2010.11.19

▽落合博満伝説

▼落合福嗣『フクシ伝説 うちのとーちゃんは三冠王だぞ!』(集英社)

惜しくもプロ野球日本シリーズで優勝を逃した中日ドラゴンズの監督である落合博満ほど、マスコミで伝えられるイメージと実態がかけ離れた人物もいないだろう。

断片的な情報は漏れ伝わっていたが、息子である落合福嗣の著書『フクシ伝説』では、衝撃の事実が語られている。東洋大学の野球部に入部した落合は、突然なにもかも嫌になって、寮から失踪。二週間ほど、東京都内をホームレスとしてさまよっていたという。

《夜は知らないおじさんの家に泊まったこともあるし、ある組織の人に世話になったこともあったな。このあたりはさすがに話せんよ(笑)。で、さっき言ったように公園に寝泊まりした日もあったんだ。……そういうおせっかいをやいてくれる一方で、オレに何があったか深くは聞いてこないんだ。逃避行中、オレは何人にも世話になったが、誰ひとりとして、"踏み込んできた"人はいなかった。》(p.92)

深い、深すぎる(笑)。この後、秋田に帰って日雇いをしていた落合は、ふたたび東芝府中で期間工として働きながら、社会人野球で頭角をあらわし、野球人生の再スタートをきった。

▼テリー伊藤『なぜ日本人は落合博満が嫌いか?』(角川oneテーマ21)

テリー伊藤の『なぜ日本人は落合博満が嫌いか?』では、この再スタートがどれだけ大変なことなのかが強調されている。

《「でも、勝負の世界なんだから、実力がある者は、いずれちゃんとそうやって頭角を現すものだよ」
 そんなことを思っている人は、おそらくプロアマ含めて野球界には1人もいない。実力があってもつぶれる選手はいくらでもいるし、実力があってもつぶされる選手はいくらでもいる。
 こうして落合博満という野球人の序章を見ると、その後の落合があるほうが不思議なくらいなのだ。》(pp.142-143)

とはいえ、落合は、現役時代に三冠王を三度とるなど選手として活躍しただけでなく、中日の監督就任後は、リーグ優勝三回、日本シリーズ出場四回、日本一一回と監督としても有能なことを示した。

▼今中慎二『中日ドラゴンズ論』(ベスト新書)

著者の今中慎二は、中日の投手として選手時代の落合をよく知っており、また、解説者として落合の監督の手腕を見てきた。星野仙一をはじめとする歴代監督と、落合を比較しながら、中日ドラゴンズの強さについて考察している。もし中日が日本一になっていたら、本書は、もっと売れていたことでしょうに。

[参考]
▽落合が語るコーチング術
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/01/post-c1b2.html


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