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2010年3月

2010.03.29

▽『ウェブを炎上させるイタい人たち』

中川淳一郎 『ウェブを炎上させるイタい人たち』(宝島社新書)

ウェブに対する悲観的な現実を提起して一部で話題となった『ウェブはバカと暇人のもの』ですが、

▽アメーバニュース編集者が語るネットのバカたち
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/04/post-13ba.html

本書は、シリーズ第三弾にあたるのだそうです。まあ、内容的には、『ウェブはバカと暇人のもの』とほとんど同じなのですが、後日談風に書かれている部分が面白い。

著者は、『ウェブはバカと暇人のもの』出版後、その過激な内容のおかげで、ネット上でさんざん批判されました。しかし、著書の人生はまったくかわらなかったどころか、本が売れ、仕事が殺到し、女性にもてだしたというのです。

《この段階で私は、『ウェブはバカと暇人のもの』の副題「現場からのネット敗北宣言」を実感し、寂しい気持ちになった。なぜなら、自分の30代前半の相当な時間をつぎ込み、もっとも大事なものを犠牲にしてまで取り組んできたインターネットが、通信手段としての役割以外に、リアル世界に対してほとんど意味を持たないことを実感したのだから。これは、自分の人生の一部を痛烈に否定されたような感覚だった。
 そして、そんな感覚を覚えるのと同時に、猛烈に悲しくなった。……ネットにかなりの時間を使ってきた我が同世代の仲間達のことを思ったからだ。
 ごめん。ネットには、夢も希望も実利もほとんどないんだ……と。》(p.201)

[目次]
第一章 炎上させる人間はやっぱりバカか暇人
 無闇矢鱈(むやみやたら)に人間関係を増やしてどうする
 ネットの「祭り」は“いじめという名の娯楽”
 勝間和代が「目立つ」のは「経済評論家の中では美人」だから
 …ほか
第二章 ウェブは「集合痴」の世界 ―― 誠実に対応するだけ時間と金がムダになる
 プロに対して誰でも簡単に噛み付けるリスペクトなき時代
 バカな客、バカ過ぎるクレームなど、何の役にも立たない
 広瀬香美がツイッター(笑)界最強のスター これってどうなの?
 …ほか
第三章 ウェブ炎上への対処法
 炎上を逆手に取って企業イメージを向上させる
 「かまってちゃん」に振り回されたKDDIの“ハッシュタグ”事件
 炎上のタイプは6種類。いずれも無意味な暇つぶし
 …ほか
第四章 ネットは成熟した。ネットのオプティミズムから卒業しろ
 近所の人を警戒し、ネットの人に安心する矛盾
 うっかりつぶやいて明るみになった蓮舫議員の「マジコン“援助”事件」
 カジュアルな発言をすることのメリットが見いだせない
 …ほか
第五章 20~30代のネット世代は、全能感を持った「ただの負け組」
 実感として「ウェブはリアル世界に対してほとんど意味を持たない」
 ネットの普及とともに日本人の生産性が低下している
 無邪気すぎる信者たち
 …ほか

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2010.03.28

▽『スキャンダルを追え! 『噂の真相』トップ屋稼業』

西岡研介『スキャンダルを追え!『噂の真相』トップ屋稼業』(講談社)


ジャーナリストの持つべき資質の一つに「引きが強い」というものがあるはずだ。そんな引きの強いジャーナリストの一人が西岡研介である。

神戸新聞社の記者としてスタートし、噂の真相、週刊文春、週刊現代と渡り歩いている西岡の『噂の真相』までの体験記が本書である。実に、神戸新聞社時代には、阪神大震災や酒鬼薔薇事件と遭遇し、『噂の真相』に移ってからは、「東京高検検事長の女性スキャンダル」や「首相の買春検挙報道」などのスクープを連発する。

神戸新聞社時代については、酒鬼薔薇聖斗から送りつけられた犯行声明にまつわる舞台裏を明かしている。神戸新聞社は、犯行声明の文章だけを紙面に載せ、コピーは少年逮捕まで、公にはしていなかった。

《実際、容疑者が逮捕され、14歳の少年だと判明した途端、著名なジャーナリストや、評論家のセンセイ方は「あの犯行声明の字は、明らかに子供のものだ。あの時、神戸新聞が犯行声明をそのまま写真で公開すれば、犯人逮捕はもっと早まっていたはずだ」などと口々に批判した。が、はたしてそうだろうか。
 ……このコピーを見て、子供の可能性に言及した捜査関係者は皆無だった。またその後も、複数の記者が、犯人像を探るため、このコピーを手に複数の犯罪学者や精神科医らに密かに取材をかけたのだが、その際にもこれが少年のものであると指摘した人間は誰一人としていなかったのだ。》(p.65)

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2010.03.25

▽『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』

西田 宗千佳『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』(エンターブレイン)

本書の内容は、タイトルの初めの部分『iPad VS. キンドル』よりも、その後の『日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』の方が正確でしょう。iPadとキンドルだけではなくて、ソニーリーダーも含まれています。三社それぞれの立ち位置や戦略の違いがよくわかります。

また、過去に行われた電子書籍の試みについて、失敗も含めて、当事者に幅広く聞き取りを行っていて、資料としても価値は高いと思います。

ただ、本書を読んでも、いままで電子書籍がうまくいかなかった理由はわかりますが、これから電子書籍市場がどう拡大していくか、そして誰が勝者になるかは、わかりませんね。数年後には、アップデート版が書かれることでしょう。

[参考]▽iPodは何を変えたのか? を振り返る
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/02/ipod-7562.html

西田 宗千佳『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』(エンターブレイン)
[目次]
序 章 はじめに~eBookはコンピュータの夢だった~

第1章 キンドル・インパクト!
 あのジョブズ氏も「ライバル礼賛」
 巨大通販会社が「家電メーカー」になる
 見やすくて電気を食わない「電子ペーパー」
 「通信モジュール」~キンドルの持つ本当の革新~
 「ウィスパーネット」がキンドルの秘密
 「MVNO(仮想移動体通信事業者)」の常識を疑え
 キンドルの祖先は「ソニー」にあった
 キンドル・ブーム:2009年空港待合室にて
 eBookなければeBookリーダーも売れず
 ギフトと口コミで「食わず嫌い」を超えろ
 「キンドル」ビジネスの本質は「本を売ること」だ!

第2章 キンドルのライバル、ソニーとアップル
 アメリカで「再起動」したソニー
 発案したのは「ストリンガーCEO」だった
 秘密は「出版契約」にあった
 サンディエゴに本拠を移してビジネスを開始
 「ハードの強み」でまず攻める
 「アマゾンの敵」を味方につけろ
 アップルの狙いは「eBook」ではない?!
 アップルの狙いは「リビング」だった
 iPadの価値は「アプリ」にあり
 「単機能」対「汎用」
 「文庫本」的なキンドル、「雑誌」的なiPad

第3章 eBookへの長い道
 ダイナブックとエキスパンドブック
 インターネットが「マルチメディア」を殺す
 メーカーが団結して臨んだ「電子辞書」
 ソフトから「電子辞書」という機械へ
 「青空文庫」と「自炊」する人々
 「読めない本」に価値はない
 様々な機器の登場がeBookを促す

第4章  eBookのビジネスモデルとは~アメリカの場合~
 eBookは「お金になった」から成立した
 「早く読めて安い」で読書家の心をつかめ
 カギは「お金を払って買う」システムの存在
 「売れば売るほど赤字」は本当か
 ビジネスモデルの「自由度」の重要性とは
 「価格」「特典」を巡りストアと出版社が綱引き
 広がる「個人出版」の可能性~「アマゾンDTP」~
 通信コストまで「ビジネスモデル」の範疇
 「無料」を最大限に活用せよ
 EPUBをしかけたソニー
 フォーマット戦争は存在しない?!
 eBookは「プラットフォーム」が支配する

第5章  日本はどう「eBook」の波に乗るのか
 消費者調査から知る「eBook」
 「アメリカ化」と「国際化」
 水面下で進む「eBook日本上陸」
 新聞社は「デジタル配信」に前向き?!
 すでに「携帯向け出版」はあるけれど
 ゲーム機にコミックが配信される理由
 マンガの現場は「危機」にある!
 eBookがはらむ巨大な「危険」
 「雑誌配信実験」の狙いとは
 日本における権利処理問題のハードル
 グーグルブックスの「本当の問題点」
 著作権は「銭金の問題」だ
 eBookと「再販制度」
 eBookから「ミリオン」は生まれるか

巻末付録 HOW TO KINDLE(キンドル 購入から利用までの手引き)
 応用編…………巻末x
 基本編…………巻末ii

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▽マックかマクドか?――『新聞社も知りたい日本語の謎』

読売新聞新日本語取材班 『新聞社も知りたい日本語の謎』(橋本五郎監修、ベスト新書)


本書は、言葉にまつわる雑学本です。読売新聞の連載記事「新日本語の現場」をまとめたものですが、第一章にある『「マック」か「マクド」か』が気になって手を取りました。

読売新聞の全国の支局を使って調査した結果、やはり「マクド」は近畿の6府県と徳島県、その他の地域は「マック」となりました(マックとマクドを両方使うのは、新潟、兵庫、広島、宮崎の4県)。(p.14)

また、吉本興業に所属するお笑い芸人の話す言葉は「吉本弁」ともいうべきもので、「共通語に「やねん」「やろ」などの言葉を添えただけ」(p.134)なのだそうです。

関西弁にまつわる話だけでなく、さまざまな言葉の語源や、マニュアルを作る話など、読み物として楽しめます。

[目次]
1章 方言の今-日本全国、こんなに異なる物の言い方
2章 方言の戦い-東京vs関西、言葉をめぐるバトル
3章 まだまだ方言の戦い-日本語の奥深さを実感する
4章 マニュアル作り-伝えることの難しさ
5章 続・マニュアル作り-「わかりやすさ」って何だろう

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2010.03.22

▽『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』

北尾トロ『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』(風塵社)

以前書いた下記のエントリーがよく読まれているようなので、

▽『インターネットで古本屋さんやろうよ!』の行方

http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/01/post-36d0.html

同じようにインターネットで古本屋を始めた方の体験記を紹介します。タイトルはそのものずばり『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』。著者は、最近では裁判の傍聴記などでも知られているライターの北尾トロさん。

本書が刊行されたのは2000年9月ですが、北尾さんは、その前年の1999年10月5日にインターネット古本屋『杉並北尾堂』をオープンしました。

杉並北尾堂
http://www.vinet.or.jp/~toro/

北尾さんはライターという職業柄か、「ちょいとヘンなノンフィクション」が本棚にたまっていく。処分に困ったこれらの本を、愛想の悪い古本屋に買いたたかれるくらいなら、という想いから自分で古本屋になってインターネットで販売しよう、と思い立つ。

本書では、サイトの作り方から、特集やメール・マガジンの作り方、古物商の免許の取得方法、せどりや買い取りの仕方、即売会体験談、さらに月別の収支のついた日記など、内容も盛りだくさんです。すべて北尾さんの体験にもとづいたものなので、読み物としても楽しめます。続編も刊行されています。

北尾トロ『ヘンな本あります―ぼくはオンライン古本屋のおやじさん2』(風塵社)

ところが、この杉並北尾堂も、すでに休業中。その理由は、下記の記事で北尾さん自身が語っています。

僕は古本屋のオヤジ~長野県伊那市・高遠町を本の町に…
http://shumiyuyu.kaiteki-jinsei.jp/21/03.html
《アマゾンのおかげで(アマゾンは悪くないです)、古本業者が目先の小銭を欲しがり、結果ネット古書店の楽しさが減っちゃったんだよ。だから俺のなかではネット古書店については、役割は終わったかな、と思ってる。》

現在は、長野県伊那市高遠町にカフェ&古本屋「本の家」を開業して奮闘中のようです……。

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▽『俺たち訴えられました!---SLAPP裁判との闘い』

烏賀陽弘道x西岡研介『俺たち訴えられました!---SLAPP裁判との闘い』(河出書房新社)


SLAPPという言葉がある。Strategic Legal Against Public Participation の略で、企業や団体や、批判的な意見を封殺するために高額の損害賠償を求める民事裁判を起こすことをさす。

本書は「オリコン裁判」で実質勝訴した烏賀陽弘道と、JR東日本の「マングローブ裁判」で係争中の西岡研介の二人によるSLAPP訴訟に関する体験に基づいた対談である。

アメリカでは28の州・地域で禁止されているSLAPP訴訟だが、日本では、企業や団体がし放題の状況にあり、言論の自由とのうまい具合のかねあいがとれていない、というのが問題と言えよう。

本書の最後には、雑誌メディアに対する名誉毀損裁判を手がける矢田次男弁護士との対談も収録されており、訴える側の考えも紹介されている。そして、ネットでの名誉毀損について矢田弁護士は、次のように語っている。

《ネットで問題なのは、人を誹謗中傷する書き込みとかブログのほとんどが匿名であること。もちろん匿名で人を誹謗中傷しても名誉毀損は成立するんだけど、そもそも匿名の書き込みの情報を人が信用するのか、という問題がある。匿名というのは、要するに怪文書みたいなものだから。ネットでの書き込みの相談について僕らは「無視したらどうですか」と勧めている。対処しても、次から次へと同様の書き込みが生まれ、イタチごっこだから。》(p.254)

《矢田――警視庁は刑事の名誉毀損罪でも捜査しますよ。
 烏賀陽――ですね。
 西岡――では、ネット上での誹謗中傷の場合は、民事訴訟を起こすより刑事告訴・告発を行うほうが手っ取り早いということなんですか?
 矢田――警視庁や各都道府県警に「サイバー隊」がいるから、そこに告訴すればいいんです。こんな名誉毀損受けました、と。そうすると警察は捜査しますよ。》(p.255)

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2010.03.16

▽『ネットの炎上力』――どこからくるのか?

蜷川真夫『ネットの炎上力』(文春新書)

本書は、ネットの炎上を煽る「炎上メディア」と呼ばれるJ-CASTニュースの発行人によるもの。J-CASTニュースが創刊されたのは2006年7月で、その前後の状況から、最近の動向までを詳しく述べている。PVの推移や、よく読まれた記事が紹介されるなど、ウェブ媒体の正確なデータが乏しい現状では、資料としての価値も大きい。

《J-CASTニュースのスタートに向けて06年4月ごろからテストを始めた。編集部では、いつ100万PVいくかな、と情けないことを言っていた。すぐに1000万いけるよ、と言ったのは私だが、別に根拠があるわけではなかった。誰も信じてくれなかった。
 正式スタートした7月、月間67万4931PV。翌8月、225万5578PV、9月272万1763PV、10月には442万5867PV。
 おやおや、いけそうじゃないか。そして1年たった07年07月には1223万8991PV。なんと1年で月間1000万PVが達成できた。》(pp.105-106)

また、よく読まれた記事は以下の通り(p.137)。

1位 リア・ディゾン「局部?写真」疑惑で大騒動
http://www.j-cast.com/2007/07/10009188.html

2位 元「モー娘。」飯田のファン 「できちゃった婚」にショック画像
http://www.j-cast.com/2007/07/09009133.html

3位 激論「太田総理」で騒動 民主議員が「お詫び」
http://www.j-cast.com/2007/07/03008937.html

では、これらの記事の読者は、どこからやってきたのか?

《小さなサイトにリンクが張られ、そこから数人、数十人の単位で読者がやって来る。それがねずみ算のように広がっていく。口コミでの広がりと似ていて、サイトからサイト、ブログからブログへと広がっていった。》(p.142)

[参考]
『ネットの炎上力』の「読みどころ」を無料ダウンロード
http://www.j-cast.com/kaisha/2010/03/15062195.html

ダウンロード
http://www.j-cast.com/kaisha/images/2010/jcast_bunshun739.pdf

[目次]
1.J-CASTニュースの誕生
 インターネットメディアの影響
 新聞とインターネット
 テレビとインターネット
 ホリエモンと三木谷氏
 ブロードバンド化の流れ
 J-CASTニュースのスタート
 インターネット広告の仕組み
 連動型広告
 J-CASTニュースのコンテンツ
 技術特許の機能/プッシュ型とプル型

2.毎日新聞「変態記事事件」の衝撃
 武豊騎手のコメント誤報事件
 「小さな世論」の形成過程
 記事の賞味期限
 投稿先によるコメントの違い
 情報リーダー
 佳子様のプライベート写真
 毎日新聞「変態記事」事件
 草の根の広がり方
 ネットを基盤とした「世論」

3.ヤフーvs.グーグル 日本決戦
 「ヤフーニュース」のビジネスモデル
 「グーグルニュース」の編集方針
 それぞれの差異
 男の子牧場と変態記事
 ネット世論

4.1000万クリックでビジネス成立
 J-CASTニュースの経営
 SEO対策
 増殖の経緯
 「くまぇり」と「きっこ」
 何かのニュース

5.「炎上メディア」の汚名と名誉 ※PDFデータ公開中
 1.5次情報のコンセプト
 炎上メディア
 読者急増の仕組み
 リア・ディゾンの局部?
 サイトからサイト、ブログからブログへ
 デジタルコンテンツ
 オナニーマラソン
 匿名性
 ミドルメディアの役割
 ミニコミとブログ

6.市民記者「オーマイニュース」の失敗
 オリジナルコンテンツ
 ネット右翼
 市民記者

7.政権交代とネットニュース
 記者会見のオープン化
 自民党の会見
 記者クラブの存在
 新聞記者時代
 雑誌編集者時代
 ネットの世界へ

8.ネットvs.新聞 最終戦争
 新聞とテレビの現在
 百貨店と専門店街
 読者との距離
 新聞の未来
 米国の現状
 新しいメディアのモデル
 ネットメディアの未来

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