2010.09.16

▽『ガサコ伝説』

長田美穂『ガサコ伝説―「百恵の時代」の仕掛人』(新潮社)

本書の主人公ガサ子とは、現在のマガジンハウス(旧社名は平凡出版)が発行していた芸能誌月刊誌『平凡』の伝説の編集者、折笠光子のあだ名である。ガサ子の由来は、折笠のカサにがさつのガサが混ぜあわさったものだという。

このガサ子は、あこがれの『平凡』のグラビア担当のアルバイトに応募し、社員編集者になった後は、山口百恵、森昌子、野口五郎、南沙織など多くの芸能人の信頼を得て、『平凡』の黄金期をつくり、ついには編集長にまでのぼりつめる。

しかし『平凡』は、1987年12月号をもって休刊する。《この当時、社内では「Hanako」の創刊準備が進められていた。「『平凡』を止めたのは、新雑誌に資金を集中投下するためだ」と噂された。》(p.210)

ガサ子は、『平凡』休刊後は、書籍の営業員として書店周りをはじめるが、1997年に肝臓癌のため急逝する。享年57歳。

著者が本書を書いた狙いは、プロローグにあるように、

《昭和を生きた一人の女性の、職業人としての軌跡が一つ。
 メディアとしての「平凡」の盛衰と存亡の経緯が、もう一つ。》(p.16)

の二つである。ただ、昭和が遠くなり、雑誌自体が力を失いつつあるいまでは、本書で描かれた二つの軌跡は、いずれも遠くの光景を見ているように感じられてしまう。本書は、もう少し早く書かれるべきだったのだろう。


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