2010.08.23

▽プロジェクトXの功罪

今井彰『ガラスの巨塔』(幻冬舎)

本書は、元NHK『プロジェクトX』プロデューサーによる、実録風小説で、「全日本テレビ」は「NHK」、「チャレンジX」が「プロジェクトX」、主人公の西悟が著者というのは誰にでもわかります。

『プロジェクトX』をめぐる騒動や、著者がNHKを辞めるきっかけとなった万引き事件の「真相」などが、当事者の視点から語られています。

私は、『プロジェクトX』は、ほとんど見たことがなかったのですが、それでも、どういう番組かは、知っていて、その範囲であえて言えば、「過剰な演出や一方的な断定の目立つ、ちょっと危険なノンフィクション」と言ったところでしょうか。

そして、日本経済が行き詰まる中で、過去の、主に企業で活躍した名も無き人々を神格化する、ノスタルジーの強い番組という印象も持っていました。もちろん、この「神格化」が、「過剰な演出」や「一方的な断定」をもたらす要因の一つであったことは言うまでもありません。

「捏造」と批判された回についても、本書では、「取材した相手にだまされた」ことになっていますが、「ノンフィクションであれば、少しくらいは周辺取材や裏付け取材をしろよ」と思ってしまいます。

もちろん番組としては、視聴者のニーズに応えた部分もあるのでしょうが、『プロジェクトX』のヒット後には、テレビだけでなく、さまざまなメディアで『プロジェクトX』風の過剰な演出のノンフィクションが増えてしまって、その点は「罪」だと言えるのではないかと思います。

[参考]
▽鉄の沈黙はだれのために
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/08/post-b923.html


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