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2010年10月

2010.10.31

▽『9・11の標的をつくった男』

飯塚真紀子『9・11の標的をつくった男  天才と差別―建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社)

9・11のテロによって倒壊させられたニューヨークのWTC(世界貿易センター)ビル。このビルの設計を手がけた日系人のミノル・ヤマサキ評伝で、とても興味深く読みました。

ミノル・ヤマサキがWTCの設計者の候補の一人に選ばれた理由については、複数の識者が、無名の日系人建築家というアウトサイダーであり、そのことが、貿易ビルという複数の人種が働くビルにふさわしかったから、と指摘しています。

しかし、そもそも、WTCの設計を日系人が行ったことすら、本書を読むまで、知りませんでしたが、ミノル・ヤマサキは当時のタイム誌の表紙にもなったそうです。

本書のタイトルをつけるとすれば、やはり『9・11の標的をつくった男』にせざるをえないんだろうなとは思いますが、それにしても日本人は、海外で活躍する日系人に関して冷淡な気もしますが、それはどうしてなんでしょうね。

[目次]
プロローグ
アメリカに渡った兄弟
シアトルのスラム暮らし
アラスカの“キャナリー・ボーイ”
建築家ヤマサキの誕生
空のグランド・セントラル駅
「静寂と歓喜」に目覚めた日本との出合い
光と影のマクレガー
摩天楼への道
離婚、そして再婚
世界貿易センタービルという混沌
葛藤する巨塔
栄光と引きかえに壊れた家庭
サウジ・コネクション;生涯をかけた仕事
死してなお
エピローグ

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2010.10.30

▽『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』

アンドリュー・ロス・ソーキン 『リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) 追いつめられた金融エリートたち』(早川書房、加賀山卓朗訳)

アンドリュー・ロス・ソーキン 『リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下) 倒れゆくウォール街の巨人』(早川書房、加賀山卓朗訳)

米ニューヨーク・タイムズ紙の金融や企業合併専門のトップ記者である著者が、2009年9月15日のリーマン・ショックに至る舞台裏を、当時の多くの金融関係者にインタビューを行って描き出したものである。

本書の冒頭では、JPモルガンCEOが、リーマン・ブラザーズ、メリルリンチ、AIG、モルガン・スタンレー、ゴールドマンサックスの倒産に備えろ、と部下に伝えるところから始まる。

この5つの金融機関の内、リーマン・ブラザーズの倒産の直接の引き金は、イギリス政府からもたらされたという。イギリスのバークレイズがリーマンの優良資産を引き継ぐという話が進んでいたが、イギリスの金融当局は「株主の承認が必要」とこれを拒んだことが、リーマン・ショックを引き起こした。

メリルリンチは、リーマン・ショックと同じ日に、バンク・オブ・アメリカに買収されることが発表された。AIGも、経営危機が表面化し、公的資金によって救済された。

モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスは、FRBの支援が受けやすい銀行持ち株会社へと移行することで、危機を乗り切った。

倒産した金融機関の経営者の証言もあり、破滅へと至る様子があまさず綴られている。一級品の歴史的記録が、これほど早く読めるのも驚きというほかない。

[目次]

『リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上)』
プロローグ   大きすぎてつぶせない   
第1章  リーマン株急落   
第2章  ポールソン財務長官の怒り
第3章  NY連銀総裁ガイトナーの不安
第4章  バーナンキFRB議長の苦闘
第5章  リーマン収益報告への疑念
第6章  襲いかかる空売り
第7章  揺れるメリルリンチ
第8章  瀕死の巨人AIG
第9章  ゴールドマン・サックスの未来
第10章 ファニーメイとフレディマック株急落
第11章 リーマンCEOの焦り
第12章 倒れゆく巨大金融機関   
第13章 誰がリーマンを救うのか?

『リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下)』
第13章  誰がリーマンを救うのか?(承前)
第14章  全CEO招集
第15章  リーマンの最後
第16章  AIG倒れる
第17章  モルガン・スタンレー絶体絶命
第18章  三菱UFJからの電話
第19章  揺らぐゴールドマン・サックス
第20章  ワシントンDCへの最終招集
エピローグ  リーマン・ショックのあとに  

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2010.10.29

▽『菊とポケモン』

アン・アリスン『菊とポケモン―グローバル化する日本の文化力』(講談社、実川元子訳)

『菊とポケモン』(原題: MILLENIAL MONSTERS: Japanese Toys and The Global Imagination 2006 )の著者であるアン・アリスン( Anne Allison )は、東京でホステスとしても働いたことのあるアメリカの文化人類学者。

本書では、日本のポピュラー・カルチャーが、主にアメリカでどのように受容されていったかを詳述している。考察の中心は、ポケモンであるが、そのほかにもパワーレンジャー、セーラムーン、たまごっちなども、アメリカでどのように受容されていったかについて述べられている。

日本におけるポケモンの大ヒットを受けて、任天堂はアメリカへの進出を考えたが、アメリカ側の業者は、ポケモンの展開にはあまり乗り気ではなかったという。

《ポケモンには強いヒーロー的なキャラクターがいないし、マンガのテンポはスローだし、アニメ、映画と読み物のストーリーラインは複雑で、しかもゲームをもとにしたプロパティである。》(p.316)

こうしたデメリットを克服すべく、さまざまな改変が加えられたものの、それは、本来のポケモン持つテイストを壊さないように入念なものであったようだ。それがアメリカや他の国々でのポケモンのヒットにつながったことが伺える。

本書は、学術書としての水準には達しているものの、「ポケモン全米ヒットの秘密を解明!」というようなマーケティングの書を期待している向きには、読み通すのは骨が折れるかもしれない。

[目次]
第1章 魔法をかけられた商品
第2章 灰燼から立ち上がるサイボーグ-復興の時代
第3章 新世紀の日本-親密さのなかの疎外感 新世紀の親密さ
第4章 パワーレンジャー-国境を超えたスーパーヒーロー
第5章 セーラームーン-少女たちの華麗なアクションファンタジー
第6章 たまごっち-精霊となる人工装具
第7章 ポケットモンスター-ポケモンをゲットすることと資本主義とコミュニケーションをとること
第8章 「全部ゲットしちゃおう!」-米国(と世界)のポケモニゼーション

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2010.10.25

▽古代出雲の謎を解く

梅原猛『葬られた王朝―古代出雲の謎を解く』(新潮社)

古代日本史は、あまり詳しく無いのですが、ある週刊誌の書評欄で紹介されていたので本書を手に取りました。

まず、『古事記』や『日本書紀』で語られるいわゆる記紀神話は、高天原神話、出雲神話、日向神話の三つの神話からなっています。このうち高天原神話は、天で起きたことが語られたものであるためフィクションであることは間違いないのですが、出雲神話と日向神話もまた作り話である、と長いこと信じられてきました。

しかし、1988年に世界的に著名な人類学者レヴィ=ストロースが、「日向神話は歴史的事実を反映しているのではないか」と語ったことをきっかけに、著者は、2000年に『天皇家のふるさと日向を歩く』(新潮社)を書き、日向神話は事実を反映しているというレヴィ=ストロースの説を支持しました。

一方、出雲神話について著者は、40年ほど前に書いた『神々の流竄』においては、フィクションであるという立場をとっていました。その根拠は、出雲神話を裏付けるような大規模な遺跡がない、という事実にありました。

しかし、1980年代半ばから、出雲においても大規模な遺跡が発見されるようになり、出雲神話も歴史的事実を反映してるのではないかと著者は考えるようになりました。そして、自著『神々の流竄』を否定するために、本書『葬られた王朝―古代出雲の謎を解く』を書く決意をしたそうです。

とまあ、ここまで十分お腹いっぱいなんですが、古代史の知識がないと最後まで読むのはなかなか骨が折れるのですが、それなりの知的興奮をもたらしてくれます。まあ、古代人であっても、まったく根も葉もない嘘を、もっともらしくでっち上げるのは難しいということなんでしょうね。

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2010.10.24

▽電子書籍の時代は本当に来るのか?

歌田明弘『電子書籍の時代は本当に来るのか』(ちくま新書)

著者自身が、「ここ十数年で『電子書籍の時代がくる』と何度も言われ、そのたびにこうしたテーマで原稿を書いた」と自重気味に述べているように、2010年も何度目かの電子書籍元年に当たるらしい。本書は、電子書籍をめぐる最近の国内外の動向を網羅的に提示しているが、情報自体はどこかで目にしたことのあるものが多い。

また、さまざまなジャンルのものがすべて「電子書籍」としてくくられているために、細かい情報は多いものの、全体的な見取り図が描けていない。佐々木俊尚の『2011年 新聞・テレビ消滅』(文春新書)のように、メディア産業を「コンテンツ」、「コンテナ」、「コンベヤ」の三つの層にわけるなどの考え方のフレームワークが提示されるべきだと思う。

少なくとも、ニュース、役に立つ情報、楽しむためのコンテンツの三つくらいにわけて考えるべきだし、それぞれの分野ではじょじょに電子化は進んできているのは間違いない。

[参考]
▽2011年に新聞・テレビ消滅の根拠は……
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/07/index.html
▽『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/03/ipad-vs-c1ab.html

[目次]
まえがき
第一章 電子書籍端末の問題はどこにあるのか?
1 最初の「電子書籍の時代が来る」
 ●本はやっぱり消える?
 ●一九九八年のカラーの電子書籍端末
 ●コロンブスの卵
 ●「電子書籍の夢」
 ●実験への疑問
 ●電子書籍実証実験の帰結と新たな始まり
2「紙の本がなくなる」――二度目の「騒ぎ」
 ●PDA電子書籍
 ●増え始めた電子書籍
 ●「iPhoneの前身」の実証実験
3 「リブリエ」の失敗――何度目かの「電子書籍元年」
 ●中国市場の影
 ●「教育特需」のおこぼれの電子書籍市場?
 ●読書端末をただで配る?
 ●ソニーの読書端末
 ●反射型表示のゆくえ
 ●あきらめない端末メーカー2社
4 ケータイ小説とブログの意味
 ●集団的著作と個人メディア
 ●ケータイ電子書籍の可能性と限界
 ●ケータイ小説ブームを支えたネット・メディアの性質
 ●完成度の高いものはかならずしも必要ではない
5 キンドルはなぜ成功したのか
 ●アマゾンの「逆ざや商法」
 ●十分に準備したアマゾン
 ●キンドルを買ったのは誰か?
 ●キンドル2の発売
 ●小売価格をつけるのは誰か?
 ●「安売り」への懸念
 ●印刷版も電子版もつくればコストは増える
 ●アマゾンとアップルのソフト戦争
 ●キンドルの問題点
6 iPadは「本」の破壊をもたらす?
 ●iPadはネットのコンテンツを使う装置
 ●アップルの「検閲」
 ●iPadと雑誌
 ●iPadとハリウッド型コンテンツ
 ●読書端末としてのiPadの問題点
7 激化する読書端末戦争と日本語表示できるキンドル3の登場
 ●読書端末の価格引き下げ競争が始まった
 ●大手書店からさらに一一九ドルの端末が‥‥
 ●日本語表示可能なキンドル3が出たものの‥‥
8 電子書籍をめぐる状況は変わったか?
 ●電子書籍市場が成長するには読書端末が必要
 ●日本でも端末がいろいろ出れば‥‥
第2章 グーグルは電子書籍を変えるか?
1 あらゆる書籍のデジタル化に乗り出したグーグル
 ●騒動の始まり――図書館の本をまるごと電子化し始めたグーグル
 ●本の全文検索の登場――先行するアマゾン
 ●あと追いするグーグル
 ●追いついたグーグル
 ●グーグル・ブック検索の意味
 ●グーグルの「使命」
 ●「グーグル・プリント」の限界とグーグルが見つけた解決方法
 ●図書館プロジェクト
 ●新しい検索を立ち上げるさいの四条件
2 グーグルの「誤算」――ブック検索裁判
 ●グーグルという特殊で不思議な会社
 ●記者会見に現われた無邪気なグーグルの二人の創立者
 ●フェア・ユース
 ●苦衷の米出版社協会長
 ●グーグルの言い分
3 グーグルによって生まれる新たな電子データ市場
 ●和解案の詳細
 ●グレイな解決がグーグルにとってベスト
 ●グーグルがブック検索訴訟で得たもの
 ●オプト・アウトの出版物への適用
 ●孤児本とオプト・アウト
 ●和解案の問題点
 ●グーグルの経営がうまくいかなくなったら、どうなる?
4 日本語版グーグル・ブック検索の誕生
 ●書店との連携の可能性を示唆したグーグル
 ●いち早く提携した慶応大学
5 猛反発されたグーグル
 ●突然出されたグーグルの「公告」
 ●米国での和解に拘束される理由
 ●グーグルと和解管理者の大失敗
 ●日本の著作権者の選択肢
 ●和解案に対する作家団体の反発
 ●ハーバード図書館長の懸念
 ●グーグルがヨーロッパにもたらした不安
 ●「人気ランキング」の弊害
 ●デジタル化プロジェクトを左右する国民性
6「グーグル撃退」のツケは誰が負うのか?
 ●グーグル訴訟・修正和解案の問題点
 ●ツケを払うのは結局、社会全体
 ●「黒船」を撃退して
7 膨大な既刊本の電子化を誰がやる?
 ●長尾真氏の電子図書館構想
 ●長尾構想の問題点
 ●韓国の電子図書館
 ●図書館の「商業化」?
 ●進展し始めた長尾構想
8 グーグル「再上陸」
 ●グーグル・エディション誕生
 ●グーグル・エディションの特徴――コスト負担なしの電子化
 ●多様なオンライン書店、多様な導線
 ●街の書店との連携を模索しているグーグル
 ●グーグル・エディションの小売価格を決めるのは誰か?
 ●グーグル・エディション日本語版の問題点
 ●修正和解案にもあった「リセール」の項目
 ●「電子書籍貯蔵庫」の方向に一歩踏み出したグーグル
 ●競争が激しくなってきた電子書籍取次
 ●グーグルがアマゾンや楽天のライバルになる
 ●グーグル・エディションはウェブを変える
第3章 「ネットは無料」の潮目が変わろうとしている?
1「ニュース記事は無料」の時代は終わるのか?
 ●新聞の読書端末配信がウェブを変える
 ●ネットに完全移行した新聞社の収入は100分の1?
2 サイトに高額課金すると新聞読者は戻ってくる?
 ●ニュースが私を見つけてくれる時代の始まり
 ●2年ごとに毎日読む人が10%ずつ減っている30歳代
 ●印刷版からウェブへのニュース講読の移行はどのようなものになる?
 ●「歳をとれば新聞を読む」というのはウソ
 ●「オンライン版は割高」という常識はずれの価格設定
 ●「ネットは無料」の魔法が解けた?
 ●長期的にはやはりジリ貧になる
 ●有料と無料の混在(フリーミアム)がニュース・サイトの生きる道?
 ●ニュース・サイトの課金ネットワーク――「ジャーナリズム・オンライン」の試
3 メディア王マードックの野望――読者が減っても収入は増える?
 ●9割が支払い拒否にもかかわらず課金を始める新聞
 ●95%のアクセスを失っても収入は増える
4 ウェブで融合するニュース記事と書籍
 ●予想を超える購読者がいても不思議ではない日経の電子版
 ●課金プラットフォームを握るのは誰か?
 ●日経のやらないことをやった朝日
 ●本の山のなかから探しているものに出会う新たな方法
 ●セルフ・パブリッシングに必要なのは課金プラットフォーム
 ●ノンフィクションや調査報道を救うウェブ新書
 ●携帯端末向きのあら手の電子書籍
5 電子書籍がウェブの構造変化を引き起こす?
 ●「ウェブのコンテンツは無料」になぜなったのか
 ●「オープン=無料ではない」と主張するグーグル
 ●市場破壊の低価格商品
 ●「新聞崩壊」を心配するグーグル
 ●読書端末の登場でウェブが変わる?
あとがき――再販制崩壊を導く電子書籍

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2010.10.23

▽買わされる「名付け」 10の法則

則定隆男『買わされる「名付け」 10の法則』(日経プレミアシリーズ)

『買わされる「名付け」 10の法則』というタイトルに釣られて買ってしまいました。その意味では、この本の名付けはうまくいってると言えます(笑)。

うまいネーミングを十のカテゴリーにわけて説明していて、とても楽しく読むことができます。ただ、よくよく考えるといくらネーミングが良くても、商品やサービスが良くなければ廃れてしまうので、続編として、いい名付けだが失敗したもの、あるいは、名付けは悪いが成功したもの、などについても紹介してもらいたいところですね(笑)。

[目次]
プロローグ コトバを売る
第一章 際立たせる、覚えさせる
第二章 違いを出す、違いを説明する
第三章 イメージを利用し、イメージを変える
第四章 ネガティブからポジティブへ
第五章 気づかせ、意識を変える
第六章 目に見えるように描く、場面を描く
第七章 時代を捉え、リードし、先取りする
第八章 憧れを抱かせ、自信を持たせる
第九章 ターゲットを絞る、用途を絞る
第十章 ルールに従い、責任を回避する
エピローグ グローバル化に向けて

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2010.10.22

▽本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み

佐々木俊尚『本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み』(日本経済新聞出版社)

『日経PC21』に連載されたウェブサービスについてのコラムをまとめたもので、実用性を重視したサイト録となっていて役に立つ。

中でも面白かったのが、『ポイ探』(ポイント探検倶楽部)というサービス。これは、クレジットカードや電子マネーなどを使った時に得られるポイントを、効率よく貯めたり、他のポイントに交換する方法を教えてくれるサイト。ポイントをわらしべ長者のように膨らませていくことができないかと夢想してしまいました(笑)。

ポイ探
http://www.poitan.net/

ポイント探検倶楽部・佐藤温『かんたん ポイント&カード生活』(人生設計応援mook)

佐々木俊尚『本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み』(日本経済新聞出版社)
[目次]
【衣食住を豊かに】
プーペガール/アトリエ/アットコスメ/食べログ/サンプル百貨店/Alike/おとりよせネット/シュフー/クックパッド/スマイティ/リビングスタイル
【エンタテインメントを楽しむ】
ツタヤディスカス/フィルモ/本が好き/ニコニコ動画/Spider/キンドル/まぐまぐマーケット
【外に出かけよう】
一休/ポイ探/フォートラベル/iコンシェル
【誰かとつながりたい】
発言小町/エディタ/みんなの政治/ウェブポ/エキサイト婚活
【生活のお悩み相談】
Qlife/OKウェイブ/オールアバウトプロファイル/マニュアルネット

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2010.10.17

▽『冤罪法廷』

魚住昭『冤罪法廷 特捜検察の落日』(講談社)

ジャーナリストの魚住昭が、厚生労働省の村木厚子元局長の冤罪となった郵便不正事件、いわゆる『凛の会事件』を追ったもので、9月10日に、局長への無罪判決が出る前に発売されている。

魚住昭は、すでに『特捜検察の闇』において、特捜検察の堕落ぶりを指摘している。

▽2001年の時点ですでに指摘されていた特捜検察の闇
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/04/2001-1cf4.html

そもそも郵便不正事件は、民主党の政治家へとつながるはずという見立てで進められたのが頓挫し、途中で、厚労省のキャリア官僚逮捕へと、舵を切ったが、それも失敗したことが明らかになっている。

魚住は、終章において、村木元局長の弁護をつとめた弘中惇一郎弁護士に、自身が「特捜の正義」を信じていた頃の特捜部について尋ねている。

《 この問いに弘中は、少し考え込んだ末にこう答えた。
「あえて言うとするなら、以前は悪質・巧妙だった捜査が、悪質・ズサンなものになったということでしょうね」
 弘中の答えは胸にすとんと落ちた。》(p.281)

また、本書の発売前後にも、政治と検察の絡む事件が次々と起きている。

9月7日 鈴木宗男の上告を最高裁が棄却
9月10日 村木厚子元局長に無罪判決
9月14日 民主党代表選挙、検察審査会が小沢一郎「起訴相当」を密かに決議
9月21日 朝日新聞が大阪地検のFD改竄をスクープ、前田検事逮捕
9月24日 那覇地方検察庁が尖閣島問題で中国人船長を独自判断で釈放
10月1日 前田検事の上司二人が「犯人隠避」容疑で逮捕
10月4日 検察審査会が小沢一郎「起訴相当」を発表

司法があまりにも政治に介入しすぎている状況は、どうしたら改善できるのだろうか。

[参考]
▽ホリエモンが語る塀の中の暮らし
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/03/post-c16c.html
▽司法記者が見た特捜部の崩壊
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/04/post-f59a.html
▽2001年の時点ですでに指摘されていた特捜検察の闇
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/04/2001-1cf4.html
▽リクルート報道の再検証
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/11/post-e240.html
▽リクルート事件――いまなお残る疑問
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/11/post-0d34.html

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2010.10.04

▽日本経済の正体(3)――『財政危機と社会保障』

鈴木亘『財政危機と社会保障』(講談社現代新書)

各所で話題の日本経済に関する本を紹介していますが、その第三弾は、『財政危機と社会保障』。同じ著者の本については、すでに当ブログでも、紹介しています。

▽鈴木亘『年金は本当にもらえるか?』、『社会保障の不都合な真実』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/08/post-3bf7.html

内容的には、上記の二冊と重なっていますが、本書では、「増税で強い社会保障」という主張に対する経済学的な批判を展開しています。また、国の借金はいくらか、という問いに対しては、前回紹介した『2020年、日本が破綻する日』とほぼ同じ主張をしています。このあたりが経済学者のコンセンサスと言えるでしょう。

▽日本経済の正体(2)――『2020年、日本が破綻する日』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/10/2020-0fff.html

さて、本書で興味深かったのは、第四章の『年金改革は、第二の普天間基地問題になるか』。ここでは、日本の年金制度の歴史を振り返っていますが、日本の年金制度は、厚生年金にしろ、国民年金にしろ、もともとは積立方式で運営されていたのが、いつの間にか賦課方式に切り替えられてしまった、という驚くべき事実が紹介されています。

《田中角栄が首相であった一九七〇年代前半に始まった大盤振る舞いは大規模で、当時の高齢者達の年金額を、彼等が支払ってきた保険料をはるかにしのぐ水準に設定しました。また、当時の勤労者の保険料も、彼等が老後に受け取る年金額から考えると、はるかに低い水準に据え置かれ続けられました。》(p.138-139)

このため当初積み立てられていた積立金は取り崩され、また、厚生労働省や社会保険庁、それらの天下り先などが、さまざまなかたちで無駄遣いをして失われてしまいました。

《厚生労働省自身の最新の計算によれば、本来、厚生年金で八三〇兆円、国民年金で一二〇兆円存在しなければならない積立金は、二〇〇九年時点で厚生年金が一四〇兆円、国民年金で一〇兆円程度存在するにすぎません。》(p.139)

合計で八〇〇兆円の積立金が失われたことになります。

[目次]
第一章 「日本の借金」はどのくらい危機的なのか?
第二章 「強い社会保障」は実現可能か?
第三章 世界最速で進む少子高齢化、人口減少のインパクト
第四章 年金改革は、第二の普天間基地問題になるか
第五章 医療保険財政の危機と医師不足問題
第六章 介護保険財政の危機と待機老人問題
第七章 待機児童問題が解決しない本当の理由
第八章 「強い社会保障」ではなく「身の丈に合った社会保障」へ

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2010.10.03

▽日本経済の正体(2)――『2020年、日本が破綻する日』

小黒一正『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアシリーズ)

各所で話題の日本経済に関する本を紹介していますが、その第二弾は、『2020年、日本が破綻する日』。著者の主張は、このままいくと、2020年までに、家計貯蓄に支えられてきた国債発行ができなくなるため、国債の暴落と金利の上昇が同時に起こる、というもの。

こういう主張に対しては「狼少年」という批判も多いのですが、でも、遅かれ早かれ「狼」は確実にやってくる、と思います。

日本政府のバランスシートは2007年度末の時点で、資産は695兆円、負債は978兆円と、283兆円の債務超過となっています。

《これが民間企業であれば、通常、債務超過となった段階で倒産してしまうケースも多い。しかし、債務超過でも国が破綻しないのは、政府は国民から強制的に税を徴収できる権限、つまり「課税権」をもつからである。》(p.55)

この283兆円が、2007年時点の純債務(ネット)であり、対GDP比は約60%で、総債務(グロス)の対GDP比は約190%に比べれば、ずっと額が小さいと言われてきました。

しかし、このバランスシートの資産の中には、道路や川などの社会資本が含まれており現実には売却できない、また将来の年金の支払いのための積立金なども含まれていてすべて取り崩すことはできないそうです。さらに、社会保障の「暗黙の債務」1150兆円を加えると、1430兆円もの債務超過となる可能性もあるそうです。

本書においても、著者は、さまざまな処方箋を提示していますが、これも実行に移すには、相当な痛みを伴うものであることが予想できます。そして、やはりこちらも、「もう手遅れなんじゃないの?」という絶望感に襲われてしまいます。

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2010.10.02

▽日本経済の正体(1)――『デフレの正体』

藻谷浩介『デフレの正体――経済は「人口の波」で動く』(角川oneテーマ21)

各所で話題の日本経済に関する本を続けて三冊読みましたので、順に紹介していきたいと思います。まずは、『デフレの正体』。著者の主張は、1990年代から続くデフレの原因は、15歳から65歳までの生産年齢人口の減少にある、というもの。

《この「生産者年齢人口減少に伴う就業者数の減少」こそ、「平成不況」とそれに続いた「実感なき景気回復」の正体です。戦後一貫して日本を祝福してくれていた「人口ボーナス」が九五年頃に尽き(新規学卒者>定年退職者という状況が終わり)、以降は「人口オーナス」の時代が始まった(新規学卒者<定年退職者の時代になった)ということです。》(p.134-135)

「就業者数の減少」は、そのまま消費者人口の減少につながります。その結果、1996年から2002年にかけて、国内新車販売台数、小売販売額、雑誌書籍販売部数、国内貨物総輸送量、自家用車による旅客輸送量、蛋白質や脂肪の摂取量、国内種類販売量、一人あたり水道消費量が減少に転じたという。「これは正に退職後の高齢者世帯の消費行動そのものではありませんか。」(p.136)

1990年代半ばから、すでに生産者年齢人口の減少は始まっているのですが、これから5年間は、さらに団塊の世代の高齢化と、少子化によって拍車がかかります。そして、対策としては一般的には、出生率の引き上げや移民の導入が叫ばれていますが、著者は、これらの対策は「絶対数があわない」と切って捨てています。

もちろん著者は、生産者年齢人口が減少する日本において、経済を立て直すには、どうすればいいのかについてさまざまな処方箋を提示してくれています。しかし、正直なところ「もう手遅れなんじゃないか?」という読後感、うっすらとした破滅感のようなものを抱いてしまうのも事実です……。

[目次]
第1講 思い込みの殻にヒビを入れよう
 景気判断を健康診断と比べてみると
 ある町の駅前に表れた日本のいま

第2講 国際経済競争の勝者・日本
 世界同時不況なのに減らない日本人の金融資産
 バブル崩壊後に倍増した日本の輸出
 世界同時不況下でも続く貿易黒字
 世界中から莫大な金利配当を稼ぐ日本
 中国が栄えれば栄えるほど儲かる日本 
 中国に先んじて発展した韓国・台湾こそ日本の大得意先
 フランス、イタリア、スイスに勝てるか

第3講 国際競争とは無関係に進む内需の不振
 「戦後最長の好景気」の下で減り始めた国内新車販売台数
 小売販売額はもちろん、国内輸送量や一人当たり水道使用量まで減少する日本
 なぜ「対前年同期比」ばかりで絶対数を見ないのか

第4講 首都圏のジリ貧に気付かない「地域間格差」論の無意味
 苦しむ地方の例……個人所得低下・売上低落の青森県
 「小売販売額」と「個人所得」で見える「失われた一〇年」のウソ
 「地方の衰退」=「首都圏の成長」とはなっていない日本の現実
 「東京都心部は元気」という大ウソ
 名古屋でも不振を極めるモノ消費
 地域間格差に逆行する関西の凋落と沖縄の成長
 地域間格差ではなく日本中が内需不振

第5講 地方も大都市も等しく襲う「現役世代の減少」と「高齢者の激増」
 苦しむ地方圏を襲う「二千年に一度」の現役世代減少
 人口が流入する首都圏でも進む「現役世代の減少」
 所得はあっても消費しない高齢者が首都圏で激増
 日本最大の現役減少地帯・大阪と高齢者増加地帯・首都圏
 「地域間格差」ではなく「日本人の加齢」
 団塊世代の加齢がもたらす高齢者のさらなる激増

第6講 「人口の波」が語る日本の過去半世紀、今後半世紀
 戦後のベビーブームが一五年後に生んだ「生産年齢人口の波」
 高度成長期に始まる出生者数の減少
 住宅バブルを生んだ団塊世代の持ち家取得
 「就職氷河期」も「生産年齢人口の波」の産物
 「生産年齢人口の波」が決める就業者数の増減
 「好景気下での内需縮小」が延々と続く

第7講 「人口減少は生産性上昇で補える」という思い込みが対処を遅らせる
 「生産性」と「付加価値額」の定義を知っていますか?
 生産年齢人口減少→付加価値額の減少を、原理的に補いきれない生産性向上
 「生産性向上」努力がGDPのさらなる縮小を招く
 間単には進まない供給側の調整
 高齢者から高齢者への相続で死蔵され続ける貯蓄
 内需がなければ国内投資は腐る
 三面等価式の呪縛
 「国民総時間」の制約を破ることは可能なのか?

第8講 声高に叫ばれるピントのずれた処方箋たち
 「経済成長こそ解決策」という主張が「対策したフリ」を招く
 「内需拡大」を「経済成長」と言い間違えて要求するアメリカのピンボケ
 マクロ政策では実現不可能な「インフレ誘導」と「デフレ退治」
 「日本の生き残りはモノづくりの技術革新にかかっている」という美しき誤解
 「出生率上昇」では生産年齢人口減少は止まらない
 「外国人労働者受け入れ」は事態を解決しない
 アジア全体で始まる生産年齢人口減少に備えよう

第9講 ではどうすればいいのか① 高齢者富裕層から若者への所得移転を
 若い世代の所得を頭数の減少に応じて上げる「所得一・四倍増政策」
 団塊世代の退職で浮く人件費を若者の給料に回そう
 若者の所得増加推進は「エコ」への配慮と同じ
 「言い訳」付与と「値上げのためのコストダウン」で高齢者市場を開拓
 生前贈与促進で高齢富裕者層から若い世代への所得移転を実現

第10講 ではどうすればいいのか② 女性の就労と経営参加を当たり前に
 現役世代の専業主婦の四割が働くだけで団塊世代の退職は補える
 若い女性の就労率が高いほど出生率も高い

第11講 ではどうすればいいのか③ 労働者ではなく外国人観光客・短期定住客の受入を
 高付加価値率で経済に貢献する観光収入
 公的支出の費用対効果が極めて高い外国人観光客を誘致
 
補講 高齢者の激増に対処するための「船中八策」
 高齢化社会にける安全・安心の確保は第一に生活保護の充実で
 年金から「生年別共済」への切り替えを
 戦後の住宅供給と同じ考え方で進める医療福祉分野の供給増加

おわりに――「多様な個性のコンパクトシティたちと美しい田園が織りなす日本」へ

あとがき

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