2010.08.13

▽隠れた名著『すぐれた意思決定』

印南一路『すぐれた意思決定―判断と選択の心理学』(中央公論社)

当ブログでは、あまり、この手のハウツーものは取り上げないのですが、今回は、隠れた名著『すぐれた意思決定』を紹介したい、と思います。本書の刊行は1997年(文庫版は2002年)と、ちょっと古いのですが、今でも十分読むに耐える内容です。

本書のテーマは、タイトルにあるように「すぐれた意思決定」であり、著者は第三部において、すぐれた意思決定論として「診断論的意思決定論」を提唱します。

しかし、本書では、その主題に入る前に、すぐれた意思決定の対極にある駄目な意思決定法である「直感的意思決定」が、なぜ生ずるのかを第二部で詳細に論じています。

著者によれば、「直感的意思決定」をもたらすものは、情報データによる罠、数値データにおける罠、記憶情報における罠、推論における罠、直観的な決定ルールの罠の五つの罠であり、いかに、この罠から逃れるかが、すぐれた意思決定へと至る上での重要なポイントとなるそうです。

また、第三部の「組織の意思決定」では、「集団的意思決定の病理現象」として、メンバーが努力程度を下げてしまう「社会的手抜き」、多数の意見に従う「同調圧力」、少数の意見が影響力を持つ「少数派影響力」、集団による討論が極論を生み出す「集団極化現象」、誰も望んでいないことを決めてしまう「過剰忖度」、凝集性の高いエリート集団が反論理的・非人間的な意思決定を下す「病理的集団思考」を挙げています。

最近起きた、虐待児放置事件や非実在高齢者の問題は「社会的手抜き」に相当すると言えるでしょう。著者は、以上のような反省を踏まえて、すぐれた意思決定をするには、どうすべきかを提案しています。

[目次]
第1部 我々と意思決定
 意思決定とは何か
 世界の性質と情報を考える
 我々の認知能力を考える
第2部 直観的意思決定のおとしあな
 情報データによる罠
 数値データにおける罠
 記憶情報における罠
 推論における罠
 直観的な決定ルールの罠
第3部 高質な意思決定の実現と組織の意思決定
 効果的に学ぶために
 創造力と想像力
 組織の意思決定


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