2010.10.02

▽日本経済の正体(1)――『デフレの正体』

藻谷浩介『デフレの正体――経済は「人口の波」で動く』(角川oneテーマ21)

各所で話題の日本経済に関する本を続けて三冊読みましたので、順に紹介していきたいと思います。まずは、『デフレの正体』。著者の主張は、1990年代から続くデフレの原因は、15歳から65歳までの生産年齢人口の減少にある、というもの。

《この「生産者年齢人口減少に伴う就業者数の減少」こそ、「平成不況」とそれに続いた「実感なき景気回復」の正体です。戦後一貫して日本を祝福してくれていた「人口ボーナス」が九五年頃に尽き(新規学卒者>定年退職者という状況が終わり)、以降は「人口オーナス」の時代が始まった(新規学卒者<定年退職者の時代になった)ということです。》(p.134-135)

「就業者数の減少」は、そのまま消費者人口の減少につながります。その結果、1996年から2002年にかけて、国内新車販売台数、小売販売額、雑誌書籍販売部数、国内貨物総輸送量、自家用車による旅客輸送量、蛋白質や脂肪の摂取量、国内種類販売量、一人あたり水道消費量が減少に転じたという。「これは正に退職後の高齢者世帯の消費行動そのものではありませんか。」(p.136)

1990年代半ばから、すでに生産者年齢人口の減少は始まっているのですが、これから5年間は、さらに団塊の世代の高齢化と、少子化によって拍車がかかります。そして、対策としては一般的には、出生率の引き上げや移民の導入が叫ばれていますが、著者は、これらの対策は「絶対数があわない」と切って捨てています。

もちろん著者は、生産者年齢人口が減少する日本において、経済を立て直すには、どうすればいいのかについてさまざまな処方箋を提示してくれています。しかし、正直なところ「もう手遅れなんじゃないか?」という読後感、うっすらとした破滅感のようなものを抱いてしまうのも事実です……。

[目次]
第1講 思い込みの殻にヒビを入れよう
 景気判断を健康診断と比べてみると
 ある町の駅前に表れた日本のいま

第2講 国際経済競争の勝者・日本
 世界同時不況なのに減らない日本人の金融資産
 バブル崩壊後に倍増した日本の輸出
 世界同時不況下でも続く貿易黒字
 世界中から莫大な金利配当を稼ぐ日本
 中国が栄えれば栄えるほど儲かる日本 
 中国に先んじて発展した韓国・台湾こそ日本の大得意先
 フランス、イタリア、スイスに勝てるか

第3講 国際競争とは無関係に進む内需の不振
 「戦後最長の好景気」の下で減り始めた国内新車販売台数
 小売販売額はもちろん、国内輸送量や一人当たり水道使用量まで減少する日本
 なぜ「対前年同期比」ばかりで絶対数を見ないのか

第4講 首都圏のジリ貧に気付かない「地域間格差」論の無意味
 苦しむ地方の例……個人所得低下・売上低落の青森県
 「小売販売額」と「個人所得」で見える「失われた一〇年」のウソ
 「地方の衰退」=「首都圏の成長」とはなっていない日本の現実
 「東京都心部は元気」という大ウソ
 名古屋でも不振を極めるモノ消費
 地域間格差に逆行する関西の凋落と沖縄の成長
 地域間格差ではなく日本中が内需不振

第5講 地方も大都市も等しく襲う「現役世代の減少」と「高齢者の激増」
 苦しむ地方圏を襲う「二千年に一度」の現役世代減少
 人口が流入する首都圏でも進む「現役世代の減少」
 所得はあっても消費しない高齢者が首都圏で激増
 日本最大の現役減少地帯・大阪と高齢者増加地帯・首都圏
 「地域間格差」ではなく「日本人の加齢」
 団塊世代の加齢がもたらす高齢者のさらなる激増

第6講 「人口の波」が語る日本の過去半世紀、今後半世紀
 戦後のベビーブームが一五年後に生んだ「生産年齢人口の波」
 高度成長期に始まる出生者数の減少
 住宅バブルを生んだ団塊世代の持ち家取得
 「就職氷河期」も「生産年齢人口の波」の産物
 「生産年齢人口の波」が決める就業者数の増減
 「好景気下での内需縮小」が延々と続く

第7講 「人口減少は生産性上昇で補える」という思い込みが対処を遅らせる
 「生産性」と「付加価値額」の定義を知っていますか?
 生産年齢人口減少→付加価値額の減少を、原理的に補いきれない生産性向上
 「生産性向上」努力がGDPのさらなる縮小を招く
 間単には進まない供給側の調整
 高齢者から高齢者への相続で死蔵され続ける貯蓄
 内需がなければ国内投資は腐る
 三面等価式の呪縛
 「国民総時間」の制約を破ることは可能なのか?

第8講 声高に叫ばれるピントのずれた処方箋たち
 「経済成長こそ解決策」という主張が「対策したフリ」を招く
 「内需拡大」を「経済成長」と言い間違えて要求するアメリカのピンボケ
 マクロ政策では実現不可能な「インフレ誘導」と「デフレ退治」
 「日本の生き残りはモノづくりの技術革新にかかっている」という美しき誤解
 「出生率上昇」では生産年齢人口減少は止まらない
 「外国人労働者受け入れ」は事態を解決しない
 アジア全体で始まる生産年齢人口減少に備えよう

第9講 ではどうすればいいのか① 高齢者富裕層から若者への所得移転を
 若い世代の所得を頭数の減少に応じて上げる「所得一・四倍増政策」
 団塊世代の退職で浮く人件費を若者の給料に回そう
 若者の所得増加推進は「エコ」への配慮と同じ
 「言い訳」付与と「値上げのためのコストダウン」で高齢者市場を開拓
 生前贈与促進で高齢富裕者層から若い世代への所得移転を実現

第10講 ではどうすればいいのか② 女性の就労と経営参加を当たり前に
 現役世代の専業主婦の四割が働くだけで団塊世代の退職は補える
 若い女性の就労率が高いほど出生率も高い

第11講 ではどうすればいいのか③ 労働者ではなく外国人観光客・短期定住客の受入を
 高付加価値率で経済に貢献する観光収入
 公的支出の費用対効果が極めて高い外国人観光客を誘致
 
補講 高齢者の激増に対処するための「船中八策」
 高齢化社会にける安全・安心の確保は第一に生活保護の充実で
 年金から「生年別共済」への切り替えを
 戦後の住宅供給と同じ考え方で進める医療福祉分野の供給増加

おわりに――「多様な個性のコンパクトシティたちと美しい田園が織りなす日本」へ

あとがき


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