2010.11.20

▽昭和45年11月25日

中川右介『昭和45年11月25日―三島由紀夫自決、日本が受けた衝撃』(幻冬舎新書)


昭和45年11月25日と聞いてピンと来る人もいるでしょうが、私のようにまったくピンと来ない人もいるかもしれません(笑)。

そう、昭和45年11月25日とは、三島由紀夫が市ヶ谷の自衛隊駐屯地に盾の会のメンバーとともに侵入し、自衛隊員にクーデターを呼びかけた後、自決した日……だそうです。

若い頃の私は、この日については、村上春樹の小説『羊をめぐる冒険』を通して、テレビに映る三島由紀夫の声がよく聞こえなかったことくらいしか知りませんでした(もちろん、その後、いろいろと三島由紀夫に関する本は読んでいますが)。

本書は、その昭和45年11月25日について書かれた文章を再構成して、あの事件が、どのように受け止められたか、を再現したものです。事件そのものは、すでに多くの記録が残されているのですが、本書では、マスコミ、文壇、演劇・映画界、政界の人々が、あの事件をどう受けとめたのか中心に、百数十の視点から時系列に再構築していて、良質なドキュメンタリーとして読むことができます。上述した村上春樹の小説も出てくるなど、なかなか芸が細かいですね。

余談ですが、まだ携帯電話もインターネットも無い時代なので、「明日何時に電話するのでいてください」と三島に頼まれたり、不在の三島に連絡がとれなくて困った編集者がいたり、ラジオで知ったニュースを確認したくてテレビを探したり、といった当時では当たり前のことなんですが、いまではいちいち説明しないと若い人には理解できないことが書かれていて時代の変化も感じてしまいます。


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