« 2010年11月 | トップページ | 2011年1月 »

2010年12月

2010.12.26

▽ハダカデバネズミ

吉田重人、岡ノ谷一夫『ハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係』(岩波科学ライブラリー 生きもの)

ハダカデバネズミ(以下、デバ)とは、その名前の通り、体表に毛の生えてないハダカで、出っ歯のネズミである。もともとは、東アフリカのケニアに生息するネズミで、女王がいて、平均80匹、最大300匹の群れをなして暮らす「真社会性」動物である。

真社会性とは、二世代以上が群れを作って暮らし、子作りにかかわる個体が決まっていて、子作りしないで手伝うだけの個体をたくさん含む社会集団のことをいう。ハチ、アリ、シロアリ、アブラムシ、エビなどの無脊椎動物では多く知られているが、脊椎動物では、デバと、近縁種のダマラランドデバネズミの二種類しかいないという希有な存在である。

著者たちは、このデバを、イリノイ州立大学からわけてもらい千葉大学の研究所で飼育する。本書は、そのデバのユニークな生態の観察記である。

デバの群には、繁殖に関わる一匹の女王、数匹の王様、兵隊デバ、働きデバにわかれている。働きデバの一部は、生まれてきた赤ちゃんを体温であたためる肉ぶとんになるものもいるという。ハチやアリと同じように役割分担ができているのだ。

しかし、著者たち達の観察によると、どうもデバは、ハチやアリなどとは異なる面があるようだ。それは、デバそれぞれが、群として行動しながらも、同時に自己主張もする個体であることがわかってきたためで、この点からすると、デバは真性社会の動物とは呼べないのかもしれない、という。

《では、彼らは何か? 生殖行動が限定された個体(女王と王様)に占有されているという点では、真性社会である。しかし、生殖を除いた日々の暮らしを見ていると、デバの社会はひとつの小企業のようにも思えてくる。》(p.107)

デバの群における、社会階級と労働の分担についての研究は、最近注目されている神経経済学のモデルにもなりうる、という。

デバという不思議な動物の不思議な魅力を味わえる一冊。

|

▽『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』が教えてくれたこと

辻野晃一郎『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』(新潮社)

著者は、ソニーでパソコンのVAIO、コクーン、スゴ録、ウォークマンなどを手がけ、その後、グーグルの日本法人社長を務めた辻野晃一郎。この2社での体験、留学記、ソニー退社後の起業の話などが、まとめられている。特に暴露本的な話題は無いが、それでも、ソニーという会社の負の部分が、少なからず明らかにされており、興味深い。

まず、ソニー入社後の著者は、厚木の情報処理研究所で、後に著者の命運に大きな影響を与える久夛良木健と出会っている。

イリノイ大学留学後の1997年に、著者は、VAIOのデスクトップパソコンの担当を命じられる。当時のソニーは、1995年に社長が大賀典雄から出井伸之へ代わっており、銀パソブームを起こしたノートブック「VAIO505」やカメラ付きVAIO「C1」が好評を博していた。

辻野がラインナップを見直したデスクトップVAIOの最初のモデルが、1998年6月に発売されたマイクロ・タワー型Sシリーズで、これが予想以上のヒットとなった。

20101226sony001
マイクロタワー型パーソナルコンピューター “VAIO”『PCV-S600TV7』(左)『PCV-S500V5』(右)

さらに、液晶ディスプレイを採用したVAIO Lシリーズ(写真右下)もロングセラーとなった。

20101226sony002

これらのヒットにより、デスクトップPCの事業は二年目に単年度黒字に転じ、10%の利益率を上げたという。そして、2001年に、辻野は、テレビのグループへ移動となり、コクーンとスゴ録を立ち上げることになる。

20101226sony003
<コクーン>チャンネルサーバー『CSV-E77』

20101226sony004
『スゴ録』DVDレコーダー 「RDR-HX8」

2003年のクリスマス商戦に向けて発売された「スゴ録」だが、社内から、思わぬ伏兵の攻撃にさらされることになる。当時、副社長としてソニーに君臨していた久夛良木の出身母体であったプレイステーションのグループがDVDレコーダー「PSX」をぶつけて来たのだ。

《年末商戦はスゴ録の圧勝であった。しかし、私が期待したような展開にはならなかった。ホーム・ストレージ・カンパニーはPSX側のカンパニーに統合されることになり、それをもって私は年明けの二〇〇四年一月一日付でお役御免となったのである。》(p.151)

しばらく無任所となっていた辻野だが、紆余曲折を経てウォークマンの開発を担当することになる。2005年秋には、ウォークマンAシリーズの発売と、専用ソフト「コネクト・プレイヤー」の発表にこぎつけた。

20101226sony005
ウォークマンAシリーズ

20101226sony006
コネクトプレーヤー

しかし、このウォークマンとコネクトプレーヤーの評判は芳しくなく、2006年春に、辻野のいたカンパニーは解体されてしまう。これを機に、辻野は、ソニーを退社する。

まず、コネクトプレーヤーの評判が悪かった点は、アプリケーション・ソフトの使い勝手が悪かったこと。これは、ソニーの致命的な欠点だったことがわかります。また、ウォークマンAシリーズもHDDバージョンの製品(写真左)は「石けん箱みたい」と馬鹿にされたと記憶しています。

しかし、フラッシュ・メモリー型のウォークマン(写真右)は、洗練されたデザインが評価されていたと思います。というか、私は、未だにこれを愛用しています(笑)。正直なところ、「あの路線を続ければ良かったのに」と今でも思っています。

また、当時、個人ブログを使ったプロモーションがやらせではないか? と騒がれた点については、本書には何も記述はありませんでした。否定しないどころか、何も触れていない、というのは、「まあ、やっていたんだろうな」と思わざるをえませんね。

[参考]
▽iPodは何を変えたのか? を振り返る
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/02/ipod-7562.html
ソニーエリクソンの挑戦
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/cat21506071/index.html

|

2010.12.25

▽『加害者家族』

鈴木伸元『加害者家族』(幻冬舎新書)

本書の第一章には、夫が殺人事件の犯人となった女性が登場する。事件発覚後は、家をマスコミに取り囲まれ、近所や職場にも記者が取材に訪れる。インターネットの掲示板にも住所を晒されるようになり、子供の安全を考えて二度も転校することになる――。

著者はNHKのディレクターで、2010年4月に放映された『クローズアップ現代』「犯罪"加害者"家族たちの告白」の取材がもとになっている。

ただし、第二章以降に登場する、一般にも名の知られた加害者と、家族たちのその後については、「加害者家族が出版した手記や先輩のジャーナリストたちが取材したルポルタージュを参考にし、多くを引用させてもらった。」(p.201)とあるように、そのほとんどが、他人の著作からの情報のまとめに終始しているのは、残念だ。

[本書で取り上げられている事件]
連続幼女誘拐殺人事件
神戸連続児童殺傷事件
和歌山毒物カレー事件
長崎男児誘拐殺人事件
秋田児童連続殺人事件
英国人女性殺害事件
地下鉄サリン事件
山梨幼児誘拐殺人事件
名古屋女子大生誘拐殺人事件
死亡ひき逃げ事件
5000万円恐喝事件
子猫虐待事件
ほか

|

2010.12.20

▽当ブログで売れた本――2010年下半期

2010年も、残すところ、あと十日ほど。ちょっと早いのですが、2010年8月からいままでに売れた本十傑を紹介します。

まあ、ランキングをつけるほどは売れていないので、あくまでも十傑ということで・・・・・・。

▽『600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/05/post-65fd.html

▽『シビックプライド―都市のコミュニケーションをデザインする』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/post-d65f.html

▽『日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/01/post-0081.html

▽『日本「半導体」敗戦』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/post-b1e8.html

▽『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/11/post-feeb.html

▽『デフレの正体』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/10/post-ae95.html

この6冊は、当ブログでもコンスタントに売れています。特に、『600万人の女性に支持されるクックパッドというビジネス』は、この秋から、ふたたび売れるようになっています。

次は英語関連です。下記の3冊は、英語学習の基本書としてプッシュしてます。

▽高木義人『TOEFL対策必修単語集』
英語力強化法Vol.1 英単語は分解して覚えろ!
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2010/08/vol1-d17a.html

▽PhrasalVerb Organizer
英語力強化法Vol.11 英会話で難しいのは簡単な単語
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2010/08/vol11-5eb1.html

▽Dictionaryof Selected Collocations
英語力強化法Vol.12 コロケーション――英単語の自然なつながり
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2010/08/vol12-ec7b.html

今年のノンフィクションは、JAL崩壊の過程を描いた森功『腐った翼』が、エントリーへのアクセスも含めて断トツでした。

▽『腐った翼』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/07/post-c2e7.html

当ブログで取り上げる本のコンセプトは、基本的には「クロス・カルチュラルなノンフィクション」です。もちろん例外もありますが、ノンフィクションで異文化がクロスするような内容のもの、あるいは、時代の転換点を分析するようなもの、が中心です。

献本もお待ちしていますので(笑)、ここをご覧になられている出版社の方がいらっしゃったら、右カラム上の「メール送信」のところをクリックしてご連絡いただければ幸いです。

では、これからもいっそうの内容充実をめざして精進しますので、今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます。

[参考]
▽当ブログで売れた本――2009年
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/12/2009-dd61.html
▽当ブログで売れた本――2010年上半期
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/08/2010-0d88.html

|

2010.12.18

▽『潜入ルポ アマゾン・ドットコム』

横田増生『潜入ルポ アマゾン・ドットコム』(朝日文庫)

本書は、アマゾンジャパンの物流倉庫への潜入取材を敢行して話題となった『アマゾン・ドット・コムの光と影』(2005年刊行)をベースに、最近の事情をふまえた第二部「その後のアマゾンドットコム」を追加したものである。

[参考]▽アマゾンに対するアンビバレントな気持ち
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/04/post-3aa2.html

第二部の第一章「ブックオフとの関係とアマゾンの変化」に続いて、第二章「マーケットプレイス潜入」では、せどらーとして知られる吉本康永さんも登場する。

[参考]▽村上春樹の小説とせどりのシンクロニシティ
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/05/post-def4.html

吉本さんの本書に対する感想は、ご本人のブログ「たそがれ親父のせどりノート」
で読むことができます。

[参考]たそがれ親父のせどりノート
http://d.hatena.ne.jp/tasogareoyazi/20101209/1291893062

第三章では、「電子書籍端末「キンドル」は出版を変えるか」として、2人の識者のインタビューが掲載されていますが、中でも気になるのが、植村八潮・東京電機大学出版局局長の次のようなコメント。

《電子書籍に関してはアマゾンの言うことを鵜呑みにすることは難しい。電子書籍に関するアマゾンの発表は、事実を伝えるというより、プロパガンダの側面が強いからだ。》(p.388)

巻末の解説では、一時は、オンライン古本屋を経営しながらも撤退してしまったライターの北尾トロさんが、アマゾンへの思いを吐露している。

[参考]▽『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/03/post-0cb8.html

本書を、ノンフィクションとして読んだ場合、アマゾンジャパンや関係する企業のガードが堅く、なかなか確実な証言がえられていない点は残念と言えば残念だが、それでも昨今のアマゾン礼賛の論調に対して、もう一度「光と影」を浮かび上がらせた点は評価して良いだろう。

|

2010.12.17

▽墜ちたヤメ検たち

森功『ヤメ検―司法エリートが利欲に転ぶとき』(新潮文庫)

本書は、2008年9月に発行された同タイトルの単行本を内容そのままに文庫化したもの。もともとは、いまは無き『月刊現代』に、2007年10月号から2008年5月号にかけて連載されていたものをベースに再構成されている。

ヤメ検とは、検事を辞めた後に、弁護士へと転身した元検事のことをいう。ヤメ検の多くは、刑事事件の被告人の弁護をつとめることが多く、自分のかつての同僚や後輩の検事と、「事件を認めるかわりに減刑を求める」ことが多く、最近の検察の暴走による冤罪事件の温床にもなっている、と指摘されている。

ヤメ検の中には、テレビのコメンテーターとして活躍したり、企業の顧問になったりする者もいるが、本書で描かれているのは、いろいろな意味で「墜ちた」ヤメ検たちである。

まず第一章と第七章には、朝鮮総聯本部ビル詐欺事件で起訴された緒方重威が取り上げられている。緒方自身は『公安検察』という本で、「無実」を主張しているが、そもそも緒方が、この事件に巻き込まれた端緒は、元地上げ屋と懇意になったことにあるのは言うまでもない。

第二章では「防衛事務次官汚職事件」が取り上げられているが、ヤメ検はどこに絡んでくるのか? 実は、山田洋行の顧問弁護士であるヤメ検が、山田洋行から独立してできたライバル企業を追い落とすために、事件そのものをデッチ上げたのではないか、という疑惑が指摘されている。

この事件でも、防衛フィクサーとして起訴された秋山直紀は『防衛疑獄』において冤罪である、と主張している。

第三章では、和歌山県官製談合事件が、第四章では、福島県知事汚職事件が取り上げられている。どちらもヤメ検が被告の弁護をつとめているが、福島の事件では元県知事の佐藤榮佐久は『知事抹殺 つくられた福島県汚職事件』で無罪を訴えている。

第五章は女性スキャンダルで、辞職に追い込まれた元東京高検検事長がインタビューに応じている。スキャンダルの顛末は、報じた側の西岡研介『スキャンダルを追え!『噂の真相』トップ屋稼業』でも読めるが、さらに、本書では、その奥にある「誰がスキャンダル報道を煽ったか?」という疑惑にも触れていて興味深い。

現在、元検事長は、怪しげな「危機管理コンサルタント」とのつきあいがあるというが、著者は、このコンサルタントに「利用されていることに気づいていないことそのものが問題ではないだろうか。というより、この危機管理コンサルタントに助けられている面もあるのではないか。そこに、公安調査庁元長官の緒方などにも共通するエリート検事の限界があるように思えてならない。」(p.224)と指摘している。

第六章では、第三章に続いて関西のヤメ検事情が触れられるとともに、『吉本興業内紛事件』が、語られる。事件の片一方の当事者である中田カウスの主張は、西岡研介の『襲撃 中田カウスの1000日戦争』で読むことができる。

第八章は、墜ちたヤメ検の代表格でもある田中森一が登場する。田中については、プロローグ、第三章、第六章でも触れられているが、田中の生い立ちや捜査・弁護の手法は、ベストセラーにもなった『反転』で知ることができる。

驚くべきことに、本書のエピローグでは、田中の追い落としのために、別のヤメ検が策謀を巡らしたのではないか? という疑惑も指摘されている。

|

2010.12.16

▽『Gigazine 未来への暴言』

山崎恵人『Gigazine 未来への暴言』(朝日新聞出版)

Gigazineというニュースサイト( http://gigazine.net/ )があります。独立系ブログメディアのニュースサイトとしては国内で最大規模とのこと。

Gigazineが、どれくらい凄いのかをグラフで示してみました(グラフの左目盛りの単位は万です)。

20101216gigazine

Gigazine自体は個人サイトとして2000年4月から運営されていましたが、法人化された2006年4月からは、グラフにあるように、急速にPV(ページビュー)とUU(ユニークユーザー)が伸びていきます。現在は、月間6000万~7000万PV、2000万UUとなっています。

なんというか気がついたらあっという間に存在感を増していた、ということができます。最近では、社員のリストラと新規採用をサイト上で告知して物議を醸したこともあります。

本書『Gigazine 未来への暴言』は、Ggazine開設十周年を記念して上梓されたとのことです。読者としては、「アクセス数を稼ぐ秘訣は?」みたいなところを期待して読む人も多いのではないかと思うのですが、本書には、そういったことはほとんど書かれていません。むしろ、どこかで見たようなネット言説の焼き直しのような話ばかりで、Gigazine独自の視点や、運営の体験から出てきたことは、あまり書かれていません。

また、タイトルには「暴言」とあるのですが、暴言というほど刺激的なものはなく、凡庸なものばかり。もしかしたら、Gigazineの高いPVやUUというのは、この凡庸さによって生み出されたものなのかもしれませんね。

[関連記事]
GIGAZINE10周年記念書籍「未来への暴言」が完成、12月7日発売決定
http://gigazine.net/news/20101129_gigazine_book/
GIGAZINE10周年記念書籍「未来への暴言」、本日より発売開始
http://gigazine.net/news/20101207_gigazine_10th_anniversary_book/

[目次]
◆layer01:「Knowledge Is Our Power」知識は我らの力なり
◆layer02:専門バカvsオタクの構図「専門バカになるな、オタクになれ」
◆layer03:「理性・知性・感性」のバランス
◆layer04:インターネットは「悪魔の道具」か「天使の羽根」か
◆layer05:YouTubeのみが真の「破壊的ビジネスモデル」
◆layer06:「個人の力の最大化」=「インターネット」
◆layer07:「フリー」のその先、無料戦略の次
◆layer08:ファンがパトロンになる「パトロンモデル」成立への道
◆layer09:しかるべき場所にしかるべき人を、職業選択の最適化
◆layer10:入試の時にパソコン持ち込み可・インターネット可であれば大学の教授はどういう問題を作るのか?
◆layer11:「文明社会でのサバイバル」を教えるのが学校
◆layer12:好きなことをしてメシを食う時代の到来
◆layer13:10人中9人に嫌われてもいいから残りの1人に興味を持ってもらう
◆layer14:著作権という概念の崩壊、ファイル共有ソフトは最終局面に
◆layer15:量から質が生まれる、大量にならなければ高品質にはならない
◆layer16:超少額決済システムを握ったところが最終的な勝利者に
◆layer17:インターネットの規則を考えるというのは世界の規則、世界のルールを考えるのと同じ
◆layer18:みんなのルールを決めるのは「政治家」ではなく「サイレントガーディアン」に
◆layer19:旧世代と新世代のかつて無いレベルの「激突」
◆layer20:インターネット上に出現する国家のカタチ、領域・人民・権力
◆layer21:結論:「無料であるものに対価を払う」という時代

|

2010.12.14

▽神様・手塚治虫の伴走者たち

佐藤敏章『神様の伴走者 手塚番13+2』(小学館)

漫画の神様・手塚治虫の原稿取りをした編集者13人と、手塚プロダクション社長、そして、手塚のアシスタントをつとめたことのある藤子不二雄Ⓐの証言をまとめたもの。

手塚治虫の原稿の仕上がりが遅かったのは有名な話なのですが、実際に手塚番として体験した数々の伝説が語られていて興味深く読むことができます。

以下は、目次にある各章のタイトルに、手塚番それぞれの担当雑誌と漫画名を加えたものです。

・神様を殴った男 志波秀宇(小学館・ビッグコミック)『地球を呑む』『きりひと賛歌』
・神様の孤影を見た男 黒川拓二(少年画報社・少年キング)『ノーマン』『鬼丸大将』
・神様と雲隠れした男 新井善久(講談社・少女クラブ)『火の鳥』
・神様独占を志した男 豊田亀市(小学館・少年サンデー)『スリル博士』『0マン』『キャプテンKen』『白いパイロット』
・神様の夢を叶えた男 宮原照夫(講談社・少年マガジン)『W3』『三つ目がとおる』『手塚治虫漫画全集』
・神様を信じた男   鈴木五郎(小学館・中学生の友)『流星王子』『おお!われら三人』
・神様の歌を聴いた男 池田幹生(文藝春秋・週刊文春)『アドルフに告ぐ』
・神様の弟子を育てた男 丸山昭(講談社・少女クラブ)『リボンの騎士』『火の鳥』
・神様に託された男 石井文男(虫プロ商事・COM)『火の鳥』
・神様をみやげにした男 阿久津信道(秋田書店・冒険王、漫画王)『冒険狂時代』『ぼくのそんごくう』
・神様に諭された男 鈴木俊彦(小学館・ビッグコミック)『地球を呑む
・神様を看取った男 竹尾 修(潮出版社・希望の友、少年ワールド、コミックトム)『ブッダ』『ルードウィヒ・B』
・神様の伝説に挑んだ男 松岡博治(朝日ソノラマ・サンコミックス、マンガ少年)『鉄腕アトム』『火の鳥』
・神様の遺志を継いだ男 松谷孝征(実業の日本社→手塚プロダクション)
・神様の助手を務めた男 藤子不二雄Ⓐ(安孫子素雄)

必ずしも、すべての手塚番を網羅しているわけでもなく、また、古い話も多く複数の担当者の間で証言が矛盾する「藪の中」もあるのですが、手塚治虫だけでなく、担当編集者も豪快な人物が多かったということがよくわかります。また、あとがきには、著者により、次のように総括されています。

《それでも、”ストーリー漫画=手塚治虫”の時代に始まり、手塚治虫の原稿なら何でもいいから手に入れようと狂奔する編集者像から、手塚治虫の作劇法に基本的な疑問を呈する編集者の登場まで、ひとつの時代の変遷はとらえられたかなと思っています。それは、良かれ悪しかれ、漫画をヒットさせる方法論が、編集者サイドに蓄積されていった過程でもあります。》(あとがきより)

手塚治虫については、下記の本も参考になります。

▽アニメ作家としての手塚治虫
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/05/post-fbfb.html

|

2010.12.12

▽『トンデモない生き物たち』

白石拓『トンデモない生き物たち―南極の魚はなぜ凍らないのか!?』(宝島社)

雑学本ですみません……。

本屋で見かけて、何気なく手に取って開いたら、最初の項目が「砂の上を猛スピードで走るウニ」。頭の中に「走るウニ」のイメージが浮かんできて、吹いてしまいました(笑)。

さらに目次を見ると、面白そうなテーマが並んでいるので、つい買ってしまいました。

[目次]
Part1 スーパーアニマルの“そこまでやるか”
砂の上を猛スピードで走るウニ
永久に生き延びる昆虫……そんなバカな?
渓流を泳いでイワナを捕らえるネズミ
アリがもっている身分証明書は?
獲物を呼び寄せるナゲナワグモの秘密テクニック
「キャー!」悲鳴を上げて助けを呼ぶイモムシ
たった一匹で巣を乗っ取る「すご腕」女王アリ
壮絶! 毒矢・毒もりを放つ殺人貝
タンスを踊るアブラムシはどんなダンスを踊るの?
イモムシに寄生するハチの「ウイルス兵器」
カモノハシがエサを見つけるのに使う探知機
テロリストもびっくり! シロアリが自爆テロを決行
アブラムシが自殺する、どうして?
木の中で農業をするキクイムシ
クモの糸で編む未来のスーパー「防弾チョッキ」
毎年100人をあの世に送る殺人アリ
■コラム――遺伝子の宝庫・細菌類■氷の核になる氷核活性細菌

Part2 水の中は異次元世界
イタコもびっくり! 恐山にいる酢の中でも泳げる魚
かなりの変魚、南極にすむ魚「ノトセニア」
巨大オタマジャクシのステーキはいかが?
サメは六感をもつサイボーグ・ハンター
夜も昼のように明るい、カブトガ二の暗視能力
ホタルイカの墨はやっばり光るか?
頭突きで工サをとる魚、本当にとれるの?
ナマズが地震を予知する本当の理由
食べてもまずいウミウシの真の実力
チョウチンアンコウの提灯の中味は?
電気を発信して位置を知る魚の「レーダー」
鳥のカッコウより托卵がうまいアフリカのナマズ
深海にすむ「地獄の吸血イカ」の正体は?
口も胃も腸もないハオリムシは何を食べてるの?
鉄の歯をもつ貝と、鉄のよろいを着る貝
シビレエイのしびれる電気毛布作戦
地球最大生物はナゾの巨大クラゲだった!
■コラム――遺伝子の宝庫・細菌類■ダイオキシンを食べるスーパー細菌

Part3 弱肉強食にさからう!
敵が現れると変身するミジンコ
ガードマンを雇うアカシア
ニューギニアにいた伝説の毒鳥ピトフーイ
円陣を組んで戦うジャコウワシ
奴隷になったアリは、なぜ従順か?
ミツバチとオオスズメバチのフェロモン戦争
兵隊アブラムシはこんなに強かった!
寄生されると自殺したくなる虫にご用心
コウモリから逃れるカエルの合唱団
アリの巣に忍び込むイモムシの華麗な手口
生きるためにアリになったコオロギ
寄生バチに寄生するハチに寄生する
フクロウに内緒、ヤマネのラブソング
ねらった獲物はどこまでも追いかけるハチ
■コラム――遺伝子の宝庫・細菌類■石油をつくるHD1

Part4 人間もかなわないウルトラC
寒いと発熱する暖房植物ザゼンソウ
静電気をおびたクモの巣を張る超能力クモがいた!
ウミホタルは日本陸軍の秘密兵器だった!?
ペンギンの計算されつくした水中生活
セイタカアワダチソウの化学戦争
超音波の二刀流と夜間視力をもつコウモリ
捕食者を光らせるカラーボール作戦
ヒマラヤ山脈を越えて渡るツルの呼吸システム
植物の光ファイバー神経回路
コウモリに対抗して超音波を放つガ
ペリカンをマネした表面飛行翼船
500系新幹線を成功させたフクロウの羽根
結婚式の披露宴で活躍するクラゲ?
アメリカ海軍に協力するイルカの特殊作業
植物だって病気になれば熟も出る
ヘリコプターのモデルになった鳥
ダーウィンのペットがまだ生きていた!
天井を逆さにはうヤモリのナノテクノロジー
■コラム――遺伝子の宝庫・細菌類■燃える氷をつくる細菌

Part5 食欲よりまさるものはない
植物一の瞬発力をもつハエトリグサの記憶力
仲間も食べるツチボタルのプラネタリウム
やっぱりミミズはおチンチンをはらす!
毒で身を守るイモムシは安心して眠れるか
モグラの睡眠薬でミミズが1000匹眠る
肉食ボタルは光でホタルをワナにかける
マングースよりヘビに強いハリネズミの実力
ヘビがねらう洞窟コウモリのあったかい体温
汚いウンチにたかるハエが病気にならない理由
クモを襲うクモの最強テクニック
ベッコウバチの麻酔技術はブラックジャックなみ
空中戦で渡り鳥をつかまえるヤマコウモリ
昆虫を餓死させるイボタのいじわるな戦略
アリの家畜にされたダニは幸せか
タヌキ寝入りがタヌキよりうまいキタオポッサム
■コラム――遺伝子の宝庫・細菌類■磁石にくっつく磁性細菌

Part6 “愛”こそ生き物たちが進む道
百年に一度恋をして死ぬプヤ・ライモンディ
息子と娘を産み分けるヨシキリの考え方
親子の愛を感じるスンクスのキャラバン
女王アリは色気で国民を支配する?
人の恋路につけこむハチ
動物を性転換させる恐るべきウォルバキア
妻の出産を手伝う助産士サンショウウオ
恋するネズミは涙も流すし歌も歌う
寄り集まってハチに化ける砂漠の寄生昆虫
ライバルの精子をかきとって食べるマツムシ

参考文献

|

2010.12.11

▽アメリカの未公開映画を読む

町山智浩x松嶋尚美『松嶋x松山 未公開映画を見る本』(集英社)

本書は、東京ローカルのテレビ局TOKYO MXにおいて、映画評論家の町山智浩とタレントの松嶋尚美がキャスターをつとめる『未公開映画を観るTV』を、まとめたものである。

松嶋×町山 未公開映画を観るTV
http://www.matsumachi.com/

最近のアメリカでは、ドキュメンタリー映画がたくさん作られているそうです。その理由として、デジタル・ビデオの登場により低コストで映画が作れるようになったこと、マイケル・ムーア監督の映画の一連のヒットにより、「ドキュメンタリーでも儲けられることがわかったこと」、そして、ブッシュ政権時代にアメリカ社会の矛盾が大きくクローズアップされるようになったこと、などがあげられます。

本書で紹介されている25のドキュメンタリー映画(1つだけフィクションがふくまれますが)についての対談を読めば、映画を見なくても、アメリカ社会が直面している問題が、どういうものなのかを理解することができます。

これらの映画は、その多くは、日本では未公開ですが、同番組2公式サイトで見ることができます(予告以外は有料です)。

「松嶋×町山 未公開映画祭」公式サイト
http://www.mikoukai.net/

また、メディア論として見た場合に興味を引いたのが、『ノット・レイテッド~アメリカ映倫のウソを暴け!~』(原題:THIS FILM IS NOT YET RATED)という、アメリカの映倫であるアメリカ映画協会の実態を暴いたドキュメンタリー。

このアメリカ映画協会は、映画における暴力やセックス表現を規制する団体なのですが、ここの審査を通らない映画は、事実上、アメリカの劇場では公開されなくなってしまうそうです。それほどの影響力を持ちながらも、協会の審査員や審査の実態は明らかになっていなかったことから、この映画の監督は私立探偵を雇って審査員の尾行を行い、10人の審査員の実名を暴露します。審査員のほとんどは劇場関係者ですが、うち2名はキリスト教の神父と牧師がいて、キリスト教的なバイアスが強くかかっていることがわかりました。

この映画自体は、同協会の審査を通さずに公開されたため、つまり、ほとんどの劇場では上映されなかったために、客の入りは悪かったようですが、映画公開後には、アメリカ映画協会の審査の方法が改善されたため、一定の役割をはたしたとも言えます。さらに、見ようと思えばネットでも見られる時代になっています。

私は、先日のエントリーで

ネットサービスで訴えられないためには――ウィキリークス創設者逮捕に思ふ
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2010/12/post-b5f7.html
《ジャーナリズムとして見れば、ネットニュースは、腰が引けまくっているわけで、ウィキリークスと、ネットニュースの間を埋める存在として、いろいろな意味で良く訓練されたジャーナリズムが生き残る可能性はあるとも言えます。》

と書きましたが、こうしたデジタル・カメラを駆使したドキュメンタリーが、ウィキリークスと腰の引けたネット・ニュースの間を埋める存在になるのかもしれませんね。

[参考]
▽映画やドラマで見る最近のアメリカ
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/01/post-b25b.html
▽オバマ・ショックとは何か?
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/10/post-a9ac.html

[目次]
町山智浩x松嶋尚美『松嶋x松山 未公開映画を見る本』(集英社)

はじめに
jesus camp
『ジーザス・キャンプ~アメリカを動かすキリスト教原理主義』
Dear Zachary
『ザカリーに捧ぐ』
WHERE IN THE WORLD IS OSAMA BIN LADEN?
『ビン・ラディンを探せ!~スパーロックがテロ最前線に突撃!』
DELIVER US FROM EVIL
『フロム・イーブル~バチカンを震撼させた悪魔の神父』
BIGGER,STRONGER,FASTER
『ステロイド合衆国~スポーツ大国の副作用』
FLOW:For Love of Water
『フロウ~水が大企業に独占される!』
Kimjongilia
『金正日花/キムジョンギリア』
KASSIM THE DREAM
『カシム・ザ・ドリーム~チャンピオンになった少年兵』
未公開トーク VOL.1
CRUDE
『クルード~アマゾンの原油流出パニック』
RELIGULOUS
『レリジュラス~世界宗教おちょくりツアー』
Not Quite Hollywood
『マッド・ムービーズ~オーストラリア映画大暴走~』
GOOD HAIR
『グッド・ヘアー~アフロはどこに消えた?~』
CRAZY LOVE
『クレイジー・ラブ~ストーカーに愛された女の復讐~』
Devil's Playground
『アーミッシュ~禁欲教徒が快楽を試す時~』
THE YES MEN
『イエスメン~大資本と戦うお笑いテロリスト~』
THE YES MEN:FIX THE WORLD
『イエスメン2~今度は戦争だ!~』
未公開トーク VOL.2
WAL-MART
『ウォルマート~世界最大のスーパー、その闇~』
Maxed Out
『マックスト・アウト~カード地獄USA~』
What Would Jesus Buy?
『イエスのショッピング~買い物やめろ教会の伝道~』
SUPER HIGH ME
『スーパー・ハイ・ミー~30日間吸いまくり人体実験~』
OUTFOXED
『アウトフォックス~イラク戦争を導いたプロパガンダTV~』
The Education of Shelby Knox
『シェルビーの性教育~避妊を学校で教えて!~』
THIS FILM IS NOT YET RATED
『ノット・レイテッド~アメリカ映倫のウソを暴け!~』
CSA
『CSA~南北戦争で南軍が勝ってたら?~』
OUTRAGE
『クローゼット~ゲイ叩き政治家のゲイを暴け!~』
未公開トーク VOL.3

|

2010.12.10

▽『イギリス近代史講義』

川北稔『イギリス近代史講義』(講談社現代新書)

本書は、ウォーラーステインの世界システム論と、イギリスの近代史の両方について、ある程度の知識がないと、話があっちにいったり、こっちにいったりして、ちょっとわかりにくいかもしれません。

本書の言いたいことは、巻末にある3つの表で理解できると思います。

表1イギリスの一人あたりGNP成長率
 1873~1913年 年間2%
 1924~1937年    2%強
 1951~1973年 はぼ3%

この表1には、次のような解説が加えられていいます。

《イギリスだけを見れば、「イギリス病」の時代も、成長率がとくに落ちたわけでもない。つまり、「絶対的衰退」はない。》(p.253)

また、254ページの表2と3では、イギリスのGNP成長率を、ヨーロッパ主要12ヵ国平均や、アメリカ、日本などと比較していますが、《この二つの表を見ると、イギリスの立ち後れ、つまり、「イギリス病」は、明確である。つまり、「イギリスの衰退」は、「相対的」なもので、比較の問題である。》(p.254)ということがわかります。

川北氏は、日本について、

《日本は、イギリスが近世いらい数百年にわたって経験したことを、さまざまな条件はむろんちがうのですが、ごく短い期間に追体験してきたようなところもある》(p.264)

として、イギリスの勃興とイギリスの衰退という二つの現象を同時に見ていく必要がある、と本書を結んでいます。

|

2010.12.08

▽歌舞伎スキャンダル

赤坂治績『江戸の歌舞伎スキャンダル』(朝日新書)

今回のエントリーのタイトルは、ちょっと釣り気味ですが(笑)、本書は、『江戸の歌舞伎スキャンダル』というタイトルどおり、江戸時代の歌舞伎にまつわるスキャンダルを紹介したものです。

本書によると、歌舞伎役者は、江戸幕府によってしばしば弾圧されたそうです。しかし、それは江戸時代の身分制社会において虐げられてきたというわけではなくて、歌舞伎役者は、庶民からの人気が高く、お金も儲かったために、お上から見て目障りだから弾圧されることがあったそうです。

歌舞伎界において、市川団十郎と市川海老蔵は、本流をなす名跡のため、本書で紹介されるエピソードの多くに何代目かの団十郎と海老蔵が登場します。

興味深いのは江戸末期に老中・水野忠邦が行った「天保の改革」でも歌舞伎が弾圧されたこと。五代市川海老蔵(七代市川団十郎)は、贅沢な生活を理由に、江戸から追放された。

《政治が行き詰まったとき、権力者は必ず「風紀」を問題にする。第二次大戦中も、「軟弱な」芸能を取り締まった。現代も「徳育(道徳教育)」が問題になっている。……水野は政治も経済も文化も江戸時代初期に戻して「美しい国」を作ろうとした。しかし、皮肉なことに一番の味方であるはずの大名や旗本に足を掬われて失脚した。》(p.252)

また、七代市川団十郎の実子である八代団十郎は、幕末期の混乱を乗り切れずに自殺をしてしまう。遺書はなかったため、自殺の理由ははっきりせず、多くの偽遺書や、自殺の理由を綴った草双紙(絵入り小説)が書かれたという。

歌舞伎役者は、時代の節目にいろんな意味で脚光を浴びる存在なのかもしれませんね。

|

2010.12.06

▽もしもホリエモンがフジテレビを買収していたら

中川淳一郎『ウェブで儲ける人と損する人の法則』(ベスト新書)

本書は、ネットニュースの編集者である中川淳一郎の『ウェブはバカと暇人のもの』や『ウェブを炎上させるイタい人たち』などの、「ネット敗北宣言」を唱える一連の著作に連なるものです。

▽アメーバニュース編集者が語るネットのバカたち
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2009/04/post-13ba.html

▽『ウェブを炎上させるイタい人たち』
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/book/2010/03/post-9cd0.html

しかし本書の内容が、前作と異なるのは、企業や放送局や出版社に対してネットの活用の仕方を提言している点です。この態度の変更は、もしかしたら、著者がネット・ビジネスのコンサルタントのような仕事を始めていることと関係があるかもしれません(笑)。

ところで私は2007年10月に下記のようなエントリーを書いています。

結局ホリエモンは正しかったのだなぁ・・・・・・
http://thelightoflondon.txt-nifty.com/blog/2007/10/post-485c.html
《ブロードバンドが普及した結果、テレビの前のお茶の間の感覚がネットの世界に持ち込まれました。検索ワードランキングの上位を見ても、ニュースサイトのアクセスランキングの上位を見ても、テレビでやっているネタや話題がずらっと並んでいます。》

著者も、「もしもホリエモンがフジテレビを買収していたら」という項目では、次のような妄想を述べています。

《もしライブドアが無事提携を果たしていたら、恐らくフジテレビのウェブサイトは今よりさらに充実したものになっていたことだろう。しかも、低コストで「ネット文脈」に合った形でだ。》(p.176)

著者の言うネット文脈に合ったコンテンツとは、下記のようなものです(pp.76-77より)。

①話題にしたい部分があるもの、突っ込みどころがあるもの
②身近であるもの、B級感があるもの
③非常に意見が鋭いもの
④テレビで一度紹介されているもの、テレビで人気があるもの、ヤフー・トピックスが選ぶもの
⑤モラルを問うもの
⑥芸能人関係のもの
⑦エロ
⑧美人
⑨時事性があるもの
⑩他人の不幸
⑪自分の人生と関係した政策・法改正など

著者が、「バカと暇人」と嘲笑する人達は、おそらく本書を読むことはないでしょうが、ネットで儲けるとは、いかに彼らからのアクセスを集めるか、にかかっているのです。

|

2010.12.05

▽『悪名の棺 笹川良一伝』

工藤美代子『悪名の棺 笹川良一伝』(幻冬舎)

読み終わった感想は、「あれ、笹川良一って、こんないい人だったっけ……?」というものでした。知られざる一面や、面白いエピソードも多かったのですが、残念ながら、あまり説得されませんでした……。

|

« 2010年11月 | トップページ | 2011年1月 »