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2010年6月

2010.06.30

▽『拝金』

堀江貴文『拝金』(徳間書店)

ホリエモンこと堀江貴文氏の自伝的小説。後書きによると、《フィクションだからできる「ノンフィクション」。どれが本当のことか、宝探しの気分で探してもらえればなと思います》(p.268)とのことですが、なかなか楽しめます。

文章も読ませるし、小説的な引きも上手いので、ゴーストライターがいるか、手練れの編集者がついていたのだろうな、と推測しています。まあ、読んで、損はしないと思いますよ。

より詳しく知りたい人は下記のノンフィクションもどうぞ。

大鹿靖明『ヒルズ黙示録―検証・ライブドア』(朝日文庫)

大鹿靖明『ヒルズ黙示録・最終章』(朝日新書)

▽ホリエモンが語る塀の中の暮らし
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/03/post-c16c.html
▽ホリエモンの右腕だった男の弁明の書
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/03/post-f9f7.html
▽産経新聞の抱える闇とは
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/03/post-1613.html

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2010.06.17

▽新しい経済学の入門書にふさわしい

大竹文雄『競争と公平感 市場経済の本当のメリット』(中公新書)

本書によると、「日本は市場経済への期待も国の役割への期待も小さいという意味でとても変わった国である。」(p.9)という。そして、「日本人が運やコネを重視する価値観をもつようになった」(p.17)のは、2000年代の不況に直面してからだという。さらに、小泉構造改革によって導入されようとした市場主義は不完全なもので、「既存大企業を保護する大企業主義と同一視されてしまったために、反大企業主義が反市場主義になってしまっている」と指摘する。

本書は、経済学の書というよりは、これまで社会学や政治学、心理学などが扱ってきたテーマを、経済学的な統計を重視した手法で切り込んでいくところが面白い。これは、神経経済学(ニューロエコノミクス)や行動経済学などの、経済学の新しい分野の発達を反映したものである。古典的な経済学が、人間を合理的な存在とみなしてきたのだが、神経経済学や行動経済学では、必ずしもそうではないことを前提に研究が進められている。

本書は、そうした研究の成果が数多く集められており、入門書としてもよくできている。もちろん、いくつかの論点については、今後、社会学、政治学、心理学の研究者などからの批判や反論もあるだろうし、もちろん、そうあって欲しい。

[目次]
プロローグ 人生と競争
I 競争嫌いの日本人
 1 市場経済にも国の役割にも期待しない?
 2 勤勉さよりも運やコネ?
 3 男と女、競争好きはどちら?
    コラム1 薬指が長いと証券トレーダーに向いている?
 4 男の非正規
 5 政策の効果を知る方法
 6 市場経済のメリットは何か?

II 公平だと感じるのはどんな時ですか?
 1 「小さく産んで大きく育てる」は間違い?
 2 脳の仕組みと経済格差
 3 20分食べるのを我慢できたらもう一個
 4 夏休みの宿題はもうすませた?
    コラム2 わかっているけど、やめられない
 5 天国や地獄を信じる人が多いと経済は成長する?
 6 格差を気にする国民と気にしない国民
 7 何をもって「貧困」とするか?
 8 「モノよりお金」が不況の原因
 9 有権者が高齢化すると困ること

III 働きやすさを考える
 1 正社員と非正規社員
 2 増えた祝日の功罪
 3 長時間労働の何が問題か?
    コラム3 看護師の賃金と患者の死亡率
 4 最低賃金引き上げは所得格差を縮小するか?
 5 外国人労働者受け入れは日本人労働者の賃金を引き下げるか?
 6 目立つ税金と目立たない税金

エピローグ 経済学って役に立つの?
競争とルール あとがきにかえて

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2010.06.16

▽官邸敗北

長谷川幸洋『官邸敗北』(講談社)


昨今の政界内幕物の第一人者と言えるのが、東京新聞論説委員の長谷川幸洋だろう。本書の発売は5月20日だったが、その直後に鳩山首相が普天間問題をこじらせたことから引責辞任、そして、菅首相の登場という、まさに絶妙のタイミングで上梓された。

本書の叙述の中心をなすのは、財務省を取り込むことで事業仕分けを成功させたはずの鳩山政権が、2009年末頃から急速に財務省との関係を悪化させていった、その背景に何があったのか、である。どうやら、JALの再建を巡って、当時の菅副総理と財務省との間に軋轢があったようだ。

その後、菅が財務大臣に就任した際には、「乗数効果も知らない財務大臣」と批判されたが、この点について著者は、「財務省はその気になれば、いくらでも答弁メモを用意できたはずなのに、あえてサボったとみて間違いない」(p.44)と指摘する。財務官僚のお灸が効いた菅は、その後は、役人の書いたメモを丸読みするようになり、増税を含めた財政再建路線へと急展開していく。

民主党の掲げる「脱・官僚」は、本当に実現させることができるのでしょうか?

[目次]
第1章 官邸連続ミステリ-
第2章 民主党抱き込み工作
第3章 ド-ナツ化する政権
第4章 操縦されるマスメディア
第 5章 財政と天下りを分けるな
終章 新たな政界再編の幕が上がる

[参考]▽日本国の正体とは?
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/10/post-c558.html

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2010.06.15

▽警察庁長官狙撃事件の真犯人は?

鹿島圭介『警察庁長官を撃った男』(新潮社)

竹内明『時効捜査 警察庁長官狙撃事件の深層』(講談社)

2010年3月に時効を迎えた国松警察庁長官狙撃事件――。

この事件の真犯人は――。

まず、この事件の捜査を指揮した警視庁公安部は、「犯人はオウム真理教の信者である」として、時効後に、なぜそうした結論を得たかについての見解をまとめたファイルをネットで公開していますが、これは、極めて異例なことだそうです。

一方、鹿島圭介の『警察庁長官を撃った男』(新潮社)では、警察のオウム真理教に対する捜査が手ぬるいと感じた男による犯行だったとしています。刑事部が、この人物を立件するための証拠を集めていったが、捜査を指揮した公安部が、それらには見向きもしなかったことが明らかにされています。

最後に、竹内明の『時効捜査 警察庁長官狙撃事件の深層』は、捜査の迷走ぶりが叙述の中心となっていますが、最後に、オウムでも、鹿島が指摘する人物でもない、別の真犯人がいるのではないか、と示唆されて終わっています。

はたして、真犯人は誰なんでしょうか? 謎は深まるばかりです。

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