャーを背負う必要はない ほか

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