2010.05.01

▽堕ちた翼の真実

大鹿靖明『堕ちた翼 ドキュメントJAL倒産』(朝日新聞出版)


本書は、『ヒルズ黙示録』などの著者である、アエラ編集部所属の大鹿靖明が、JAL倒産に至る過程を叙述したものである。

ただ、その内容は、民主党政権成立後から、前原・国土交通大臣によるタスクフォースの設立・解散、企業再生支援機構による支援決定までの政治の舞台裏が中心であって、倒産企業のドキュメントとしてみると、その分析はやや物足りない。

しかし、JAL倒産の要因の一つとして、しばしば指摘されてきた「政治家に赤字路線を押し付けられた」とする意見には次のように反駁している。

《JALの国内不採算路線は、政治家や航空官僚の介入によって開設されたものではなく、むしろ旧JASとの経営統合によってもたらされている。……それとて、低需要地方(年間30万人未満)の路線シェアは、ANAの66・7%に対し、JALは33・3%しかない。乗客の少ない路線はANAのほうが多く抱えているのに、ANAはつぶれず、JALは倒産した。JAL倒産の遠因に、国内の赤字路線と因果関係を結びつける議論には無理がある。》(pp.156-158)

また、JAL内で出世の階段を登っていく生え抜きのエリート社員たちと、地味な仕事を押し付けられている派遣社員や中途入社の社員たちとの対比は、現在の日本社会の様相を表しているとも言える。著者は、最後の一文「JALの次は、メディアである。」(p.308)に、どんな想いを込めたのであろうか?

[目次]
第1章 政権交代
第2章 タスクフォース
第3章 タスクフォース2失速
第4章 寄生産業
第5章 負の遺産
第6章 ダッチロール
第7章 二次破綻リスク


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