2010.11.22

▽石平はなぜ「中国」を捨てたのか

石平『なぜ「中国」を捨てたのか』(WAC BUNKO)

石平は、「いしだいら」ではなく、「せき・へい」と読む。著者は、中国四川省成都生まれの中国人だったが、2007年に帰化し日本人となった。1988年に来日し、それ以来、ずっと日本で暮らしている石平は、次第に中国にわき起こる反日感情に対して疑問を抱くようになった。

《八〇年代の私たちは、日本に対してむしろ好感と親しみをもっていた。それなのに、その十年後の九〇年代後半になると、若者たちと多数の中国人民は、一転して激しい反日感情の虜となっていたのである。
 それは一体なぜなのか。》(p.72)

中国人の間に澎湃とわき上がる、文化大革命にも似た熱狂的な反日感情の背景には、1989年の天安門事件によって信頼が地に墜ちた中国共産党が、国外に敵を作ることで、求心力を高めようとする狙いがあった。そして、そのターゲットとして日本が選ばれた、と著者は分析し、その「反日」と闘うことを決意した。著者が中国を捨てた理由は、ここにあった。

中国における反日デモの様子は、マスメディアなどを通じて知ることができるが、本書では、生の中国人の語る「反日」の言葉が綴られており、衝撃を受ける。中国共産党による、ある種の洗脳の結果だろうとは思うものの、隣の大国とのつきあい方を、もっともっと工夫しなければならないと考えさせられる一冊である。


|

書評2010年」カテゴリの記事