2010.10.04

▽日本経済の正体(3)――『財政危機と社会保障』

鈴木亘『財政危機と社会保障』(講談社現代新書)

各所で話題の日本経済に関する本を紹介していますが、その第三弾は、『財政危機と社会保障』。同じ著者の本については、すでに当ブログでも、紹介しています。

▽鈴木亘『年金は本当にもらえるか?』、『社会保障の不都合な真実』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/08/post-3bf7.html

内容的には、上記の二冊と重なっていますが、本書では、「増税で強い社会保障」という主張に対する経済学的な批判を展開しています。また、国の借金はいくらか、という問いに対しては、前回紹介した『2020年、日本が破綻する日』とほぼ同じ主張をしています。このあたりが経済学者のコンセンサスと言えるでしょう。

▽日本経済の正体(2)――『2020年、日本が破綻する日』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/10/2020-0fff.html

さて、本書で興味深かったのは、第四章の『年金改革は、第二の普天間基地問題になるか』。ここでは、日本の年金制度の歴史を振り返っていますが、日本の年金制度は、厚生年金にしろ、国民年金にしろ、もともとは積立方式で運営されていたのが、いつの間にか賦課方式に切り替えられてしまった、という驚くべき事実が紹介されています。

《田中角栄が首相であった一九七〇年代前半に始まった大盤振る舞いは大規模で、当時の高齢者達の年金額を、彼等が支払ってきた保険料をはるかにしのぐ水準に設定しました。また、当時の勤労者の保険料も、彼等が老後に受け取る年金額から考えると、はるかに低い水準に据え置かれ続けられました。》(p.138-139)

このため当初積み立てられていた積立金は取り崩され、また、厚生労働省や社会保険庁、それらの天下り先などが、さまざまなかたちで無駄遣いをして失われてしまいました。

《厚生労働省自身の最新の計算によれば、本来、厚生年金で八三〇兆円、国民年金で一二〇兆円存在しなければならない積立金は、二〇〇九年時点で厚生年金が一四〇兆円、国民年金で一〇兆円程度存在するにすぎません。》(p.139)

合計で八〇〇兆円の積立金が失われたことになります。

[目次]
第一章 「日本の借金」はどのくらい危機的なのか?
第二章 「強い社会保障」は実現可能か?
第三章 世界最速で進む少子高齢化、人口減少のインパクト
第四章 年金改革は、第二の普天間基地問題になるか
第五章 医療保険財政の危機と医師不足問題
第六章 介護保険財政の危機と待機老人問題
第七章 待機児童問題が解決しない本当の理由
第八章 「強い社会保障」ではなく「身の丈に合った社会保障」へ


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