2010.10.24

▽電子書籍の時代は本当に来るのか?

歌田明弘『電子書籍の時代は本当に来るのか』(ちくま新書)

著者自身が、「ここ十数年で『電子書籍の時代がくる』と何度も言われ、そのたびにこうしたテーマで原稿を書いた」と自重気味に述べているように、2010年も何度目かの電子書籍元年に当たるらしい。本書は、電子書籍をめぐる最近の国内外の動向を網羅的に提示しているが、情報自体はどこかで目にしたことのあるものが多い。

また、さまざまなジャンルのものがすべて「電子書籍」としてくくられているために、細かい情報は多いものの、全体的な見取り図が描けていない。佐々木俊尚の『2011年 新聞・テレビ消滅』(文春新書)のように、メディア産業を「コンテンツ」、「コンテナ」、「コンベヤ」の三つの層にわけるなどの考え方のフレームワークが提示されるべきだと思う。

少なくとも、ニュース、役に立つ情報、楽しむためのコンテンツの三つくらいにわけて考えるべきだし、それぞれの分野ではじょじょに電子化は進んできているのは間違いない。

[参考]
▽2011年に新聞・テレビ消滅の根拠は……
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/07/index.html
▽『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/03/ipad-vs-c1ab.html

[目次]
まえがき
第一章 電子書籍端末の問題はどこにあるのか?
1 最初の「電子書籍の時代が来る」
 ●本はやっぱり消える?
 ●一九九八年のカラーの電子書籍端末
 ●コロンブスの卵
 ●「電子書籍の夢」
 ●実験への疑問
 ●電子書籍実証実験の帰結と新たな始まり
2「紙の本がなくなる」――二度目の「騒ぎ」
 ●PDA電子書籍
 ●増え始めた電子書籍
 ●「iPhoneの前身」の実証実験
3 「リブリエ」の失敗――何度目かの「電子書籍元年」
 ●中国市場の影
 ●「教育特需」のおこぼれの電子書籍市場?
 ●読書端末をただで配る?
 ●ソニーの読書端末
 ●反射型表示のゆくえ
 ●あきらめない端末メーカー2社
4 ケータイ小説とブログの意味
 ●集団的著作と個人メディア
 ●ケータイ電子書籍の可能性と限界
 ●ケータイ小説ブームを支えたネット・メディアの性質
 ●完成度の高いものはかならずしも必要ではない
5 キンドルはなぜ成功したのか
 ●アマゾンの「逆ざや商法」
 ●十分に準備したアマゾン
 ●キンドルを買ったのは誰か?
 ●キンドル2の発売
 ●小売価格をつけるのは誰か?
 ●「安売り」への懸念
 ●印刷版も電子版もつくればコストは増える
 ●アマゾンとアップルのソフト戦争
 ●キンドルの問題点
6 iPadは「本」の破壊をもたらす?
 ●iPadはネットのコンテンツを使う装置
 ●アップルの「検閲」
 ●iPadと雑誌
 ●iPadとハリウッド型コンテンツ
 ●読書端末としてのiPadの問題点
7 激化する読書端末戦争と日本語表示できるキンドル3の登場
 ●読書端末の価格引き下げ競争が始まった
 ●大手書店からさらに一一九ドルの端末が‥‥
 ●日本語表示可能なキンドル3が出たものの‥‥
8 電子書籍をめぐる状況は変わったか?
 ●電子書籍市場が成長するには読書端末が必要
 ●日本でも端末がいろいろ出れば‥‥
第2章 グーグルは電子書籍を変えるか?
1 あらゆる書籍のデジタル化に乗り出したグーグル
 ●騒動の始まり――図書館の本をまるごと電子化し始めたグーグル
 ●本の全文検索の登場――先行するアマゾン
 ●あと追いするグーグル
 ●追いついたグーグル
 ●グーグル・ブック検索の意味
 ●グーグルの「使命」
 ●「グーグル・プリント」の限界とグーグルが見つけた解決方法
 ●図書館プロジェクト
 ●新しい検索を立ち上げるさいの四条件
2 グーグルの「誤算」――ブック検索裁判
 ●グーグルという特殊で不思議な会社
 ●記者会見に現われた無邪気なグーグルの二人の創立者
 ●フェア・ユース
 ●苦衷の米出版社協会長
 ●グーグルの言い分
3 グーグルによって生まれる新たな電子データ市場
 ●和解案の詳細
 ●グレイな解決がグーグルにとってベスト
 ●グーグルがブック検索訴訟で得たもの
 ●オプト・アウトの出版物への適用
 ●孤児本とオプト・アウト
 ●和解案の問題点
 ●グーグルの経営がうまくいかなくなったら、どうなる?
4 日本語版グーグル・ブック検索の誕生
 ●書店との連携の可能性を示唆したグーグル
 ●いち早く提携した慶応大学
5 猛反発されたグーグル
 ●突然出されたグーグルの「公告」
 ●米国での和解に拘束される理由
 ●グーグルと和解管理者の大失敗
 ●日本の著作権者の選択肢
 ●和解案に対する作家団体の反発
 ●ハーバード図書館長の懸念
 ●グーグルがヨーロッパにもたらした不安
 ●「人気ランキング」の弊害
 ●デジタル化プロジェクトを左右する国民性
6「グーグル撃退」のツケは誰が負うのか?
 ●グーグル訴訟・修正和解案の問題点
 ●ツケを払うのは結局、社会全体
 ●「黒船」を撃退して
7 膨大な既刊本の電子化を誰がやる?
 ●長尾真氏の電子図書館構想
 ●長尾構想の問題点
 ●韓国の電子図書館
 ●図書館の「商業化」?
 ●進展し始めた長尾構想
8 グーグル「再上陸」
 ●グーグル・エディション誕生
 ●グーグル・エディションの特徴――コスト負担なしの電子化
 ●多様なオンライン書店、多様な導線
 ●街の書店との連携を模索しているグーグル
 ●グーグル・エディションの小売価格を決めるのは誰か?
 ●グーグル・エディション日本語版の問題点
 ●修正和解案にもあった「リセール」の項目
 ●「電子書籍貯蔵庫」の方向に一歩踏み出したグーグル
 ●競争が激しくなってきた電子書籍取次
 ●グーグルがアマゾンや楽天のライバルになる
 ●グーグル・エディションはウェブを変える
第3章 「ネットは無料」の潮目が変わろうとしている?
1「ニュース記事は無料」の時代は終わるのか?
 ●新聞の読書端末配信がウェブを変える
 ●ネットに完全移行した新聞社の収入は100分の1?
2 サイトに高額課金すると新聞読者は戻ってくる?
 ●ニュースが私を見つけてくれる時代の始まり
 ●2年ごとに毎日読む人が10%ずつ減っている30歳代
 ●印刷版からウェブへのニュース講読の移行はどのようなものになる?
 ●「歳をとれば新聞を読む」というのはウソ
 ●「オンライン版は割高」という常識はずれの価格設定
 ●「ネットは無料」の魔法が解けた?
 ●長期的にはやはりジリ貧になる
 ●有料と無料の混在(フリーミアム)がニュース・サイトの生きる道?
 ●ニュース・サイトの課金ネットワーク――「ジャーナリズム・オンライン」の試
3 メディア王マードックの野望――読者が減っても収入は増える?
 ●9割が支払い拒否にもかかわらず課金を始める新聞
 ●95%のアクセスを失っても収入は増える
4 ウェブで融合するニュース記事と書籍
 ●予想を超える購読者がいても不思議ではない日経の電子版
 ●課金プラットフォームを握るのは誰か?
 ●日経のやらないことをやった朝日
 ●本の山のなかから探しているものに出会う新たな方法
 ●セルフ・パブリッシングに必要なのは課金プラットフォーム
 ●ノンフィクションや調査報道を救うウェブ新書
 ●携帯端末向きのあら手の電子書籍
5 電子書籍がウェブの構造変化を引き起こす?
 ●「ウェブのコンテンツは無料」になぜなったのか
 ●「オープン=無料ではない」と主張するグーグル
 ●市場破壊の低価格商品
 ●「新聞崩壊」を心配するグーグル
 ●読書端末の登場でウェブが変わる?
あとがき――再販制崩壊を導く電子書籍


|

書評2010年」カテゴリの記事