2010.01.04

▽日本産業社会の「神話」を反証していく

小池和男『日本産業社会の「神話」――経済自虐史観をただす』(日本経済新聞出版社)


「経済自虐史観をただす」というサブタイトルは、やや大仰で、内容を正確には表していないように感じられるが、本書の主眼は、日本経済に対する通念を、信頼性の高いデータに基づいて反証していくことにある。

本書で取り上げられている通念とは、日本は集団主義である、日本人は会社が好き、年功賃金は日本的な制度である、日本人は長時間労働である、日本は企業別組合である、日本の経済発展は政府のおかげである、というもの。

それぞれの反証については、各章で読んでもらうとして、私が興味深かったのは、明治から昭和にかけて世界的に発展した日本の紡績業のくだりで、日本経済が発展できたのは政府のおかげという通念に反論している。

《日本経済のテイクオフを断然リードした紡績業をみれば、明らかに事態は異なる。なるほど国営工場や大藩の工場からスタートし、お雇い外国人に頼ったことも事実である。だが、そうした工場はすべて失敗し消えさった。成功した企業はいまの東洋紡であり、生粋の民間企業、日本人が技術者トップであった。当時最新鋭の機械を用い、そのうえ他国にみられない職場の工夫を講じて英米に追いつき追い越していったのであった》(p.2)

このほかにも、日本人とイギリス人の働き方について、筆者の海外での生活体験を踏まえた考察もあり(内容はやや古いのが難点だが)、とても面白く読むことができる。

[目次]
第1章 激しい個人間競争
第2章 日本の働く人は会社が好きか―意識調査の国際比較
第3章 「年功賃金」は日本の社会文化の産物か―戦前日本の軍のサラリー
第4章 日本は長く働くことで競争力を保ってきたか
第5章 日本は企業別組合か
第6章 政府のお陰か―綿紡績業の展開
終章 己を知る難しさ―「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」


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